暑さの厳しい夏は、普段どおりの運動を続けるのが難しくなる。そんな時は、運動を完全に休むだけでなく、運動量を調整する方法もある。「体力を保つこと」が目的なら、運動の時間や頻度を減らしつつ、体に必要な刺激を残すという考え方だ。夏の運動では何を減らし、何を保つとよいのか、研究結果をもとに解説する。
Photo: Adobe Stock
夏に減らしてよいのは、運動の「時間」と「頻度」
夏は外で運動しにくい。暑さを我慢して普段どおり続けるか、いっそ秋まで休むかという二択になりがちだ。だが、運動の目的が「体力を保つこと」なら、普段と同じ運動量にこだわる必要はない。
運動の回数や時間を減らす時、強度まで一緒に落としすぎないことが大切だと考えられている(*1)(*2)。
若い成人を対象とした二つの研究では、運動の強度を保っていれば、頻度を週6回から週2回に減らしても、1回40分の運動を26分または13分に短縮しても、心肺持久力は15週間維持された(*3)(*4)。
ただし、13分まで短くした群では、2時間以上動き続ける体力が約10%低下した。短時間の運動でも心肺持久力は保てる可能性があるが、長く動き続ける力まで維持したいなら、時間を削りすぎないほうがよい。
注意したいのは、この研究は頻度と時間を同時に減らしたものではないことだ。つまり、「週2回、1回13分で十分」とは言えない。また、いずれも1980年代に若い成人を対象として行われた少人数の研究であり、誰にでもそのまま当てはまるわけではない。
それでも、暑さの厳しい夏の数週間、運動の回数や時間を減らしたからといって、それまでに高めた心肺持久力がすぐに失われるとは限らない。
短い運動でも、刺激が十分なら体力は伸びる
まとまった運動時間を確保しにくい人には、「エクササイズ・スナック」という方法がある。食事の合間に軽食をとるように、ごく短い運動を一日の中に何度か挟む考え方だ。
2024年の研究では、普段運動をしていない若い成人が、30秒間、全力で階段を上る運動を、1時間以上空けて1日3回行った。これを週3日、6週間続けたところ、心肺持久力の指標は平均7%向上した。階段を上っていた時間は、運動した日でも合計90秒にすぎなかった(*5)。
ただし、参加者は平均約22歳の健康な若者で、運動も全力で行われている。誰もがこの方法をそのまままねればよいわけではない。この研究が示しているのは、運動時間がごく短くても、十分な刺激が加われば、心肺持久力は伸びることがあるという点だ。
2026年に11件の研究をまとめたメタ解析でも、1回5分以下の運動を1日2回以上行うエクササイズ・スナックによって、運動不足の成人の心肺持久力が改善していた。研究で用いられた運動は、中強度から最大に近い強度が中心だった(*6)。
一方、2025年の試験では、運動不足の中年成人が、1回1分以内の自重運動を1日3回以上、12週間続けても、心肺持久力は改善しなかった。運動中のきつさは、10点満点で平均3点ほどだった(*7)。
参加者の年齢や運動内容が異なるため、結果の違いを強度だけで説明することはできない。ただ、運動は短く分けるだけで効果が出るわけではない。その限られた時間の中で、心肺機能にどれだけ十分な刺激を加えられるかが重要だと考えられる。
体力の「維持」と「向上」は、分けて考える
夏の運動は、「いまの体力を保ちたいのか」「さらに伸ばしたいのか」で、組み立て方が変わる。まずは、次のように分けるとわかりやすい。
●維持:これまでの強度を残し、時間または頻度を減らす。
●向上:強度・時間・頻度を組み合わせ、現在より一段上の刺激をつくる。
体力を保つことが目的なら、涼しい環境へ移し、それまで行っていた運動の強度を大きく落とさずに、時間か頻度を減らす。ここでいう強度とは、春と同じ速度や重さを無理に守ることではない。運動の種類を変えても、普段に近い息の弾み方や負担感を残すという意味だ。普段は屋外で長く走っている人も、夏は冷房の効いた室内で、トレッドミルやフィットネスバイク、踏み台昇降などに切り替えればよい。
さらに体力を伸ばしたいなら、現在の体が慣れている水準を少し上回る刺激が必要になる。短時間の運動なら、少し息が弾む程度から始め、強度、時間、頻度のどれか一つを少しずつ増やしていく。毎回、全力で行う必要はない。無理なく回復できる範囲で、運動全体として十分な刺激をつくることが大切だ。
ただし、暑さを我慢してまで運動する必要はない。暑さ指数(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度)が28以上では激しい運動や持久走を避け、31以上では原則として運動を中止することが推奨されている。ある程度の強さで運動するなら、冷房の効いた室内や、暑さ指数の低い時間帯を選ぶことが大切だ(*8)。
また、運動の内容は、その日の疲れや体調に合わせて調整したい。寝不足が続いている日、食欲が落ちている日、脱水が疑われる日には、予定した強度にこだわらず、運動時間を短くするか、負荷そのものを下げたほうがよい。
拙著『体力がすべて』では、心肺持久力や筋力などの土台を「最大体力」と呼び、運動で負荷をかけ、その後に回復するサイクルを繰り返すことで育つと説明した。
運動を完全に休めば、体力を保つための刺激もなくなる。一方、暑い中で春や秋と同じ運動量をこなそうとすれば、暑さによる負担が加わり、回復が追いつかず、疲労を翌日に持ち越しやすくなる。
