職場や家庭など、自分では選べない人間関係の中に、どうしても苦手な相手がいることがある。そういう場面でどう振る舞うかについて、哲学者は明確な指針を示している。

社会生活 注意 寛容

社会生活には、苦手な人と過ごす場面が必ずある

自分が付き合う人を完全に選べる状況は、現実にはほとんど存在しない。
職場の同僚、取引先、親族、近所の人――
こうした関係は、自分の意思とは関係なく生まれ、
苦手だと感じていても、一定の時間をともに過ごさなければならないことがある。

こうした状況をどう乗り越えるかについて、ショーペンハウアーは具体的な姿勢を示している。
それは「慎重であること」と「寛容であること」という、二つの軸だ。

慎重さが損害を防ぎ、寛容さが衝突を避ける

ショーペンハウアーは、社会生活において苦手な人と一緒に過ごすこともあるだろうが、言動に注意し、寛容であれと述べている。
慎重であれば損害と損失を防ぎ、寛容であれば衝突や喧嘩を避けることができる、と言うのだ。

まず「慎重であること」について言えば、
これは自分の言動に注意を払うということだ。
苦手な相手との関係において、感情のままに言葉を発してしまうと、
余計な損害や損失を招くことになりかねない。
発言のひとつひとつを意識的にコントロールし、
不必要なリスクをつくらないようにすることが、慎重さの意味するところだ。

次に「寛容であること」は、相手の言動をある程度受け入れ、
衝突や喧嘩を避けるための姿勢だ。
苦手な相手の言葉や行動に対して、逐一反応してしまえば、
摩擦はいつまでも絶えない。
多少の不快感があっても、そこに強く反応せず受け流す余裕を持つことで、
無用な衝突を防ぐことができるという。

苦手な相手との関係を、消耗なく乗り越えるために

慎重さと寛容さは、どちらも自分自身を守るための手段でもある。
苦手な人との関係において感情的になることは、
多くの場合、自分が最も消耗する結果を招く。
慎重に言動を選び、寛容な態度で接することは、
相手のためというよりも、自分のエネルギーを無駄に消費しないための、現実的な選択だ。

苦手な相手を好きになる必要はないし、深く関わる必要もない。
ただ、その場での言動に注意し、衝突を避けることに集中する――
それだけで、苦手な人間関係が自分の日常を大きく乱すことを、ある程度防ぐことができる。

今日から試すなら、苦手な相手と接する場面で、まず「慎重に言葉を選ぶこと」と「相手の言動を流すこと」の二つだけを意識してみることだけでいい。

(本記事は『求めない練習 絶望の哲学者ショーペンハウアーの幸福論』をもとに作成しました)