「時間があるときでいいからね」という優しいお願いが、実は部下の当事者意識を奪い、チーム全体のやる気を奪う最悪の指示です。人間は明確な責任と締め切りを課されない限り、言い訳を用意してラクをしようとする弱い行動原理を持っています。この本質を見誤るリーダーは、チームをただの馴れ合いの集団に変えてしまいます。この連載では、書籍『リーダーの仮面』をベースに、全ビジネスパーソンに必須の「リーダーシップ」のあり方を指南する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)
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「お願い」という名の責任転嫁
50代のベテラン管理職が部下に仕事を指示する際、「偉そうだと思われたくない」「ハラスメントが怖い」という心理的なブレーキから、お伺いを立ててしまうことがあります。
「手が空いたタイミングで、この資料をまとめてもらえると助かるな」
「悪いんだけど、これ、お願いできる?」
このような言い方は、一見すると部下に配慮した紳士的な上司に映るかもしれません。
しかし実際は、指示を出すというリーダー自身の「責任」から逃げ、成否の判断を部下の「やる気」に丸投げしているだけの最も卑怯な態度です。
明確な期限も責任の所在も示されない部下は、「いつやってもいい、やらなくても怒られない仕事」だと認識し、結果としてチームのスピードは地の底まで落ちていきます。
「あとは任せた」と丸投げするリーダー
『とにかく仕組み化』という本で私は、「仕事を任せる」という言葉の誤解について次のように厳しく指摘しています。
「何をしなければいけないか」「そのために何をやっていいか」
その線引きをするのです。
それを示さないまま、属人化させる意味で、「あとは任せた」と丸投げするリーダーやマネジャーは最悪なのです。
――『とにかく仕組み化』より
仕事を任せるとは、部下に「何を達成すべきか」の責任を明文化し、それを遂行するための「自由に動いていい範囲」をハッキリと与えることです。
この線引きがないまま「君のやりやすいように、あとは任せた」と言うのは、単なる「無責任な丸投げ」でしかありません。
これでは、目標が達成できなかったときに、部下は「やり方が分からなかった」「上司のサポートがなかった」と言い訳をする余地を無制限に得ることになります。
50代だからこそ、指示は「言い切り」
部下との間に無駄な葛藤や遠慮を挟む必要はありません。
「この業務は、◯月◯日の15時までに完了してください」
と、主語を「私」にして、明確な期限を定めた「言い切り」のトーンで仕事を任せるべきです。
リーダーは仮面をかぶり、人間関係での人気取りを一切捨て、役割に徹して線引きを引かなければいけません。
厳格に期限と責任を管理し、言い訳の余地を徹底的に排除すること。
それこそが、部下自身に自立したビジネスパーソンとしての足腰を鍛えさせ、チームの生産性を劇的に変える唯一の方法なのです。




