アップルストアの様子Photo:Brandon Bell/gettyimages

 米 アップル には必要なメモリーチップを購入できるだけの資金がある。それでも購入が難しくなりつつあるという事実は、メモリー不足の深刻さ、そして世界有数の資金力を誇る企業でさえ不利な立場に置かれる可能性があることを物語っている。

 メモリーチップのコスト急騰にアップルがどう対応するかを巡って数カ月にわたり臆測が飛び交っていたが、アップルはこのたび、自社製品の 値上げを行う と発表した。ティム・クック最高経営責任者(CEO)はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に対し、同社はメモリーコストの「急激な上昇」を顧客に転嫁せずに吸収しようとしてきたが、「これ以上は持続不可能な状況だ」と語った。

 こうした状況を認めるというのは、長年にわたってサプライヤーを支配してきた同社にとって屈辱的なことだ。アップルは、そのサプライチェーン(供給網)管理能力の高さによって、他の主要なハイテク機器メーカーを上回る粗利益率を実現してきた。

 しかし、人工知能(AI)需要の急拡大に伴い、パソコンやスマートフォンなどの機器向けのメモリーチップ生産が逼迫(ひっぱく)し、価格急騰につながっている。市場調査会社トレンドフォースによると、最高級スマートフォン向けDRAMの価格は4-6月期に前期比で最大83%上昇する見通しだ。

 そしてAIブームのさらなる影響として、アップルが部品調達市場における最大の買い手としての地位を失いつつある。AIスーパーコンピューターシステム向けにメモリーを大量購入する米半導体大手 エヌビディア は、今年の年間フリーキャッシュフロー(FCF)がアップルを上回る見通しだ。調査会社ビジブル・アルファのコンセンサス予想によると、ウォール街はエヌビディアの年間FCFが2年後にはアップルの2倍超になると見込んでいる。エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは今年の会合で、「当社は、全てのDRAMメーカーから直接数百億ドル規模のDRAMを購入する唯一の半導体企業だ」と述べた。