コンビニでお馴染みのカンガルーが描かれたワイン。実はこのワイン、MBAの必携本『ブルー・オーシャン戦略』にも成功事例として載るほどの伝説的ブランドだということをご存じだろうか? 権威やうんちくといったワイン業界の常識を徹底的に削ぎ落とし、全米トップに上り詰めた驚異のビジネスモデルと、賢いコンビニワインの選び方を解説する。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

【コスパ最強】初心者が「コンビニワイン」で探すべき目印とは?Photo: Adobe Stock

動物ラベルの革命

オーストラリアで、移民が持ち込んだのは珍しい品種のぶどうだけではありません。

スーパーやコンビニでよく見かけるカンガルーのラベルのワインも、イタリア系移民がオーストラリアで起こしたビジネス革命の証しです。

舞台は、ニュー・サウス・ウェールズ州内陸部に広がるリヴァリナ地区。

平地が続くこのエリアは、かつて質より量の産地と見られていました。

しかし、イタリアから来た開拓者〈カセラ・ファミリー〉は、ここでとんでもないサクセスストーリーを描きます。

そう……世界を変えたワイン、「イエローテイル」です。

常識を捨てた決断

彼らが仕掛けたワインビジネスは、ブルーオーシャン戦略の代表的な成功事例として、MBAの必携本『ブルー・オーシャン戦略』(ダイヤモンド社)にも載るほどです。

勝因は、ワイン業界の常識を捨てた決断でした。

それまでのワインが、着付けのルールが厳しい着物だとしたら、彼らは、それを「誰でも気楽に羽織れるフリース」に変えてしまったのです。

渋みや重厚さ、深みといった飲みづらさを極限まで削ぎ落とし、ジャムのように甘く、カクテルのように飲みやすい味に設計。

ラベルからは難解な専門用語を排除し、可愛いワラビー(カンガルーの一種)の絵を主役にしました。

さらに、発売当初は白赤1種類ずつに絞り込むことで、飲み手の選ぶ負担を下げ、ビジネスモデルをシンプルにしたのです。

「難しいことはいいから、楽しく飲もうよ!」

徹底した割り切りが、それまでワインを敬遠していたビール党やカクテル派の心をつかみ、一躍全米ナンバー1輸入ワインの座に上り詰めたのです。

コンビニで宝探し

コンビニに入ると、吸い寄せられるようにお酒コーナーへ向かうのが私の習慣です(棚の前でぽつんとラベルを凝視している人がいたら、私かもしれません)。

そこには書籍にも登場したカンガルーやペンギン、アルパカ、自転車など色とりどりのモチーフが並び、さながら動物園のよう。

24時間いつでもワインが買える日本は、世界的に見ても稀有なワイン天国です。

セブン-イレブンの「ヨセミテ・ロード」(メルシャンとの共同開発商品)のように盤石なPB(プライベートブランド)もあれば、ローソンの成城石井コラボ、あるいはファミリーマートの専売商品(『神の雫』コラボなど、特定の販路でしか買えない限定品)など、各社の特色を比較するのは興味深いものです。

巨大チェーンの物流網と規模の経済が、あの手頃な価格を支えているのです。

ひげのおじさん?

そんなコンビニワイン天国でSNSでも人気を博しているのが、オーストラリアの「ピーツ・ピュア(通称ピートおじさん)」。

裏ラベルの「いっしょに楽しむなら」の欄に「ともだち」と書かれたこのワインは、まさに仲間とわいわい飲むのにぴったり。

情報量の多いワインとはついワインと対話してしまいがちですが、こうした親しみやすいワインは、何も考えずに楽しむ思考の余白をくれます。

環境に配慮したサステナブルな造りで、スクリューキャップを採用しているため、青空の下でのピクニックにも最適!

シャルドネはピーチのようなフレッシュなアロマが心地よく、シラーズは熟れた黒い果実にスパイス漂うクラシックな佇まいで、コンビニのパストラミや焼き鳥など、香ばしいお肉系との相性も抜群。

果実の甘みとバニラのニュアンスが、チョコレートにも合います。

ほかにも、夏にぴったりの清涼感あるピノ・グリージョや、冷やしてもチャーミングな果実味が引き立つピノ・ノワールも大人気。最近は泡も加わり、楽しみが増えました(※スパークリングはコンビニでの取り扱いなし)。

ワインは専門ショップで構えて買う必要はありません。今夜はぜひ、お近くの棚で気になる動物でも「ひげおじ」でも、まずは一本連れて帰ってみてください。

(本稿は書籍『15か国・地域を飲んで旅する ワインの世界地図』より一部を抜粋・編集したものです)

水上 彩(みずかみ・あや)

ワインジャーナリスト/コラムニスト
1986年生まれ、神奈川県鎌倉市育ち。お茶の水女子大学理学部卒業後、大手通信企業を経てワイン業界へ。世界最大のワイン教育機関WSETが認定する、国内でも取得者の少ない最難関資格「Level 4 Diploma」を保持。
『Forbes JAPAN』オフィシャルコラムニストとして、ワインをビジネスや文化の視点から紐解く一方、国内外の産地を精力的に訪問し、ストーリーを丁寧に紡ぐ執筆活動を展開。スーパーで手に入るデイリーワインからハレの日の1本まで等しく愛し、初心者目線の解説に定評がある。また、茶道や着物を日常に取り入れたライフスタイルを実践し、ワインと日本の美意識を交差させた独自の楽しみ方を発信している。趣味はアルゼンチンタンゴ。