どうすればお金をかけずに、売上や利益をもっと増やせるのか? この切実なお悩みに答えるのが、人気の販促コンサルタント・岡本達彦氏の最新刊『客単価アップ大事典 「つい買ってしまう」販促の仕掛け75』(ダイヤモンド社刊)です。同書は、「行動経済学×現場目線」で「つい買いたくなる」販促の仕掛けとは何かを言語化した初の書。本書が提示するのは、「お客様の購買行動そのものを変える設計とは?」です。どうすれば、「利益が残る経営」へと変われるのか? 本連載では、『客単価アップ大事典』に収録しきれなかった事例の中から、現場ですぐに導入でき、成果につながりやすい客単価アップの仕掛けを厳選してご紹介していきます。
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商品を使い切った瞬間に、
もう一度お店へ来てもらえる理由
化粧品店の店頭で、「使い終わった化粧品の空き容器を回収しています」という案内を見かけることがあります。
対象となる容器を店へ持っていくと、回収ボックスへ入れてもらえるだけでなく、ポイントやサンプルなどが受け取れる場合もあります。
お客様にとって、使い終わった化粧品の容器は、中身がなくなった時点で価値のないものです。家庭ごみとして捨てられるはずの容器を、なぜ化粧品店は、わざわざ店頭で集めようとするのでしょうか。
しかも、容器を回収するには、保管場所を用意し、素材ごとに選別して、リサイクル事業者などへ引き渡す必要があります。
「そこまで手間をかけて、空の容器を集めることに、どのような意味があるのだろう?」
そう思う人もいるでしょう。もちろん、使用済み容器を再資源化し、廃棄物を減らすという環境面での目的があります。
しかし、販促の面から見ると、空き容器にはもう一つの大きな価値があります。
空になった容器は、お客様が商品を最後まで使い切ったことを示すと同時に、次の商品が必要になったことを知らせるものだからです。その容器を店へ持ってきてもらえば、化粧品店は、お客様が買い替えを考えやすいタイミングで再来店してもらえます。
つまり、空き容器回収は、価値のなくなった容器を集める取り組みであると同時に、商品を使い終わった瞬間を次の購入へつなげる販促の仕掛けなのです。
化粧品の容器は、
家庭で簡単に再利用できるとは限らない
化粧品には、さまざまな形や素材の容器が使われています。化粧水のボトル、クリームの容器、口紅のケース、ポンプ、キャップなどがあり、一つの商品でも複数の素材や部品が組み合わされている場合があります。
中身が少し残っていたり、容器が小さかったり、部品を簡単に分解できなかったりするため、家庭で分別して資源として出すことが難しいものもあります。
そこで化粧品会社や小売店が店頭に回収拠点を設け、対象となる使用済み容器を集める取り組みが行われています。
回収された容器は、取り組みの内容に応じて選別され、再生素材などへ活用されます。複数の化粧品会社と小売店が協力し、店頭に使用済み化粧品容器の回収ボックスを設置する取り組みも行われています。
回収されたプラスチック容器を原料へ戻し、新しい化粧品容器の一部に再利用する仕組みもあります。化粧品店が回収窓口になることで、家庭では資源として扱いにくい容器も、まとめて回収できるようになります。
お客様にとっても、「ごみにしてしまうより、店へ持っていけば再利用してもらえる」という分かりやすい参加方法になります。空き容器の回収には、廃棄物を減らし、資源を循環させるという実際の役割があるのです。
空の容器は、
「次の商品が必要」という合図になる
しかし、店頭で空き容器を回収する効果は、資源の再利用だけではありません。空の化粧水ボトルを持っている人は、化粧水を使い切ったばかりです。空のクリーム容器を持っている人は、次に使うクリームが必要になっています。
つまり、空き容器は、
「このお客様は、この商品を最後まで使った」
「そろそろ次の商品を購入する時期である」
という二つのことを示しています。
通常、化粧品店には、お客様がいつ商品を使い切るのか正確には分かりません。購入履歴からおおよその時期を予想して案内を送ることはできますが、毎日使う量は人によって異なります。まだ商品が残っているときに買い替えを勧めても、「なくなってから買えばよい」と先送りされるかもしれません。
反対に、使い切った後に時間がたつと、近くのドラッグストアやインターネットで別の商品を購入される可能性があります。しかし、お客様自身が空の容器を持って来店すれば、その日は次の商品を提案するのに適したタイミングです。
店員は容器を見ながら、
「同じ商品を続けますか?」
「季節が変わったので、こちらのタイプも試してみませんか?」
「今お使いの商品と組み合わせるなら、こちらもおすすめです」
と案内できます。
空き容器は、廃棄物であると同時に、お客様が買い替えの時期を迎えたことを知らせる「再購入の合図」でもあるのです。
次回来店のきっかけと、再購入先を自店に向けるために、
ポイントを渡している
空き容器を回収するだけでは、お客様はなかなか店まで持ってきてくれません。容器は家庭ごみとして捨てたほうが簡単だからです。
そこで一部の化粧品店では、対象となる空き容器を持参したお客様に、ポイントやサンプルなどの特典を付けています。
