ILLUSTRATION: BRIAN STAUFFER FOR WSJ
人工知能(AI)が雇用・企業のビジネスモデル・生産性・経済成長にどのような影響を与えるのかについては、多くの議論がなされてきた。
だがこの技術的飛躍は、経済学分野、特に経済政策立案にどのような影響を与えるのだろうか。端的に言えば、AIは経済政策立案の精度を高め、とりわけ中央銀行の業務においてそれが顕著となるはずだ。
米連邦準備制度理事会(FRB)などの中銀は数十年にわたり、不完全かつ、古くなっていることも多い情報に基づいて、政策金利の上げ下げという極めて重大な決定を下してきた。
FRBは完全雇用と物価安定という使命を果たさなければならないが、インフレ指標は当該月終了から数週間後に発表される。雇用統計は数カ月後に改定される。このため、政策立案者は不確実な世界での舵(かじ)取りを迫られており、不完全なシグナルを読み解きながら、リアルタイムデータを欠くために精度が落ちたモデルを使わざるを得ない状況にある。その結果、中銀は物価の変動に直面した際、利上げや利下げの判断が後手に回ってしまうことがよくある。
AIはそうした状況を変える可能性を秘めている。
AI主導のシステムは、消費者物価や妥結賃金から金融取引、サプライチェーン(供給網)の動向に至るまで、膨大な情報セットを処理し、継続的に更新することができる。これにより政策立案者は、経済動向を事後ではなくリアルタイムで観察できるようになる。実務において、これは政策決定を(より良い方向へと)一変させる可能性がある。
AIはリアルタイムデータの提供に加え、「経済が機能する仕組み」や「経済変数間の複雑な相互関係」に関する中銀のモデルを大幅に改善できる可能性がある。例えば、AIを活用した分析を行えば、0.25%の利上げが経済成長・物価・インフレに及ぼす影響や、それが経済全体にどのように波及していくかを、より迅速かつ正確に把握できる。英イングランド銀行(中央銀行)は、生成AIがデータの活用方法に「根本的な変化」をもたらすと指摘しており、同行が運用するモデルの規模と複雑性はすでに著しく増大している。







