イライラしやすいのはカルシウムが足りないせいかもしれない。子どもがキレるのも牛乳不足が原因――そんな話を聞いたことがある人は多いだろう。しかし、この主張には科学的な根拠が乏しいという。

【医師が教える】「カルシウム不足で怒りっぽくなる」と信じている人が注意すべきことPhoto: Adobe Stock

カルシウムは脳の働きに必須の成分だ

神経や筋肉は、カルシウムイオンの動きによって興奮したり収縮したりしている。
つまり、脳の神経が正常に機能するためには、カルシウムが欠かせない成分であることは間違いない。
だからこそ、「カルシウムが不足すると脳の働きが鈍くなるのでは」という発想が生まれやすい。

イライラしやすい、怒りっぽい、子どもが落ち着かない――
こうした状態を見たとき、「カルシウムが足りないのかもしれない」と考える人は少なくないだろう。
ネット上にも、そうした関連性をうかがわせる情報が多く出回っている。

体には「巨大なカルシウム貯蔵庫」がある

神経や筋肉はカルシウムイオンの動きで興奮したり収縮したりしています。つまり、脳の神経が正常に働くためには、カルシウムが必須なのです。
では、カルシウムの摂取不足があると、脳の神経の反応は鈍くなるのでしょうか。
カルシウムは骨に莫大な量が貯蔵されています。巨大な貯蔵庫を持っているせいもあり、口からのカルシウム摂取量が多少不足しても、血液中のカルシウム量が低下することはありません。
血液濃度が変動しにくいということは、おそらく脳のカルシウム量も変動しにくいでしょう。
つまり、カルシウム摂取不足で頭が悪くなることはない、と考えるのが妥当です。
ネットでは「カルシウム不足で怒りっぽくなる」とか「子どもがキレるのはカルシウム不足のせい」などの書き込みを散見しますが、これは根拠不足の情報です。

ここで重要になるのが、体内のカルシウムの大部分が骨に貯蔵されているという事実だ。
骨は、いわば巨大なカルシウムの貯蔵庫として機能している。
そのため、食事からのカルシウム摂取が一時的に少なくなったとしても、
血液中のカルシウム濃度はすぐには低下しない仕組みになっている。

血液中の濃度が安定して保たれているということは、
脳に供給されるカルシウムの量も、同様に大きく変動しにくいと考えられる。
つまり、食事からのカルシウム摂取がやや不足したからといって、
それが直接、脳の神経の反応の鈍さや、感情のコントロールに結びつくとは考えにくい。

「怒りっぽさ」の原因を、カルシウムだけに求めない

「カルシウム不足で怒りっぽくなる」「子どもがキレるのはカルシウム不足のせい」といった話は、
広く語られている割に、科学的な根拠は乏しいとされている。
体の仕組みから考えると、軽度のカルシウム不足が、
直接的に気分や行動の変化を引き起こすという説明には無理がある。

イライラや感情の不安定さには、睡眠不足やストレス、生活習慣など、
さまざまな要因が関係していることが多い。
カルシウムの摂取量だけに原因を求めてしまうと、
本当に見直すべき生活習慣に目が向かなくなってしまう可能性もある。
気になる症状が続く場合は、自己判断で原因を決めつけず、
医療機関に相談することをお勧めしたい。

今日から試すなら、「怒りっぽいのはカルシウム不足」と決めつける前に、睡眠や生活リズムを振り返ってみることだけでいい。

(本記事は、書籍『医者が教える 栄養学的に正しい最高の食事』をもとに作成しました。本記事は、医師による診断や治療の代わりとなるものではありません。健康状態に不安がある場合は、必ず専門の医療機関を受診し、医師の指示に従ってください。)