「私、不器用なんで」「もう歳だから」。つい口にしてしまうその一言が、実は「仕事ができない人」の口グセだとしたら。アパレル史上最年少で上場した株式会社yutori社長・片石貴展氏は、こうした何気ない決まり文句を「自分を殺す口ぐせ」と呼ぶ。なぜその一言が、あなたの可能性を静かに閉じてしまうのか。本書からその正体を紹介する。(構成:ダイヤモンド社書籍編集局/淡路勇介)

自分の言葉で話せるようになりましょう。Photo: Adobe Stock

「私、人見知りだから」
「私、不器用なんで」
「もう歳だから」

口に出していなくても、頭の中で繰り返している決まり文句。何かに誘われたとき、何かに挑戦しようとしたとき、ふっと浮かんでくる。
これらは、すべて自分にラベルを貼る行為です。便利な一言で、自分を固定する行為。そして、このラベルこそが、あなたの仕事をじわじわと止めていきます。

その一言は、便利な「免罪符」になっている

本書はまず、こう指摘します。

自分にラベルを貼ると、楽になります。「人見知り」と言ってしまえば、知らない人と話さなくていい言い訳ができる。「不器用」と言ってしまえば、新しいことに挑戦しなくていい免罪符になる。「オッサン」と言ってしまえば、若い文化についていけないことを正当化できる。
――『自分の言葉で話せるようになりましょう。』p200より

便利な一言で、自分を固定する。

ラベル貼りは、安心と引き換えに、私たちから何かを奪っているのです。

ワースト1の口グセは「私、不器用なんで」

数ある口グセの中でも、仕事においていちばん危険なのが、この一言です。
「私、不器用なんで」と言った瞬間、何が起きるか。

「不器用」というラベルを貼った瞬間、新しいことを学ぶ可能性が閉じる。
――『自分の言葉で話せるようになりましょう。』p202より

新しいツールも、新しいやり方も、「自分には向いていない」で済ませられる。

その場は、確かに楽になる。でも、学ぶ機会を一つずつ、自分の手で閉じているのです。

怖いのは、その口グセが「現実」になること

本書が指摘する本当の怖さは、ここからです。

「人見知り」と言い続けていると、ほんとうに、人と話す機会が減っていきます。人と話す機会が減ると、当然、人と話す力は育ちません。
ラベルを貼ると、そのラベル通りの現実が、ほんとうに作られていくのです。

――『自分の言葉で話せるようになりましょう。』p203より

「不器用だから」と言い続ければ、挑戦しなくなる。挑戦しないから、本当にできるようにならない。できないから、また「やっぱり不器用だ」とラベルが強化される。
ラベルが現実を作り、現実がラベルを強化する。

この自己強化ループの中で、人は少しずつ、本当に動けなくなっていきます。

なぜ「楽」なのに、仕事ができなくなるのか


最大の罠は、この固着化がまったく苦しくないことです。むしろ、楽。
「不器用だから」と言っていれば、挑戦する不安を回避できる。可能性を閉じる代わりに、安心が手に入る。だから、人はこの口グセを手放せない。
仕事ができなくなるのは、能力が足りないからではありません。

自分に貼ったラベルで、可能性を閉じ続けているからです。
本書は、こう書きます。人間は本来、常に変化する動的な存在だと。

「私、不器用だから」と自分を固定するのは、言い換えれば、自分は変化しない、面白くない存在だと宣言しているようなものなのです。
今日からできるのは、その口グセが出たときに、一度だけ疑ってみること。

「これは本当の事実か。それとも、楽になるために貼ったラベルか」
その問いを持てた瞬間から、固定されていた自分が、もう一度動き出します。

(本稿は、片石氏の著書『自分の言葉で話せるようになりましょう。』〈ダイヤモンド社〉をもとに構成したものです)

片石貴展(かたいし・たかのり/ゆとりくん)
株式会社yutori 代表取締役社長
1993年生まれ。神奈川県出身。
大学卒業後、新卒でモバイルゲームなどを手掛けるITベンチャーに入社。その後、自身のルーツである古着カルチャーを起点に、Instagramのコミュニティメディア「古着女子」を立ち上げ、2018年に初期資本金10万円で株式会社yutoriを創業。「ハグレモノをツワモノに(TURN STRANGER TO STRONGER)」をミッションに掲げ、ミレニアル世代・Z世代を中心とした複数のアパレルブランド(9090など)をプロデュース。2023年12月には創業からわずか5年8ヶ月で東京証券取引所グロース市場へ上場を果たし、アパレル企業として「史上最年少上場」の快挙を成し遂げる。2024年に元AKB48の小嶋陽菜氏が手掛ける「Her lip to」を展開する株式会社heartrelationをグループ化し、2026年には同社を完全子会社化。現在では年商140億円を超
える企業へと成長する。
SNSやYouTubeなどのメディアでは「ゆとりくん」名義で発信。ファッション、ビジネスから、スピリチュアルまで、領域を超えて軽やかに語る姿が「言語化力すごい!」と話題に。