部下の機嫌を伺い、自分のエネルギーを消耗させている50代の管理職は少なくありません。「もっと熱意を持って話せば変わるはずだ」という精神論は、リーダーを老け込ませ、組織を停滞させるだけです。優れたリーダーは、感情ではなく、ある「冷徹な道具」を媒介にして部下と向き合っています。今回は、『リーダーの仮面』の思想をもとに、優秀なリーダーが実践している「感情の切り離し方」の極意を紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)
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部下との「感情の貸し借り」
年齢を重ねた管理職が陥りがちな失敗に、「部下のモチベーションを引き出そうと躍起になること」があります。
「もっとやりがいを持って働いてほしい」
「悩んでいる部下の心に寄り添い、熱意を語り合いたい」
そう考えて、面談で個人的な人生観を語ったり、仕事が終わったあとに飲みに連れて行って熱っぽく説教をしたりする。
しかし、これはマネジメントにおいて極めて危うい行為です。
上司が部下の「感情」に介入し、やる気を引き出そうとすればするほど、部下は「自分のモチベーションが上がらないのは、上司のサポートが足りないからだ」という甘えを学習します。
結果として、上司は「どうすれば部下のやる気が出るのか」と常に顔色をうかがうようになり、組織運営のスピードは致命的に遅れていきます。
部下の感情に付き合い、エネルギーを吸い取られているリーダーは、日々の疲弊からみるみる老け込んでいくのです。
ビジネスを前に進める「冷徹さ」
『数値化の鬼』という本で私は、仕事に感情を持ち込むことの不毛さと、それを断ち切るための合理的な判断軸について、次のように指摘しています。
「社長の『肝煎り』だから続けざるを得ない」
「現場に『愛着』があるから撤退したくない」
「社員全員、『身を粉にして』働いています」
こういう表現で議論していても、残念ながらビジネスは前に進めません。
感情に訴えかける言葉でしか話せないと、必ず失敗を繰り返すようになります。そうではなく、
「目標の『50%』の売上に届かなかったら事業は打ち切りにする」
「利益を『150万円以上』生む施策であれば進めていい」
というように、誰の目にも明らかな基準を設け、割り切ることが必要なのです。
まさに、これが「数値化の鬼」となる瞬間です。
――『数値化の鬼』より
何歳になっても驚くほど若々しく、仕事のパフォーマンスが高いリーダーは、部下と「感情の貸し借り」を絶対にしません。
彼らが職場で徹底しているのは、誰の目にも言い訳の余地がない「客観的な数字」によるコミュニケーションです。
「頑張っています」という言葉はスルーし、「目標に対して何%達成できたのか」という事実だけを淡々と受け止める。
これを行うだけで、上司の脳内から「嫌われたらどうしよう」「やる気をどう引き出そう」という余計な精神的ノイズが一瞬で消え去ります。
数字という共通言語で語れ
感情を排除したマネジメントは、冷たく見えるかもしれません。
しかし、これこそが「本当の優しさ」です。
ルールと数字という無機質な基準で評価される環境は、部下にとっても「上司の機嫌や好き嫌いに左右されない」という絶大な安心感をもたらします。
部下は余計な忖度をすることなく、自分の「不足」を埋めるための実務に100%集中できるようになり、結果として急速に成長していきます。
50代のベテランリーダーは、良いおじさんとして部下の愚痴を聞く「カウンセラー」になってはいけません。
リーダーの仮面をかぶり、感情を脇に置き、数字という共通言語のみで部下と対峙する。
この冷徹な割り切りができるリーダーこそが、余計なストレスから解放され、何歳になっても知的で若々しい、真に尊敬される背中を保ち続けることができるのです。




