職場でのすれ違いはなぜ起きるのか。2万人をみてきた組織開発コンサルタントで『組織の違和感』の著者である勅使川原真衣氏が、実際に職場に分け入って考えた、組織変革のコツを伝えます。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

組織飲み会Photo: Adobe Stock

仲がいいから全員参加するのか

「うちの部署、飲み会をやるとほぼ全員来るんですよ」

 そう聞くと、仲のいい職場を想像するかもしれません。

 上司と部下の距離が近く、仕事以外の話もできる。部署を越えて交流があり、みんな楽しそうに盛り上がっている。

 組織としては、とてもいい状態に見えます。

 もちろん、本当にみんなが行きたくて参加しているなら、何の問題もありません。

 でも、「異様に参加率が良すぎる」場合も、少し立ち止まって考えてほしいと思います。

「なんとなく断れない」空気

「みんな行くから、自分だけ断りづらい」
「上司も来るし、顔を出しておいたほうがいい」
「行かないと、付き合いが悪いと思われそう」
「ここでできる人間関係が、仕事にも影響するかもしれない」

 誰かに「絶対に来い」と言われているわけではないでしょう。それでも、なんとなく断れない

 こうした空気は、職場では意外と簡単に生まれます。

 そして厄介なのは、その空気をつくっている側には、なかなか見えないことです。

 上司は「自由参加だよ」と言っている。実際、参加を強制したこともない。だから「みんな来てくれるのは、うちのチームが仲良しだからだ」と思っています。

 しかし、上司にとっての「自由参加」と、部下にとっての「自由に断れる」は別物です。

 組織を考えるとき、制度やルールだけではなく、そこで一人ひとりがどう感じ、どう振る舞わざるを得なくなっているかを見ることが大切だと考えています。

 そもそも、人との距離の取り方は人によって違うのです。

 仕事が終わったあとに同僚と話すことでリフレッシュできる人もいれば、一人になることで回復する人もいます。
 大人数の雑談から相手を知っていく人もいれば、仕事を一緒にするなかで少しずつ関係を築く人もいます。

 どちらが正しいわけでもありません。

 それなのに、「飲み会に来る人=チームを大切にしている人」「付き合いがいい人=コミュニケーション能力が高い人」という見方が生まれると、本来は個人の違いにすぎなかったものが、いつの間にか評価の差に変わってしまう

 すると人は、自分に合わない方法でも組織に合わせようとするでしょう。

 本当は帰りたいけれど参加する。本当は大人数の場が苦手だけれど盛り上がっているふりをする。「楽しかったです」と言いながら、翌日はぐったりしている。

 こうした小さな無理が積み重なる組織は、一見してまとまっていても、必ずしも健全とは言えません。

「行きたい」と同じくらい自然に「今日は帰ります」と言えるか

 大切なのは、「全員が参加する組織」をつくることではありません。

 参加したい人は心から楽しめて、参加したくない人は何の気兼ねもなく帰れる。そのどちらを選んでも、仕事上の関係や評価が変わらない。そんな状態をつくることです。

 人にはそれぞれ凸凹があります。人付き合いが好きな人もいれば、一人の時間が必要な人もいる。それを同じ型にはめるのではなく、それぞれが自然体でいられる余白を残しておく

 もし職場の飲み会に毎回ほぼ全員が参加しているなら、「うちは仲がいい」と喜ぶ前に、一度だけ考えてみてください。

 この組織では、「行きたい」と言うのと同じくらい自然に、「今日は帰ります」と言えるでしょうか

 組織の健全さが表れるのは、参加率の高さではありません。

 むしろ、誰かがみんなと違う選択をしても、それを誰も気にしない。その自由があるかどうかなのです。