トランプ氏の計画に常に含まれていた「ドル安」Photo:Tom Williams/gettyimages

 ドナルド・トランプ米大統領が27日、ドル安の水準に満足していると表明したことは、理論上、さほど重要ではないはずだった。同氏のドル安志向は周知の事実であり、実効的な措置が伴わない限り、発言だけで市場を動かすことは困難だからだ。

 だが今回は、発言を裏付ける「行動」を予想しておくべきだろう。米連邦準備制度理事会(FRB)は先週、米財務省の指示を受け、円のレートチェック(相場水準の確認)を実施した。これは恐らく日本の当局と連携したもので、ドル売り・円買い介入の前触れと受け止められている。

 スコット・ベッセント米財務長官は28日、米国は為替介入を実施していないと語った。しかし、同氏は以前から日韓の財務相との会談で通貨価値に言及してきた経緯がある。トランプ氏自身も27日、中国と日本が「常に通貨切り下げを望んでいる」と不満をあらわにした。

 通常、為替介入は、経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)による裏付けがなければ、為替相場を持続的に変化させることはできない。その決定打となるのが金融政策だ。この点でも、ドル安への圧力が強まりつつある。トランプ氏は、関税やドル安、低失業率がインフレにもたらす仮想リスクを理由に金利を引き上げるのではなく、成長や株価を押し上げるために金利を引き下げてくれる人物を次期FRB議長に任命する方針だ。

 従って、現在のドル下落は単なる市場の「ノイズ(雑音)」ではない。米国がドルの「国内的役割」を「国際的役割」よりも優先させた帰結といえる。これは断じて準備通貨としてのドルの地位の終わりを意味しないが、世界経済の前提を揺るがす新たな震動であることは間違いない。