投資家は最近、心配事に事欠かない。債券利回りの低下であれ、割高な株価であれ、トランプ関税であれ、彼らの対応は一貫している。金を買うことだ。

 金価格は1トロイオンス=4000ドルという、かつては考えられなかった水準に達してからわずか3カ月で5000ドルに迫っている。

 21日のニューヨーク商品取引所(COMEX)で金先物1月限の清算値は前日比1.5%高の1オンス=4831.80ドルとなり、最高値を更新した。今月に入ってから500ドル以上値上がりしており、20日には171.20ドル上昇し、1日の上昇幅としては過去最大を記録した。ドナルド・トランプ米大統領がグリーンランド獲得を目指して欧州8カ国に追加関税を課すと表明したこと(のちに撤回)や、米連邦準備制度理事会(FRB)の独立性に対する懸念の高まりが背景にある。

 金相場を押し上げている5つの要因は以下の通り。

ディベースメント・トレード

 金の買い手の中で最も強気なのは、米ドルやその他の主要通貨の強さを懸念する人々だ。彼らは経済ショックに耐えられると期待する価値の保存手段として、金を買い集めている。

 トランプ氏はこのところ、彼らに警戒すべき材料を数多く与えている。今月だけでも、強権的指導者ニコラス・マドゥロ氏を追放するためにベネズエラへの侵攻を承認し、司法省の捜査によってジェローム・パウエルFRB議長に対する利下げ圧力を強め、米国のグリーンランド領有に反対するならば欧州の同盟国に追加関税を課す方針を示した。

 ディベースメント・トレード(通貨価値下落に備えた売買)という戦略は、政府がインフレ抑制や債務削減に失敗することで、世界の金融システムを支える通貨の価値が損なわれるという不安によって動かされている。

 2025年前半、トランプ氏の一連の関税発動を受けてドルが急落し、上半期の下落率としては50年ぶりの大きさを記録する中、投資家は金に殺到した。パウエル氏が8月に、インフレ率が目標を上回っているにもかかわらず利下げを開始すると示唆した後も、金は上昇を続けた。

 一方、欧州と日本における債務負担の膨張と拡張的な経済政策が、さらに拍車をかけている。トレーダーが大西洋を挟んだ貿易戦争への新たな懸念を分析する中、日本では20日、債券売りにより長期国債利回りが過去最高に達した。

 アナリストらは、こうした市場の基盤の安定性、そしてそれらを監督する機関の安定性が、金の今後の方向性を左右する可能性があると指摘する。

 TDセキュリティーズのストラテジスト、ダニエル・ガリ氏は20日、顧客に対し「金の上昇は信頼が鍵だ。今のところ信頼は揺らいでいるが、壊れてはいない。もし壊れれば、上昇の勢いはより長く続くだろう」と語った。