格差社会イメージ写真はイメージです Photo:PIXTA

日本では働く人の6割超が中小企業に属している。しかし、「中小企業は低賃金」という通説を統計で確かめると、調査によってまるで違う姿が現れる。企業規模別の給与の実態と、数字が食い違う理由を国際比較から読み解く。※本稿は、名古屋商科大学ビジネススクール教授の原田 泰編著、駒澤大学経済学部准教授の井上智洋編著、上智大学経済学部准教授の中里 透編著『政府支出を考える』(金融財政事情研究会)の一部を抜粋・編集したものです。

「中小企業は低賃金」
という通説を検証する

 中小企業の生産性が低く、それゆえ利益があがらず、賃金が低いことが問題だとされている。そのようにいわれている中小企業の実態を、国際比較で明らかにしていきたい。

 国際比較を行う前に、日本だけのデータで、日本の中小企業とはどういうものかについて図表5-1でみておこう。

図表5-1 規模別法人数と規模別売上げ、資産、利益など(全産業)同書より転載 拡大画像表示

 日本ではおおむね資本金5000万円未満が中小企業とされている。1000万円未満の会社の1社当りの年間税引前当期純利益は240万円、1000万~5000万円でも1290万円にすぎない(図表5-1の13行目)。

 240万円の利益のために会社を設立していること自体が奇妙であり、個人事業主として行えばよいものを税制の優遇措置などのために法人となっているとしか考えられない。

 世界では資本金ではなく従業者数で中小企業を定義していることが多いので、2021年の経済センサスによって資本金と従業者数の関係を図表5-2でみておこう。

図表5-2 資本金階級別法人数と従業者数(全産業)同書より転載 拡大画像表示

 図表5-2によると、資本金1,000万円未満の企業の平均従業者数は7.1人、1000万~5000万円未満は22.3人、5000万~1億円未満は101.3人、1億~10億円未満は273.9人、10億円以上になって1631.0人となる。5000万円未満の企業の従業者数(経営者も含む)が20人から30人以下と考えられることから、これは日本人のもつ中小企業のイメージにも合致するだろう。

 ただし、OECDの従業員が249人以下という中小企業の定義では、中小企業は資本金が1億円を多少超えている企業までということになるだろう。

中小企業で働く人の割合が
日本は先進国との比較で高い

 国際比較のデータについては、幸いなことに、OECDが、中小企業と大企業の国際比較を行っている。図表5-3および図表5-4は、OECDの定義(従業員249人までが中小企業)により、主要国の中小企業と大企業を比較したものである。