職場でのすれ違いはなぜ起きるのか。2万人をみてきた組織開発コンサルタントで『組織の違和感』の著者である勅使川原真衣氏が、実際に職場に分け入って考えた、組織変革のコツを伝えます。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
仲がいいから全員参加するのか
「うちの部署、飲み会をやるとほぼ全員来るんですよ」
そう聞くと、仲のいい職場を想像するかもしれません。
上司と部下の距離が近く、仕事以外の話もできる。部署を越えて交流があり、みんな楽しそうに盛り上がっている。
組織としては、とてもいい状態に見えます。
もちろん、本当にみんなが行きたくて参加しているなら、何の問題もありません。
でも、「異様に参加率が良すぎる」場合も、少し立ち止まって考えてほしいと思います。
「なんとなく断れない」空気
「みんな行くから、自分だけ断りづらい」
「上司も来るし、顔を出しておいたほうがいい」
「行かないと、付き合いが悪いと思われそう」
「ここでできる人間関係が、仕事にも影響するかもしれない」
誰かに「絶対に来い」と言われているわけではないでしょう。それでも、なんとなく断れない。
こうした空気は、職場では意外と簡単に生まれます。
そして厄介なのは、その空気をつくっている側には、なかなか見えないことです。
上司は「自由参加だよ」と言っている。実際、参加を強制したこともない。だから「みんな来てくれるのは、うちのチームが仲良しだからだ」と思っています。
しかし、上司にとっての「自由参加」と、部下にとっての「自由に断れる」は別物です。
組織を考えるとき、制度やルールだけではなく、そこで一人ひとりがどう感じ、どう振る舞わざるを得なくなっているかを見ることが大切だと考えています。
そもそも、人との距離の取り方は人によって違うのです。
仕事が終わったあとに同僚と話すことでリフレッシュできる人もいれば、一人になることで回復する人もいます。
大人数の雑談から相手を知っていく人もいれば、仕事を一緒にするなかで少しずつ関係を築く人もいます。
どちらが正しいわけでもありません。
それなのに、「飲み会に来る人=チームを大切にしている人」「付き合いがいい人=コミュニケーション能力が高い人」という見方が生まれると、本来は個人の違いにすぎなかったものが、いつの間にか評価の差に変わってしまう。
すると人は、自分に合わない方法でも組織に合わせようとするでしょう。
本当は帰りたいけれど参加する。本当は大人数の場が苦手だけれど盛り上がっているふりをする。「楽しかったです」と言いながら、翌日はぐったりしている。
こうした小さな無理が積み重なる組織は、一見してまとまっていても、必ずしも健全とは言えません。
「行きたい」と同じくらい自然に「今日は帰ります」と言えるか
大切なのは、「全員が参加する組織」をつくることではありません。
参加したい人は心から楽しめて、参加したくない人は何の気兼ねもなく帰れる。そのどちらを選んでも、仕事上の関係や評価が変わらない。そんな状態をつくることです。
人にはそれぞれ凸凹があります。人付き合いが好きな人もいれば、一人の時間が必要な人もいる。それを同じ型にはめるのではなく、それぞれが自然体でいられる余白を残しておく。
もし職場の飲み会に毎回ほぼ全員が参加しているなら、「うちは仲がいい」と喜ぶ前に、一度だけ考えてみてください。
この組織では、「行きたい」と言うのと同じくらい自然に、「今日は帰ります」と言えるでしょうか。
組織の健全さが表れるのは、参加率の高さではありません。
むしろ、誰かがみんなと違う選択をしても、それを誰も気にしない。その自由があるかどうかなのです。
忙しいリーダーに、効果のあることだけ

「好き嫌い」や「やる気」、
「あうんの呼吸」に頼らず
組織を機能させるための具体策!
対話より先に、やるべきことがある。
「大丈夫です」のひとことでモヤッとしたとき、
待ちの姿勢ばかりの部下に自走してもらうにはどうしたらいいのか、
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えるための効果的な伝え方は?……
ビジネスの現場に尽きないコミュニケーションの悩みを、「マネジメント」のスキルとして、「3段階」に分けて打ち手を授けるのが本書です。
まずは土台となる「観察」のスキルを紹介。ここでは、違和感に着目するというユニークな手法をとります。
そして、「自分を知る」「相手を知る」「組み合わせる」の3段階で、関係性から組織の最適解を導き出します。
自分と相手の「持ち味」を知り、
組織をつなぎ直すための一手を
この3段階を経て、違和感を乗り越えるための伝え方や振る舞い方を具体例とともに紹介します。
スキルといっても、難しいものではありません。「あれ、今なんか変だったな」という気づきを、手がかりにつかむこと。
さらに本書では、「持ち味」を知るためのいくつかの診断も掲載。すぐにチームに実装できるような作りにしています。
事前に特別な準備や学習はまったく不要。やるべきことが明確になり、現場のもやもやがクリアになります。
いつでも「今ここ」での気づきから組織を改善できる。行き詰まった状態を打開する新鮮な方策が詰まった、忙しいリーダーの支えになる一冊です。

本書の内容
はじめに
ギリギリな組織の頼みの綱は
人それぞれが「正しさ」を生きている
「持ち味」の組み合わせと「解釈」のクセ
第1章 違和感とは何か? ―― 「決めつけ」が横行する現場で
観察の達人!? コナンくん
仕事に本音はいらない
「なんか変な感じ……」の正体
人はみな「違う色のメガネ」をかけている
「職場のすれ違い」は決めつけから生まれる
とにかくみんな疲れている
すべてのコミュニケーションの基本となる「観察」の3ステップ
第2章 「自分を知る」 ―― 違和感に気づくと「自分」がわかる
自分の本音がわからない
変えられない性質は確かにある
手がかりは「どうしてもとりつくろえない瞬間」
「わかってほしかった」は「解釈のクセ」が生み出している
「自分が知らない自分」はスマホが教えてくれる
第3章 次に、「相手を知る」 ―― 人間関係の違和感から「相性」を知る
「伝える」の前に「見る」がある
「言わなくてもわかるでしょ」はマネジメントの怠慢
相手の何を「見る」のか? ―― ソーシャルスタイルの4類型
「他者の合理性」を知るヒント
「人それぞれ」では話が進まない
第4章 そのうえで、「組み合わせる」 ―― 違和感を役立て最高の組織をつくる
「今いるメンバー」で最高のチームをつくる
「好き嫌い」より「相性」を考える
それは「評価」ではなく「評判」です
「自分でやったほうが早い病」への処方せん
「似た者同士」がうまくいくとは限らない
職場は「ドレッシング状態」にならなくていい
個人と組織のサンドイッチ作戦
第5章 違和感を乗り越えるための話し方・振る舞い方
役割の実行を後押しする「面談」「相談」「雑談」「対話」
「大丈夫です」の複雑さ
「よかれと思って」が残念なワケ
待ちの姿勢ばかりの部下に「自走してほしい」と伝えたい
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えたい
コミュ力が高い人の「真の使命」は、相手に合った手段を選ぶこと
危うい場面で役に立つ「否定しない技術」
会議時間を短縮すれば「生産性」が高まるのか?
「困っている人」は「決めつけていない人」
第6章 「いてくれてありがとね」から始める組織改革
「いい人材がいない」と嘆く人は組織の価値を見落としている
「重すぎない信頼関係」のススメ
「健全に疑う」のススメ
100点を取ってきた子どもに「偉いね」と言ってはいけない理由
100%わかり合うことは無理、それでも「訂正」し合うことはできる
「自分のまま働く」ために
解説 ―― 坂井風太