ベーコンやハムは発がん性があると聞いた。魚の焦げは食べない方がいいと気をつけている――そんな人に、医師が伝えたいことがある。「発がん性物質が含まれる」と「食べたらがんになる」は、まったく別の話だ。
東京農業大学で栄養について長年研究し、医師としても活動する田中越郎氏の著書『医者が教える 栄養学的に正しい最高の食事術』からヒントを探る。(構成/ダイヤモンド社・林拓馬)
「発がん性物質が含まれる」と「食べたらがんになる」は違う
加工肉や焼き魚の焦げに発がん性物質が含まれていることは、科学的に確認されている。
しかし著者はここで、重要な問いを立てる。
「では、それを食べたらがんになるのか?」――答えはイエスとは言えない。
なぜか。
「量」の視点が抜けているからだ。
毒性のある物質も、量によって影響はまったく異なる。
この視点なしに「含まれている=危険」と判断することは、科学的に正確ではない。
「100分の1まではOK」という許容量の考え方
加工肉があぶないとか、焼き魚のコゲがいけない、などの話を聞いたことがないでしょうか。
たしかに加工肉やコゲを分析すると発がん性物質が含まれてはいますが、ではそれを食べたらがんになるのか、と問われると、イエスとは言えません。それは量の視点が抜けているからです。
ある物質に何かの毒性があるとします。その物質の許容量の決め方は「明らかに危険な量の100分の1以下にする」のが基本です。逆に言うと、100分の1まではOKということです。
この100分の1という量を、多くて危険と考えるか、少ないので安全と考えるかは、人それぞれかと思います。危険だと思う人は、その物質を含んだ食品を避ければいいし、安全だと思う人は気にせず食べたらいいと思います。
食品や薬に含まれる有害物質の「許容量」は、
「明らかに危険な量の100分の1以下」を基準に設定されている。
つまり、許容量の範囲内であれば、100倍の余裕がある計算だ。
「含まれているから危ない」ではなく、「どれだけ含まれているか」が問題なのだ。
著者はこの「100分の1」という数字について、判断を読者に委ねている。
多くて危険と感じるなら避ければいい。少ないから安全と感じるなら気にせず食べればいい。
どちらが正しいかではなく、正確な情報をもとに自分で判断することが大切だという立場だ。
「何を避けるか」より「なぜ避けるか」を知ること
食の安全に関する情報は、「◯◯は危険」という形で広まりやすい。
しかし、危険かどうかは「何が含まれているか」だけでなく「どれだけ含まれているか」によって決まる。
根拠のないイメージで食べ物を避け続けることは、食の選択肢を不必要に狭め、栄養バランスを崩すリスクにもなりうる。
気になる食品については、かかりつけ医や栄養士に具体的な量の目安を確認することをお勧めしたい。
食べ物の「危険」という情報を見たとき、「量はどれくらいで危険なのか」を一度だけ調べてみることだけでいい。
(本記事は、書籍『医者が教える 栄養学的に正しい最高の食事術』をもとに作成しました。本記事は、医師による診断や治療の代わりとなるものではありません。健康状態に不安がある場合は、必ず専門の医療機関を受診し、医師の指示に従ってください。)
●東京農大名誉教授・栄養学の専門家である医者が教える「栄養学的に正しい」食事の大原則
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世間には数多くの健康法があふれています。
そして健康意識の高い人ほど、新しい情報を入手し、自分の生活に取り入れています。
しかし、その結果「本当の健康」を得られている人はどれほどいるでしょうか。
ひとつの論文やエビデンスだけを信じた食事では、栄養が偏ってしまいます。
また「健康意識」の高まりを狙った企業のマーケティングの影響で「必要のない食品」や「効果の薄いサプリ」を購入してしまう可能性もあるのです。
そんななか、食事対する必須知識として「栄養学」への関心が高まっています。
本書では、東京農業大学で栄養学と生理学の研究を続け、医師でもある著者が「栄養学的に正しい」最高の食事術を紹介します。
誤解しがちな栄養に関する知識を正し、実生活のなかですぐに取り入れることができる具体的な食べ方や食材、食品がふんだんに掲載されています。
基本となる知識と具体的な食事術を学ぶことで「健康法」迷子から抜け出し、食事によって人生が変わる1冊です。
主要目次
第1章 まず知るべき「栄養と食品」の基本
栄養バランスは毎日考えなくていい─「1週間」でつじつまが合えばOK
「完全栄養食」を信じるな─「これだけを食べれば大丈夫」などありえない
トクホと「健康食品」はまったくの別物─機能性食品の違いをおさえる
第2章 「病気と栄養」の危ない関係
ジュースが危ない本当の理由─果糖とブドウ糖はヤバすぎる
「体にいい油」も要注意─変性すれば、すべて悪玉
「コーラで歯が溶ける」は本当─リン酸の強さとその代償
第3章 栄養学的に「ヤバい」食習慣
ファストフードで地雷を踏むな─シェイクのヤバさを知る
黒烏龍茶でチャラにはならない─「焼け石に水」で食べ過ぎを招く
プロテインが逆効果になる?─肝臓・腎臓が酷使される理由
第4章 頭が悪くなる「脳をダメにする」食事
ビタミン不足は静かに脳を鈍らせる─頭が悪くなる仕組み
「カルシウム不足でイライラする」のは本当か?─科学的根拠はない
「コーヒーを飲まないと頭が回らない」は危険信号─カフェイン依存のリスク
第5章 「体によさそう」に惑わされないための知識
野菜ジュースで「野菜」は摂れない─ビタミンCも食物繊維も抜けている
「グルテンフリー神話」に惑わされるな─アレルギーがなければ無視していい
サプリメントは買わなくていい─価格も品質も信用できない
第6章 「食べないほうがいい」食品の誤解を解く
コレステロールは敵ではない─体の必須成分と動脈硬化の関係
「白米を食べると太りやすい」のはなぜか─長所と短所を理解する
「うま味調味料=危険」は思い込み─グルタミン酸ナトリウムの正体
第7章 誰でもすぐに実践できる「栄養学的な食習慣」
チェーン店で健康的に食べる方法─最強はリンガーハットの「ちゃんぽん」
パフォーマンスを上げるには「お酢」を飲む─最速でシャキッとする
「腸活」ブームが見落としているもの─腸内細菌は大腸にいる
第8章 「体調と体質を改善する」食事術
風邪をひいたらホットジュースを飲む─「ダイダイ湯」「生姜湯」がいい
食べるべき食品ベスト1は「納豆」─ビタミンKが爆増する発酵の力
「なんとなく不調」なときは食べものを疑う─5つの食事リセット術
第9章 「ストレスから体と心を守る」食事術
老化と病気は抗酸化物質で防ぐ─「ポリフェノールたっぷり」に騙されない
「おいしく・安く・栄養豊富」な旬の食材を選ぶ─無駄にお金をかけなくていい
強いストレスには「動物性たんぱく質」と「ハーブティー」─メンタルを整える食事
第10章 「やせながら元気になる」栄養学的ダイエット術
「2日で1.5kg」は誰でもやせられる─大切なのは継続できるかどうか
リバウンドを防ぐための小さな工夫─体だけではなく「心の健康」を維持する
「体脂肪率」に振り回されるな─大切なのは「経過」を追うこと
第11章 「健康なまま長生き」するための食事術
「空腹は最強のクスリ」は本当か?─実践してわかった長所と短所
40歳から筋肉は勝手に減り続ける─寝たきり回避には「たんぱく質」が必須
発がん性物質を避けるには「焼く」よりも「煮る」─肉はマリネがおすすめ