いよいよ2026年がやってくる。来年はどうすれば、投資で成功できるのか? そこで今回は、YouTube「両学長 リベラルアーツ大学」でも紹介されたベストセラー『THE WEALTH LADDER 富の階段 ── 資産レベルが上がり続けるシンプルな戦略』と、「『金持ち父さん 貧乏父さん』以来の衝撃の書!」と絶賛されている『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』の著者ニック・マジューリ氏に緊急インタビューを敢行。はたしてニック氏は何を語ったのか?(取材/国際ジャーナリスト 大野和基、構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
Photo: Adobe Stock
富が増えれば本当に幸せになれるのか?
ニック・マジューリ(Nick Maggiulli)Ritholtz Wealth Management社の最高執行責任者兼データサイエンティスト
同社の業務全体を監督し、ビジネスインテリジェンスの観点から有益な分析を行っている。ウォール・ストリート・ジャーナルやCNBC、ロサンゼルス・タイムズなどに記事を寄稿。緻密なデータに基づくパーソナルファイナンス関連の人気ブログ「OfDollarsAndData.com」を執筆。スタンフォード大学卒(経済学学位)。ニューヨーク市在住。著書に日本で20万部(全世界46万部)を突破した『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』(ダイヤモンド社)がある。
――『THE WEALTH LADDER ウェルス・ラダー』の中で衝撃を受けたのが、「富を築くことと同じくらい、富の“負の側面”を避けることも重要である」という点と、人生を変える4つの富(社会的な富、精神的な富、身体的な富、時間的な富)についてです。なぜ、この本で“富の負の側面”を強調したのでしょうか。
ニック・マジューリ(以下、ニック) アメリカでは特に、「富は多ければ多いほどいい」という信念があります。「貪欲さ」という資本主義的な価値観が強く根づいているからです。
しかし、私は“より多くの富が常にいい”とは必ずしも考えていません。他の条件がすべて同じなら、お金は多いほうがもちろんいいでしょうが、現実では、「他の条件は同じ」ではありません。
たとえば、あなたが非常に裕福であることが周囲の人に知れたら、彼らのあなたへの接し方は変わるかもしれませんし、自分でさえ、自分を見る目が変わってしまうかもしれません。
アメリカでは、こうした傾向が特に強く、日本の文化で同じことがどれほど当てはまるのかわかりませんが、富が人生や自己認識に悪影響を与えることは起こりえます。
ですから私は、誰もが“ある程度の富”は築くべきだと思いますが、一定のラインを超えたところから先は、富が人生にプラスになるとは限らないと考えています。そのラインは人によって異なります。
世界で最も不幸な人たちの特徴
私は、本書『THE WEALTH LADDER ウェルス・ラダー』で「ある段階を超えると、富を増やしても幸せにはなれないどころか、人生を悪化させる可能性すらある」という事実を読者に伝えたかったのです。読者にはショッキングに思える例も紹介しましたが、これは実際の人生に起こりうることです。
リチャード・ニクソン元アメリカ大統領は、1977年のインタビューでこの考えを適切に表現している。
世界で最も不幸な人たちは、フランスの南海岸やニューポート、パームスプリングス、パームビーチといった国際的なリゾート地で暮らしている人たちだ。
毎晩パーティに出かけ、午後はゴルフやトランプに興じて日々をすごしている。
酒を浴びるほど飲み、しゃべり続けているが、物事を深く考えたりはしない。
引退して社会と積極的に関わろうとせず、人生の目的を持たずに生きている。
もちろん、この意見に反対する人もいるだろう。
「もし百万長者になれたら、どんなに最高だろうか。毎日働かなくてもいい。釣りや狩り、ゴルフ、旅行だけをしてすごせたら、こんなにいいことはないはずだ」と言う人もいるだろう。
だが、彼らは人生というものをわかっていない。
人生に意味を与えるのは目的だ。それは目標を持ち、その達成を目指して闘い、苦しみながら努力することなのだ。たとえ、目標を実現できなかったとしても。
ニクソンは仕事の重要性と、それが人生にもたらすポジティブな影響を理解していた。
もちろん、これは決してリタイアすべきではないという意味ではない。何かすることのメリットを、軽視すべきではないという意味だ。
(P327~328)
「THE WEALTH LADDER ウェルス・ラダー」の
フレームワークはどこから?
