「地頭」を鍛えたいと思っても、今さら変えられないものと思われがちだ。だが、多くの社員を育成してきた東証プライム上場社長の木下勝寿氏は新刊『地頭スイッチ』で、「地頭はセンスではない。スイッチの押し方さえわかれば変えられる。AI時代になればなるほど『地頭』が重要になる」という。「仕事の質を分けるポイント」とは? ライター照宮氏に寄稿いただいた。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)

仕事の質は手を動かす「前」に9割決まる!Photo: Adobe Stock

後輩の悲劇

以前、ある会社で人件費の試算を担当する部署にいたことがある。
上からの要望に応じてExcelで資料をつくる仕事で、採用計画や予算の検討に使われる表を毎年更新していた。

そこに、Excelが少し苦手な後輩が入ってきた。
前年の表を渡して同じように更新するよう伝えると、データを今年のものに貼り付けて数字を差し替えることはできるようだった。

ところがその年、人事制度が変わった。
契約社員から正社員への登用が増える方針になり、人件費の試算には単純な前年比較では対応できなくなっていた。

契約社員のままで推移した場合と、登用が増えた場合のコスト比較など、制度変更を加味した複数パターンの試算が必要だった。
だが、後輩にそのことを説明しても、ピンときていない様子だった。

「伸び悩む人」のたった1つの共通点とは?

問題解決のスピードと精度で他の追随を許さない木下勝寿氏は、著書『地頭スイッチ』の中でこう述べている。

知頭は本来の目的を理解していないため、想定外の事態に対応できません。
(中略)
その結果、形式だけ整った資料、目的からズレたアウトプット、効果の出ない実行が積み重なります。
――『地頭スイッチ』より

後輩は、そもそも前年の表が何を示しているのかを理解できていないから、どんな表をつくればいいのかわからなかったのだ。

本書『地頭スイッチ』が指摘するのは、目的を理解せずに手段を実行すると、仕上がった瞬間に成功したと感じてしまうということだ。
形が整っているから、ズレに気づかない。
そして気づかないまま、同じことを繰り返す。

「自分が何を見て動いているか」を問い直す

仕事の質は、手を動かす前に目的を理解しているかどうかで決まる。
自分が今やっていることの目的を、どこまで理解して動いているか。
それを問い直す機会は、意外と少ない。、本書はそのきっかけを与えてくれた。