同じ東大生からも優秀すぎて「宇宙人」と尊敬される、定員約100人のレア集団、東大理三の謎に包まれた実態を、教育ジャーナリスト・庄村敦子が取材。『東大理三の世界 日本一の天才集団にみた謎すぎる生態』では、普通の大学生とはまるで違う学生生活、恋愛、家庭環境、お金の話などに加え、天才すぎて凡人には理解不能な奇人変人エピソード満載。激レアな天才たちの頭の中、人物像、おいたち、卒業後の進路など徹底解剖! (構成/ダイヤモンド社書籍編集局・中村直子)

東大医学部なのに…医師国家試験の合格率が全国平均を下回る理由Photo: Adobe Stock

なぜ? 医師国家試験の合格率が、全国平均を下回った年も!

 学生生活に試験はつきものです。東大には試験勉強を助け合う文化があり、各クラスにシケ対(試験対策委員会)があります。そしてその委員長はシケ長と呼ばれています。

 担当者は、自分が担当する授業に出席して、要点などをノートにまとめます。そのノートに加え、過去問と解答もまとめて、シケプリ(試験対策プリント)を作成します。

 シケプリのレベルは作る人によってさまざまで、将来シケ長になりたいという1年生男子によると、「シケプリが教科書レベルの人もいるらしい」とのことです。このシケプリのおかげで、進級は比較的楽です。

 入試の偏差値は全国トップで、シケプリの文化もある東大医学部ですが、意外なことに医師国家試験の成績は全国平均ぐらい。いや、全国平均を下回る年もあります。これはなぜでしょうか。

 まず、医師国家試験について簡単に説明します。

 医師国家試験は1985年、1997年、2001年に大変革が行われ、近年では2018年に大きく変わりました。以前は丸暗記でもある程度対応できましたが、現在は「患者の症状などから、どのような対応を取るか」といった臨床問題を重視する傾向が強まり、難化しました。

 合格率は90%ぐらいですが、決して合格が簡単なわけではありません。6年間勉強してきた医学生の約10%が不合格になってしまう、過酷な試験です。

 実際に、7年連続不合格になり、2025年3月に合格した人がいます。彼は理三にも9浪のすえ合格し、大学こそ留年せずに卒業しましたが、医師国家試験でも浪人が続きました。2018年の大改革も浪人を重ねた原因のひとつかもしれません。

 東大医学部の合格率が低いのにはいくつかの理由が考えられます。

 いちばんの理由は、東大ではほとんど対策をしていないことです。

 2023年に卒業した医師が、卒業試験について話してくれました。

「かつては教授の趣味のような、国家試験を意識しない難易度の高い卒業試験だったようですが、私の5学年上くらいから変わったそうです。

 私のときは全医学部が実施する『Post-CC OSCE』という、臨床実習後の実技試験と口頭試問のテストだけでした。他大学はOSCEに加えて独自の卒業試験もあるところが大半だと思います」

 私立大学は、医師国家試験の合格率が志願者の増減に影響するため、対策に力を入れているところが大多数です。国家試験を意識した卒業試験を行う大学も少なくありません。

 2025年に合格率100%を達成した国際医療福祉大学(千葉県)は、約20人の教員で「国家試験対策委員会」を立ち上げ、教員が手厚いサポートを行っています。

 また、医師国家試験予備校の講師が講義を行ったり、成績不振な学生を合宿に参加させたりする大学もあります。

医師国家試験をなめている? 理三だからこそ落ちる理由

 他大学の医学部は、医師になりたい人が入学するのに対し、東大理三は入学の時点で医師になる気がない人、医師になるかどうか決めていない人が一定数います。国家試験の勉強に身が入らない人、起業など学業以外で忙しく、試験勉強の時間をとれない人がいることも原因として考えられます。

 内科医の上昌広さんはこう分析します。

「最難関入試を突破したという自信があるから、医師国家試験をなめているのだと思います。不合格になっても、本気で勉強すると、だいたい翌年には合格しています」

 精神科医の西村光太郎さんは、医師国家試験の勉強を振り返ります。

「東大は国試対策をまったくやらないから、毎年不合格者が出ていました。だから『国試をなめたらあかん』と思い、国対(医師国家試験対策委員)になりました。役得として、過去のデータや予備校の教材、DVD等を借り放題だったのがありがたかった。それでなんとか合格にたどり着きました」