ティモシー・メイソンさんは2001年式のホンダ「アコード」に乗っているティモシー・メイソンさんは2001年式のホンダ「アコード」に乗っている
SIMON SIMARD FOR WSJ

 米マサチューセッツ州で会計の仕事をしているティモシー・メイソンさん(41)は、ホンダ「アコード」を2台所有している。1台は2010年式で走行距離は4万マイル(約6万4000キロ)いっておらず、毎日の通勤に使っている。もう1台はV6エンジンを搭載した2001年式で、走行距離は28万マイル(約45万キロ)を超える。使うのは、道路環境が悪い冬季だ。

「新車にどんな経済的な意味があるのか」。メイソンさんはそう話す。「燃費は良くなるかもしれないが、月800ドル以上節約できるわけではないだろう」

 メイソンさんは極端な例だが、これが今米国で起きていることだ。つまり、かつてないほど古い車が走っている。

 価格の高さや高金利、経済不安を理由に新車を買わず、同じ車をより長く使う人もいれば、まだ走るからという理由で古い車を手放さない人もいる。エンジニアリングや素材、安全技術が進歩したおかげで、昨今の車は数世代前より長持ちするようになった。

 米国の現役車両の平均車齢は約13年と過去最高で、10年前から10%伸びた。

 車の「高齢化」はこの15年で着実に進んだが、加速したのは新型コロナウイルス流行後だ。工場が閉鎖され、サプライチェーン(供給網)が混乱したことで、価格が上昇した。ここ数年は高い新車の購入をためらう人が増えたほか、多くの自動車メーカーは電気自動車(EV)の人気低迷のあおりを受けた。多額の投資が無駄になり、米国で製品ラインアップの見直しを迫られている。

 米国ではこうした状況下、車の売買と修理に関する経済の力学が根本的に変わりつつある。

 新車市場に長年注力してきた自動車メーカーは今、中古車販売や修理部品、整備業のテコ入れに資源を注ぎ込んでいる。ディーラーは修理店に資金を投じ、整備工場やこれまでは高級車専用だった顧客サービスを拡充している。一方で、整備業は個人店や大手の間で競争が激化している。

「販売で稼げないなら、サービスで稼ぐしかない」。フロリダ州セントオーガスティンのボザード・フォード・リンカーンのエド・ロバーツ最高執行責任者(COO)はそう話す。「皆でそのパイの一切れを奪い合っている」

 ウォール街はこれまで自動車業界の健全性を測るのに、ディーラーの駐車場から新車が何台出たかを見ていた。自動車メーカーは今年、米国で新車を約1600万台販売する見通しだ。だが、金額が大きいのは中古車整備になりつつある。

 自動車業界データ会社コックス・オートモーティブのコンサルタント、スカイラー・チャドウィック氏は、自動車整備業に「これほど競争があったことはない」と述べた。

 一因は、低迷する新車販売に早期回復の兆しがないことだ。中古車販売も比較的横ばいだが、これは供給が足りないためだ。数年前のコロナ禍によるサプライチェーン危機で、自動車メーカーは需要を満たすだけの生産ができなかった。