多くの職場には、「人間関係をこじらせる人」と「決してこじらせない人」がいる。その差は一体どこにあるのか? 「ネロ・ブック・アワード」金賞受賞し、山口周氏が「決して寝る前に読み始めないこと。一度ページをめくってしまうと止めるのは不可能です」と絶賛している全米ベストセラー『極限の漂流118日間』をもとに、両者の違いについて、ライターの照宮遼子氏がレポートする。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)

人間関係をこじらせない人Photo: Adobe Stock

起きようとしたら全く動けなかった日

 以前、海外で働いて10か月が過ぎたころから体調が悪くなっていた。
 朝起きても疲れが抜けず、頭がぼんやりする日が続いていた。
 それでも会社では、いつも通り仕事をこなしていた。

 ある朝、起きると、ひどい頭痛と吐き気で起き上がることができなかった。
 会社には「ちょっと体調が悪いので休みます」とだけ連絡した。
 本当はちょっとではなかった。動くだけで頭が割れるように痛い。病院に行くと「ストレス性の病気」と診断された。

人間関係をこじらせる人の共通点とは?

「波の数ほどの絶望を切り裂いていくと世界最大のシーフードレストランがあった」と椎名誠氏が評した『極限の漂流118日間』(ソフィー・エルムハースト著/村井章子訳)には、相手の状態を見て、深刻な事実を告げなかったシーンがある。

脊椎、臀部、脚のあたりにできた傷が次第に進行して深くなり、ぱっくり口を開けてじくじくしていた。(中略)
傷は深く傷口の大きさは二センチ以上あったが、モーリスには見られないのをいいことに、傷は浅いとマラリンは嘘を押し通した。

――『極限の漂流118日間』より

 妻のマラリンには、その傷が深刻な状態だとわかっていたが、濡れたラフトの中では、できることは限られていた。
 その深刻さをそのまま伝えてしまうと、夫のモーリスの気持ちまで折れてしまうかもしれない。

 人は、本当に深刻なことほど、そのまま言えなくなることがある。
 言葉を小さくすることで、なんとかその場を保とうとするのだ。
 重い事実をどんな言葉で伝えるかは、海の上だけでなく、私たちの日常にも潜んでいる。

本当のことを言う怖さに向き合う

 仕事で相手に何かを指摘するとき、家族に深刻なことを伝えるとき、本当のことをそのまま言うのが難しい場面がある。
 どこまで言うかで、相手の受け止め方は変わってくる。
 大切なのは、相手が今受け止められる言葉を選ぶことだ。

 本書は、海の上で生き延びるための行動だけでなく、極限状態で人がどのように言葉を選ぶのかも描いている。
 重い事実を抱えながら、それをどう伝えればいいのかわからない人に、言葉を選ぶ難しさと伝え方の本質を教えてくれる一冊でもある。