――6つの資産レベルに基づく、あの革新的な「富の階段」のフレームワークは、どんな発想から生まれたのでしょう?
ニック 実はそのきっかけは、スラック(Slack)の創業者であるスチュワート・バターフィールド氏(1973年生)のアイデアでした。
彼は「富には3つのレベルがある」と語っています。
1つ目は“負債からの自由”――借金のことを考えなくていい状態。
2つ目は“レストランの自由”――外食の値段を気にせずに頼める状態。
3つ目は“旅行の自由”――ホテルやフライトの費用がどれだけ高くても、気にすることなく旅行を楽しめる状態。
つまり、人それぞれ「気にしなくてよくなる段階」があり、それが富の資産レベルだという考え方です。
私はそのアイデアをさらに拡張し、
・食料品の自由
・住居の自由
・影響力の自由
などを加え、さらにそれぞれに具体的な数値を設定し、信頼性の高いデータを分析したところ、6つの資産レベルと各支出の目安が次のように分類できると気づいたのです。
・レベル2――食料品の自由(資産1万ドル以上~10万ドル未満)。値段を気にせずに、スーパーで食品を選べる。
・レベル3――レストランの自由(資産10万ドル以上~100万ドル未満)。値段を気にせずに、レストランで好きなメニューを選べる。
・レベル4――旅行の自由(資産100万ドル以上~1000万ドル未満)。好きなときに、好きな場所に旅行できる。
・レベル5――住居の自由(資産1000万ドル以上~1億ドル未満)。資産全体に大した影響を与えずに、夢の家を買うことができる。
・レベル6――影響力の自由(資産1億ドル以上)。お金を使って他人の人生に大きな影響を与えられる(例:企業買収、大規模な慈善活動等)。
(P45)
このように、「富の階段」の枠組みの中でまずは“支出”について考え、収入・投資・その他のさまざまな要素へとその範囲を広げていきました。
そして「この情報をどうすれば実際に役立つ“自由のレベル”として多くの人たちに提示できるか」を考え、「富の階段」の枠組みをつくり上げていったのです。
つまり、この枠組みの出発点は他者のアイデアだったのですが、それを当時私が考えていた複数の概念、そして信頼性の高いデータと結びつけて発展させたものが、本書『THE WEALTH LADDER ウェルス・ラダー』なのです。
「ウェルス・ラダー」の最大の教訓
――なるほど。では、この画期的なフレームワークをつくり上げる過程で、ニックさんが得た《最大の教訓》は何ですか?
ニック 数々の信頼性の高いデータを見始めてから気づいたのですが、最大の教訓は「ほとんどの人は生涯を通じて同じ資産レベルに留まり続ける」ということです。
つまり、多くの人はレベル3(資産10万ドル以上~100万ドル未満)に到達したら、おそらくその後の人生もずっとレベル3のままなのです。私は「常に次のレベルを目指すべきだ」と言いたいわけではありませんし、それが正しいアドバイスとも思いません。
ただし、一般的に人は、特定の戦略や生活スタイルに慣れると、それが進歩の妨げになる、ということがデータによって明確にわかりました。
自分の現在のレベルに満足できずに「次に進みたい」と思っていても、多くの人は習慣に縛られ、望んでいるにもかかわらず次のレベルへ進めないことがあるのです。
成長がすべてではありませんが、成長を阻んでいる要因は、努力や勤勉さではなく、単に“戦略が間違っているのだ”と強く感じました。
さらなる成長のためには、戦略を変えることがカギになります。日本のみなさんには、自分のレベルに合った正しい戦略をとるために、ぜひ本書を活用いただけたらと思っています。
(本稿は『THE WEALTH LADDER 富の階段 ── 資産レベルが上がり続けるシンプルな戦略』の著者ニック・マジューリ氏へのインタビューをもとに構成しました)



