歴史的な移民の国
オーストラリアに住む

 大学を卒業してから香港に10年、北京に3年、そして現在はシドニーで2年目。私の海外生活は、学生時代を含めるとトータル16年以上になります。職業は、日本での6年間を含めると約20年間、一貫して経済・社会の分野での報道に携わっています。

 海外で働き、暮らしていると、日本が実によく見えます。今まで知らなかった日本の素晴らしさ、あるいは硬直具合などが、外からの目線で非常にクリアに見えてくるのです。時には誇らしくもあり、時にはもどかしくもあり、日本に対する愛着は日本に住んでいる時よりも増したと言って過言ではありません。

 では初めに、私が住むオーストラリアという国の経済の現状を簡単にご紹介しておきましょう。

 経済統計によれば、オーストラリアの2013年第1四半期の実質GDP成長率は前期比0.6%、8期連続のプラス成長を遂げています。この底堅さをけん引してきたのは、資源採掘を主とする鉱業部門だったのですが、最近は資源商品相場の低迷もあり頭打ちです。今後は、住宅建設などを中心とした民間投資による成長が指向されています。

 オーストラリアでは、日本に牛肉や酪農製品の輸出市場としての期待が大きく、高品質なオージービーフというイメージ普及のために日本にも牛肉輸出促進に関する政府機関(MLA)が事務所を置くほどであり、経済連携協定(EPA)の締結をという声もありますが、今年9月に予定されているオーストラリア総選挙を前に、それは難しいのではという見方が強いようです。

 さて、国の経済成長には、人口の増加とそれに伴うマーケットの拡大が不可欠なわけですが、オーストラリアの人口は現在約2200万人強。10年前と比べると200万人程度、右肩上がりに増えてきました。とはいえ、この国でもご多聞に漏れず、先進国特有の少子高齢化が進行しています。15歳未満の子どもの割合は、2051年までには14%に減少、反面、65歳以上の人口は同年までに26%に達するともいわれています。

 人口に関連してもう一つ特徴的なのは、オーストラリアは世界屈指の移民の国であるということです。推定居住人口のほぼ4人に1人が外国生まれともいわれるほどその割合は高く、出身国の割合を見ると、1960年代にはイギリス、アイルランド出身者が多くを占めていたのですが、21世紀に入ってからは、アジア太平洋地域やアフリカ、中東諸国からの移民の割合が増えています。