本来なら捨てるだけだった容器に特典が付くと、お客様の意識は変わります。「空の容器だから捨てよう」ではなく、「持っていけばポイントがもらえるから、取っておこう」と考えるようになります。
容器が空になった瞬間に捨てず、次の来店まで自宅に保管してもらえるのです。してポイントを受け取るためには、対象店舗へ行く必要があります。
ポイントは、現金として自由に使えるものではありません。そのブランドや店で商品を購入するときに使うものです。
そのため、
空き容器を持って来店する
↓
ポイントを受け取る
↓
そのポイントを使って商品を購入する
という流れが生まれます。
店側は、容器そのものを買い取っているのではありません。次回来店のきっかけと、再購入先を自店に向けるために、ポイントを渡しているのです。
空き容器を持って来店すると、
同じ商品以外も目に入る
空き容器を回収してもらうために店へ行けば、お客様は売り場に入ることになります。そこで新商品や季節限定品、ほかの商品を目にします。
例えば、化粧水の空き容器を持ってきたお客様が、同じ化粧水だけを購入するとは限りません。
店員から、
「化粧水と一緒に使える美容液があります」
「乾燥しやすい季節なので、クリームも変えてみませんか?」
「こちらの詰め替え用なら、次回から容器をそのまま使えます」
と案内されれば、予定していなかった商品も検討する可能性があります。
また、回収時にもらったポイントを使うために、「ポイントだけでは足りないけれど、差額を払って購入しよう」と考えることもあります。
例えば、500円分のポイントを持っていて、欲しい商品が3000円なら、お客様は残りの2500円を支払います。空き容器への特典として渡したポイントが、新しい購入を始めるきっかけになるのです。
さらに、使い終わった商品の容器を見せれば、店員もお客様が何を使っていたのか分かります。「この商品を使い切った」という事実をもとに、次の商品や関連商品を案内できます。
空き容器回収は、お客様を店へ呼び戻すだけではありません。使い終わった商品を起点に、買い替えや関連商品の提案を始められる接客のきっかけにもなっているのです。
環境活動への参加が、
ブランドを選び続ける理由になる
化粧品は、同じような機能や価格の商品が数多く販売されています。商品そのものだけで比較されると、お客様は、価格や香り、広告などをきっかけに別のブランドへ移ることがあります。
しかし、自分が購入した商品の容器を店へ返し、それが資源として再利用される取り組みに参加すると、ブランドとの関係が変わります。
お客様は商品を買うだけでなく、
「このお店と一緒に、ごみを減らしている」
「容器を捨てずに、資源の循環に参加している」
という感覚を持つようになります。
自分が空き容器を持参した行動が、環境への配慮につながっていると感じれば、その店やブランドを利用すること自体に新しい意味が加わります。次に化粧品を選ぶときも、
「また容器を回収してもらえる商品にしよう」
「環境への取り組みを続けている店から買いたい」
という選択理由が生まれます。
さらに、回収できる容器が特定の店やブランドの商品に限られている場合は、その商品を使い続けるほど、同じ回収制度を繰り返し利用できます。
その結果、
商品を購入する
↓
最後まで使い切る
↓
空き容器を店へ持っていく
↓
ポイントや特典を受け取る
↓
次の商品を購入する
↓
新しい空き容器を再び持っていく
という循環が生まれます。
化粧品店は、商品の使用終了をお客様との関係が終わる瞬間にするのではなく、次の購入が始まる瞬間へ変えているのです。
他のお店でも使える
「使い終わった物を再来店理由にする」設計
・コーヒー店
使用済みのコーヒーカプセルやコーヒー豆の袋を店頭で回収し、一定数を持参したお客様にポイントを付与する。商品を使い切った時期に来店してもらい、新しいカプセルやコーヒー豆の購入につなげる。
・プリンター販売店
使用済みインクカートリッジを店頭で回収し、対象商品を購入する際に使える特典を用意する。インクを使い切ったことが買い替えの合図になるため、ほかの店で購入される前に再来店してもらえる。
・スポーツ用品店
履きつぶしたスポーツシューズや傷んだウェアを回収し、新商品の購入に使える特典を付ける。古い商品を手放すことが新しい商品を選ぶきっかけになり、買い替えを先延ばしにしているお客様の決断を促せる。
まとめ
化粧品店が、価値のない空の容器を欲しがるのは、資源回収や環境への配慮だけが理由ではありません。
・家庭では分別や再利用が難しい化粧品容器を店頭でまとめて回収し、再生素材などへ活用する機会を作り
・空き容器を「商品を最後まで使い切った証拠」として捉えることで、お客様が次の商品を必要とする時期を逃さず
・ポイントやサンプルなどの特典を付けることで、家庭で捨てられるはずの容器を、店へ持ってくる理由に変え
・空き容器を持って来店したお客様に、同じ商品の買い替えだけでなく、新商品や関連商品を提案する接点を作り
・環境活動に参加しているという実感を通じて、商品以外にもその店やブランドを選び続ける理由を増やし
・購入、使用、容器回収、特典、再購入という循環によって、商品を使い終わった瞬間を次の購入の始まりに変える
という、捨てられるはずの容器を再来店と継続購入のきっかけに変える販促の仕掛けなのです。
販促コンサルタント
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