イライラしやすいのはカルシウムが足りないせいかもしれない。子どもがキレるのも牛乳不足が原因――そんな話を聞いたことがある人は多いだろう。しかし、この主張には科学的な根拠が乏しいという。
カルシウムは脳の働きに必須の成分だ
神経や筋肉は、カルシウムイオンの動きによって興奮したり収縮したりしている。
つまり、脳の神経が正常に機能するためには、カルシウムが欠かせない成分であることは間違いない。
だからこそ、「カルシウムが不足すると脳の働きが鈍くなるのでは」という発想が生まれやすい。
イライラしやすい、怒りっぽい、子どもが落ち着かない――
こうした状態を見たとき、「カルシウムが足りないのかもしれない」と考える人は少なくないだろう。
ネット上にも、そうした関連性をうかがわせる情報が多く出回っている。
体には「巨大なカルシウム貯蔵庫」がある
神経や筋肉はカルシウムイオンの動きで興奮したり収縮したりしています。つまり、脳の神経が正常に働くためには、カルシウムが必須なのです。
では、カルシウムの摂取不足があると、脳の神経の反応は鈍くなるのでしょうか。
カルシウムは骨に莫大な量が貯蔵されています。巨大な貯蔵庫を持っているせいもあり、口からのカルシウム摂取量が多少不足しても、血液中のカルシウム量が低下することはありません。
血液濃度が変動しにくいということは、おそらく脳のカルシウム量も変動しにくいでしょう。
つまり、カルシウム摂取不足で頭が悪くなることはない、と考えるのが妥当です。
ネットでは「カルシウム不足で怒りっぽくなる」とか「子どもがキレるのはカルシウム不足のせい」などの書き込みを散見しますが、これは根拠不足の情報です。
ここで重要になるのが、体内のカルシウムの大部分が骨に貯蔵されているという事実だ。
骨は、いわば巨大なカルシウムの貯蔵庫として機能している。
そのため、食事からのカルシウム摂取が一時的に少なくなったとしても、
血液中のカルシウム濃度はすぐには低下しない仕組みになっている。
血液中の濃度が安定して保たれているということは、
脳に供給されるカルシウムの量も、同様に大きく変動しにくいと考えられる。
つまり、食事からのカルシウム摂取がやや不足したからといって、
それが直接、脳の神経の反応の鈍さや、感情のコントロールに結びつくとは考えにくい。
「怒りっぽさ」の原因を、カルシウムだけに求めない
「カルシウム不足で怒りっぽくなる」「子どもがキレるのはカルシウム不足のせい」といった話は、
広く語られている割に、科学的な根拠は乏しいとされている。
体の仕組みから考えると、軽度のカルシウム不足が、
直接的に気分や行動の変化を引き起こすという説明には無理がある。
イライラや感情の不安定さには、睡眠不足やストレス、生活習慣など、
さまざまな要因が関係していることが多い。
カルシウムの摂取量だけに原因を求めてしまうと、
本当に見直すべき生活習慣に目が向かなくなってしまう可能性もある。
気になる症状が続く場合は、自己判断で原因を決めつけず、
医療機関に相談することをお勧めしたい。
今日から試すなら、「怒りっぽいのはカルシウム不足」と決めつける前に、睡眠や生活リズムを振り返ってみることだけでいい。
(本記事は、書籍『医者が教える 栄養学的に正しい最高の食事術』をもとに作成しました。本記事は、医師による診断や治療の代わりとなるものではありません。健康状態に不安がある場合は、必ず専門の医療機関を受診し、医師の指示に従ってください。)
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主要目次
第1章 まず知るべき「栄養と食品」の基本
栄養バランスは毎日考えなくていい─「1週間」でつじつまが合えばOK
「完全栄養食」を信じるな─「これだけを食べれば大丈夫」などありえない
トクホと「健康食品」はまったくの別物─機能性食品の違いをおさえる
第2章 「病気と栄養」の危ない関係
ジュースが危ない本当の理由─果糖とブドウ糖はヤバすぎる
「体にいい油」も要注意─変性すれば、すべて悪玉
「コーラで歯が溶ける」は本当─リン酸の強さとその代償
第3章 栄養学的に「ヤバい」食習慣
ファストフードで地雷を踏むな─シェイクのヤバさを知る
黒烏龍茶でチャラにはならない─「焼け石に水」で食べ過ぎを招く
プロテインが逆効果になる?─肝臓・腎臓が酷使される理由
第4章 頭が悪くなる「脳をダメにする」食事
ビタミン不足は静かに脳を鈍らせる─頭が悪くなる仕組み
「カルシウム不足でイライラする」のは本当か?─科学的根拠はない
「コーヒーを飲まないと頭が回らない」は危険信号─カフェイン依存のリスク
第5章 「体によさそう」に惑わされないための知識
野菜ジュースで「野菜」は摂れない─ビタミンCも食物繊維も抜けている
「グルテンフリー神話」に惑わされるな─アレルギーがなければ無視していい
サプリメントは買わなくていい─価格も品質も信用できない
第6章 「食べないほうがいい」食品の誤解を解く
コレステロールは敵ではない─体の必須成分と動脈硬化の関係
「白米を食べると太りやすい」のはなぜか─長所と短所を理解する
「うま味調味料=危険」は思い込み─グルタミン酸ナトリウムの正体
第7章 誰でもすぐに実践できる「栄養学的な食習慣」
チェーン店で健康的に食べる方法─最強はリンガーハットの「ちゃんぽん」
パフォーマンスを上げるには「お酢」を飲む─最速でシャキッとする
「腸活」ブームが見落としているもの─腸内細菌は大腸にいる
第8章 「体調と体質を改善する」食事術
風邪をひいたらホットジュースを飲む─「ダイダイ湯」「生姜湯」がいい
食べるべき食品ベスト1は「納豆」─ビタミンKが爆増する発酵の力
「なんとなく不調」なときは食べものを疑う─5つの食事リセット術
第9章 「ストレスから体と心を守る」食事術
老化と病気は抗酸化物質で防ぐ─「ポリフェノールたっぷり」に騙されない
「おいしく・安く・栄養豊富」な旬の食材を選ぶ─無駄にお金をかけなくていい
強いストレスには「動物性たんぱく質」と「ハーブティー」─メンタルを整える食事
第10章 「やせながら元気になる」栄養学的ダイエット術
「2日で1.5kg」は誰でもやせられる─大切なのは継続できるかどうか
リバウンドを防ぐための小さな工夫─体だけではなく「心の健康」を維持する
「体脂肪率」に振り回されるな─大切なのは「経過」を追うこと
第11章 「健康なまま長生き」するための食事術
「空腹は最強のクスリ」は本当か?─実践してわかった長所と短所
40歳から筋肉は勝手に減り続ける─寝たきり回避には「たんぱく質」が必須
発がん性物質を避けるには「焼く」よりも「煮る」─肉はマリネがおすすめ