大富豪の子息が秘密合宿 「遺産をなくさない方法」とはElizabeth Arvelos Coetzee for WSJ. Magazine

 霧雨の降る朝、世界屈指の大富豪の子息ら十数人が、米テキサス州オースティンにある民泊サイト「Airbnb(エアビーアンドビー)」の宿に集まり、ある問いについて考えていた。「君たちの親は、なぜ君たちに働いてほしいと思っているのだろう?」

 当然ながら、この部屋にいる若者たちの中に働く必要がある者は一人もいない。寄せ集めのソファや椅子に腰を下ろした大学生や20代の若者たちの家族は、合わせて70億ドル(約1兆1000億円)にのぼる総資産を持つ。

 それでも彼らは矢継ぎ早に答えた。「親のお金は、自分のお金じゃないから」 「1ドルの価値を学ぶため」 「働くことで生きがいが得られるから」

 最後に挙がった答えこそが「まさに正解だ」と語るのは、講師を務める富裕層向けコーチのマイケル・コール氏だ。コール氏は、資産1億ドル以上の家族を対象とした会員制グループ「R360」の創設者の一人であり、今回の合宿を主催している。

 親にとって、子どもが働くことは「生きがい」を持っているシグナルになるとコール氏は言う。しかし、彼はその直後に厳しい現実を突きつけた。彼らが親世代のような巨万の富を自ら築くことは、ほぼ不可能に近い、と。

「ならば、評価基準を変えてみてはどうだろう」とコール氏は問いかけ、金銭以外の方法で家族や社会に価値をもたらす「富の再創造者(ウェルス・リクリエイター)」になるよう促した。「親たちは富を創り出した。今度は君たちが、その富を意味のあるものにする番だ」