トレーナーの指導を受けながら筋トレをする女性写真はイメージです Photo:PIXTA

人を動かすとき、正しい助言をすぐに与えることが最善とは限らない。筋トレに見向きもしなかった女性を約3カ月で自発的な行動へ変えた、指導の順序とは。※本稿は、パーソナルトレーナーの清水 忍『一流を支えるトレーナーの最強の教え方』(幻冬舎)の一部を抜粋・編集したものです。

人を動かす前に
相手の「現在地」を見極める

 人は、考え方の変化に伴って行動が変わっていきます。この概念は「行動変容」と呼ばれ、1980年代から健康維持の分野などで活用されてきました。近年ではビジネスの人材育成でも注目されています。

 私はこの「行動変容」の理論を現場に取り入れてから、指導が劇的にうまくいくようになりました。ぜひみなさんにも活用してほしいと思っています。ちなみにここで紹介するのは、私が指導現場で即効性を出せるようアレンジした独自のものです。従来の理論とは若干異なる部分もあるかもしれませんが、その点はご承知おきください。

 行動変容理論では、人の行動は次の5つの段階を経て進んでいくとしています。相手が今どこにいるかで、指導の仕方はガラリと変わります。まずは各段階の特徴を整理してみましょう。

行動が変わるまでの
5つの段階

・第1段階:【無関心】考えてもいない状態

 そのことに関心さえ持っていない状態です。たとえば、誰が見ても運動すべき肥満の人に「毎日歩きましょう」と言ったとします。この人が『無関心』なら、返ってくるのは「時間がない」といった言い訳ではなく、もっと手前の「え、なんで?」という言葉です。自分に必要があるなんて微塵も思っていないのです。

・第2段階:【関心】一般論としてはわかっている状態

「運動はいいものだ」とは認識していますが、本気でやる気はない状態です。お菓子をパクパク食べながら「あー、そろそろ痩せなきゃなぁ」と呟いている感じですね。悪い言い方をすれば「口だけ」の段階です。

・第3段階:【準備】自分事になり、準備を始めた状態

 自分にとって重要だと気づき、シューズを買ったりジムに入会したりといった動きを見せます。ただし、まだ「継続的な行動」にはいたっていません。一度ウォーキングしてみた、というのもまだこの『準備』です。明日やめてしまう可能性が非常に高いからです。

・第4段階:【実行】実際に行動を起こしている状態

 明らかに動き出していますが、習慣として定着はしていません。始めて10日しか経っていなければ、どんなに本人が「楽しい」と言っていても、まだこの段階。不安定で、挫折しやすい時期でもあります。

・第5段階:【維持】生活の一部になった状態

 6カ月以上の継続ができている状態です。人は3カ月に1度の割合で、挫折の波(怪我や多忙、環境変化)が来ると言われます。それを2回乗り越えて半年続けば、ようやく「長く続く可能性が高い段階」に入ったと言えます。