アンソロピック本社内のカーリニ氏(サンフランシスコ) HELYNN OSPINA FOR WSJ
米人工知能(AI)新興企業アンソロピックの次世代AIソフトウエアの能力について、トランプ政権の幹部らはここ数日、世界のサイバー防衛に 深刻な影響を及ぼしかねない と懸念を強めている。多くのサイバー防衛研究者らがその驚くべき現実を突きつけられたのは、3月のことだった。
その時、アンソロピックの研究者であるニコラス・カーリニ氏(35)は、新たなAIモデルを使えばいとも簡単にシステムに侵入できることを示した。同氏はハッカーとして定評があり、業界内では、AIのサイバー防衛に関する宣伝文句を安易に信用しない「プロの懐疑論者」として知られる人物だ。しかし最近、同氏は方針転換した。
カーリニ氏は「ミュトス」を手に入れてからわずか数週間後の3月上旬、かつてサンフランシスコのハイバーニア銀行が入居していた豪華なボザール様式の建物で、会場内を埋め尽くしたサイバー防衛専門家に向かって厳しい警告を発した。
まず、アンソロピックのAIを使って、ゴーストというウェブ公開ソフトウエアの重大なバグをどのように発見・悪用したかを示した。さらに、数十億台のデバイスを動かすソフトウエアで、圧倒的な実績を持つOS(基本ソフト)「リナックス」のバグを発見した方法についても実演した。
カーリニ氏はそれまで、リナックスにもゴーストにもバグを発見したことがなかった。それが今や、多数のバグを発見していた。同氏が目にしているものは、サイバー防衛における新たな世界秩序を意味していた。過去20年間に攻撃者と防御者の間に存在していたバランスは「恐らく終わりを迎えつつあるように思える」と同氏は述べた。「これらの現行モデルは脆弱(ぜいじゃく)性研究者として自分よりも優れていることが、私にはよく分かる」
この発表の2日後、同氏はアンソロピックの同僚たちに、「ミュトスはまだ公開すべきではないと思う」と記したメッセージを送った。







