美術館に行っても「きれい」「すごい」「ヤバい」という感想しか出てこない。でも、もっと美術を楽しめるようになりたい。そう思ったことはありませんか?
「こやぎ先生」としても活躍する、ご指名殺到の美術旅行添乗員・山上やすお氏の書籍『死ぬまでに観に行きたい世界の超絶美術を1冊でめぐる旅』から「マジですごい」超絶美術をご案内します。
『死ぬまでに観に行きたい世界の超絶美術を1冊でめぐる旅』より
巨大壁画が語る裏切りの晩餐! イエスと弟子たちの運命の夜
――うわ~~! いよいよの対面。この絵、こんなに大きかったんですね~~!
そうなんです。やっぱり本や画像ではなかなか大きさを感じられませんが、実物は縦4.2m、横9.1mもある巨大な壁画なんですよ。当然壁画なので門外不出! ここに来ないと見れません。
――へぇ~、そう聞くとさらにありがたみが増します。…それにしても随分と殺風景な部屋に描かれているんですね。それに暗いし…。ここは何のお部屋だったんですか?
ここは修道院の食堂でした。だから食事にまつわる「最後の晩餐」が描かれているというわけですね。
――なるほど! 食堂にぴったりのテーマですね。…で、イエス様と弟子たちが食事をしていると…。ただ、なんか食事の割にはみんな動きがありますね。なんていうか…揉めてる?
素晴らしいです! そこが伝わればダ・ヴィンチも大喜びでしょうね。林さん、そもそも「最後の晩餐」ってどんなシーンかご存じですか?
――え…、さいごの…ばんごはん…(汗)?
正解です(笑)。ただもう少し詳しくお話しするとですね。当時ユダヤ教の国でイエスは生まれ、成長します。ただ、イエスは「ユダヤ教は正しくないのでは?」と考えるようになるんです。
――正しくないって…。具体的にどんなところがですか?
うーん、話せば長くなるんですが、例えばユダヤ教の教えの中に「目には目を、歯には歯を!」というものがあります。よく「復讐(ふくしゅう)しなさいよ」という教えだと思われているんですが、「復讐をするなら同じだけの罰にしなさいよ」という意味で、復讐の勧めではないんですけどね。でもイエスは「神は、右の頬(ほほ)を打たれたら左の頬を出せというに違いない」、と復讐自体を否定したんです。
――なるほどー。どっちの言葉も聞いたことありますが、そういう関係だったんですね。
まぁそうやってユダヤ教の中でイエスは「自分こそ正しい神の声を伝えるもの」として布教をしていきます。すると、やはり弱者に優しいイエスの考えはどんどん人々に浸透していくんです。でも、そうなると…面白くない人がいますね?
――うーん、ユダヤ教の偉い人?
ピンポン! ユダヤの王様です。彼らはユダヤ教という宗教を使って国を統治しているのに、それを「正しくない!」なんて言われたらたまったものではありません。よってイエスを捕えて殺すことにします。そこでユダヤの王側に寝返ったのが…裏切り者のユダ。
――ユダも聞いたことあります!
これは、ただの晩ご飯のシーンではありません。イエスが「この中に私を裏切ろうとするものがいる!」と、弟子の裏切りを予言した決定的瞬間なんです。中央の人物が、そう言い放ったイエス。その両側に6人ずつに分かれた弟子たちが、それぞれの感情を表現していますね。
――(「最後の晩餐」てそういうシーンだったんだ…汗)確かに! そう言われるとみんな違った感情を持っていそうですね。驚いている人、怒っている人、悲しそうな人もいますね…。
(本記事は『死ぬまでに観に行きたい世界の超絶美術を1冊でめぐる旅』の一部を抜粋・編集し作成しました)