夏は、普段と同じ運動量を無理に守る必要はない。目的に合わせて、運動する場所や量を変えればよい。
長く頑張ることよりも、体力を保つのか、さらに伸ばすのかを先に決め、その目的に必要な刺激を、きちんと回復できる範囲で入れることが大切だ。
(本記事は、『鍛えるよりも「使い方」 体力がすべて』に関連した書き下ろし記事です)
1. Spiering BA, Mujika I, Sharp MA, Foulis SA. Maintaining Physical Performance: The Minimal Dose of Exercise Needed to Preserve Endurance and Strength Over Time. J Strength Cond Res. 2021 May 1;35(5):1449-58. doi:10.1519/JSC.0000000000003964 PubMed PMID: 33629972.
2. Hickson RC, Foster C, Pollock ML, Galassi TM, Rich S. Reduced training intensities and loss of aerobic power, endurance, and cardiac growth. J Appl Physiol (1985). 1985 Feb;58(2):492-9. doi:10.1152/jappl.1985.58.2.492 PubMed PMID: 3156841.
3. Hickson RC, Rosenkoetter MA. Reduced training frequencies and maintenance of increased aerobic power. Med Sci Sports Exerc. 1981;13(1):13-6. PubMed PMID: 7219129.
4. Hickson RC, Kanakis C, Davis JR, Moore AM, Rich S. Reduced training duration effects on aerobic power, endurance, and cardiac growth. J Appl Physiol Respir Environ Exerc Physiol. 1982 Jul;53(1):225-9. doi:10.1152/jappl.1982.53.1.225 PubMed PMID: 6214534.
5. Yin M, Deng S, Chen Z, Zhang B, Zheng H, Bai M, et al. Exercise snacks are a time-efficient alternative to moderate-intensity continuous training for improving cardiorespiratory fitness but not maximal fat oxidation in inactive adults: a randomized controlled trial. Appl Physiol Nutr Metab. 2024 Jul 1;49(7):920-32. doi:10.1139/apnm-2023-0593 PubMed PMID: 38569204.
6. Rodríguez MÁ, Quintana-Cepedal M, Cheval B, Thøgersen-Ntoumani C, Crespo I, Olmedillas H. Effect of exercise snacks on fitness and cardiometabolic health in physically inactive individuals: systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med. 2026 Jan 19;60(2):133-41. doi:10.1136/bjsports-2025-110027 PubMed PMID: 41057224.
7. Babir FJ, Islam H, McCreary S, Vaz E, Falkenhain K, Cranston K, et al. Technology-Enabled Exercise “Snacks” Are Feasible to Perform in a Real-World Setting: A Randomized Controlled Trial. Scand J Med Sci Sports. 2025 Aug;35(8):e70117. doi:10.1111/sms.70117 PubMed PMID: 40772837; PubMed Central PMCID: PMC12330779.
8. 環境省熱中症予防情報サイト 暑さ指数とは? [Internet]. [cited 2026 Jul 21]. Available from: https://www.wbgt.env.go.jp/sp/wbgt.php






