定年や退職を目の前にして、「このまま静かに逃げ切ろう」と現状維持に甘んじるか。それとも、「自分はまだまだ成長できる」と変化意思を持って挑戦し続けるか。この一瞬の選択の差が、いかにその後の人生の明暗を分けるかに多くの人は気づいていません。この連載では、書籍『リーダーの仮面』をベースに、全ビジネスパーソンに必須の「人間の行動原理」と、自分の人生の最期まで成長の打席に立ち続けるためのマインドセットについて解説する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

定年を目前にして「働くのが最高に面白い」と言い切るリーダーの特徴・ベスト1Photo: Adobe Stock

定年を前にして「消化試合」に入る人

 50代後半や定年間近を意識する年齢になると、多くのビジネスパーソンが急速に保守的になり、組織における「安全地帯」を探し始めます。

「もうすぐ引退だから、余計なトラブルは避けて、定年まで無難にやり過ごそう」
「新入社員や若いリーダーたちが何をやっても、自分にはもう関係のないことだ」

 そう言って、自ら変化することや決断することをやめ、ただ時間が過ぎるのを待つ「消化試合」の生き方は、一見、賢くラクな逃げ切りに見えるかもしれません。

 しかし、これは自らの意思決定と成長を完全にサボっている状態であり、やがて来る長い老後を「抜け殻」のように過ごす悲惨なスタートラインです

 人間は、何かに向かって「不足」を感じ、それを埋めるために試行錯誤している時にしか、本当の喜びや生きている実感を得られないようにできているからです。

「変わる」と決める勇気だけ

パーフェクトな意思決定』という本で私は、何歳からであっても自分の仕事と人生の主導権を握るために、最も重要となる「変化意思」について、次のように熱く語りかけています。

「自分はこのままではいけない」と思った瞬間。
その時点で成長しています。
「よし、変わろう!」と決めるだけ。
それでいい。
何も損することはありません。
特別な能力もいらない。
エクセルも、統計学も、MBAも必要ない。
ただ決める。
そして、決めるための考え方を持っているかどうか。
あとは、自分の人生を生きてください。
本書の存在が読者のみなさまの背中を押し、たくさんの勇気ある決断がこの世に誕生すること。
それを心から願っています。
――『パーフェクトな意思決定』より

 今どんな年齢であろうと、どんな立場であろうと、特別な実績やスキルは関係ありません。

「このままではダメだ、自分は変わろう」と、自らの意思で小さな決断を下す

 その瞬間、あなたの目の前にある世界は「他人の決められた人生」から、「自分の人生」へと一変するのです。

最後のその日まで、リーダーの「仮面」をかぶれ

 定年を迎えるその瞬間まで「働くのが最高に面白い」と言い切るリーダーは、どれほど周囲が現状維持に流されようとも、決して成長の打席から降りようとしません。

 彼らは最後の最後まで「リーダーの仮面」をかぶり続けます。

「もう年だから」「若い人の邪魔をしないように」といった甘えや弱気の「素顔」を完全に仮面で覆い隠し、与えられた自分の役割を100%全うし、結果だけを見て淡々と行動を続けます。

 そしてその「仮面」は、定年を迎え、最後に組織を去るまさにその日に、初めて静かに脱ぐものなのです。

 いいリーダーの言葉は、時間差で遅れて効いてきます

 あなたが仮面をかぶり、責任を持って下してきた無数の「決断」の言葉は、あなたが去った後の組織に、そして巣立っていった元部下たちの心に、消えない灯火として時間差で効き続けます。

 自分の人生を、自分の意思決定で、最後の最期まで生き抜くこと。

 その誇りと覚悟こそが、働くすべてのビジネスパーソンが最後に行き着くべき、リーダーの本当の美しさなのです。