どうすればお金をかけずに、売上や利益をもっと増やせるのか? この切実なお悩みに答えるのが、人気の販促コンサルタント・岡本達彦氏の最新刊『客単価アップ大事典 「つい買ってしまう」販促の仕掛け75』(ダイヤモンド社刊)です。同書は、「行動経済学×現場目線」で「つい買いたくなる」販促の仕掛けとは何かを言語化した初の書。本書が提示するのは、「お客様の購買行動そのものを変える設計とは?」です。どうすれば、「利益が残る経営」へと変われるのか? 本連載では、『客単価アップ大事典』に収録しきれなかった事例の中から、現場ですぐに導入でき、成果につながりやすい客単価アップの仕掛けを厳選してご紹介していきます。
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カラーを安くしても、店の売上が増える理由
美容室のメニューを見ると、ヘアカラーを一回ずつ注文する方法とは別に、一定期間に複数回利用できる「カラーチケット」や「カラー回数券」が販売されていることがあります。
例えば、3カ月間に根元染めを2回利用できる回数券や、半年間に複数回利用できるチケットなどです。この場合、一回当たりの料金を計算すると、通常料金より安くなる場合があります。
「一回ずつ定価で利用してもらったほうが、美容室は儲かるのでは?」
そう思う人もいるでしょう。
しかし、美容室の売上を左右するのは、一回の客単価だけではありません。お客様が何日ごとに来店し、一年間に何回来てくれるかという「来店頻度」も重要です。
ヘアカラー、特に白髪染めや根元染めは、一度施術しても、髪が伸びれば再び境目が目立つようになります。
そこで美容室は、定期的に発生する悩みに対して、複数回分を先に販売します。お客様は、一回当たりの料金を抑えながら、きれいな状態を保ちやすくなります。美容室は、次回以降の来店を先に確保できます。
つまり、カラー回数券は、カラーを安く販売するための商品ではありません。一回の利益を少し下げても、来店回数と年間の購入額を増やすための販促の仕掛けなのです。
髪は伸びるため、次の悩みが必ず発生する
一般的な商品では、一度購入して満足すると、次にいつ必要になるか分からないことがあります。
しかし、ヘアカラーには比較的分かりやすい再来店のタイミングがあります。施術直後はきれいに染まっていても、時間がたつと髪が伸び、根元に元の髪色や白髪が現れます。
お客様自身も、
「そろそろ根元が気になってきた」
「人に会う前に染めておきたい」
と感じるようになります。ところが、そのたびに美容室を予約して料金を支払うとなると、
「まだ、それほど目立っていない」
「今月は出費が多いから、もう少し先でいい」
「自宅で染めて済ませよう」
と来店を先延ばしにすることがあります。
そこで、次に必要になるカラーを回数券として先に購入してもらいます。
すでに支払いを終えていれば、次回来店時に感じる金銭的な負担は小さくなります。
お客様の判断は、「お金を払って、また染めるか」ではなく、「購入済みのカラーを、いつ使うか」へ変わります。
カラーの必要性が生じるたびに購入を判断してもらうのではなく、最初の来店時に複数回分の利用を決めてもらうことで、次回来店への心理的な障壁を下げているのです。
有効期限が、来店の先延ばしを防ぐ
カラーチケットには、有効期限と利用回数が設定されていることがあります。期限がなければ、お客様は、「チケットは持っているから、また気が向いたときに行こう」と考え、来店を後回しにするかもしれません。
しかし、「3カ月で2回」「半年で4回」などの条件があると、期限内に使うための来店間隔が自然に決まります。
例えば、半年で4回使う回数券なら、一回使った後に、「残り3回を使うには、次はいつ頃がよいか」
と考えるようになります。
美容師も、「次は根元が気になり始める6週間後くらいにしましょう」と、次回予約を具体的に提案しやすくなります。人は、購入した権利を使わずに失うことへ強い抵抗を感じます。
期限が近づくほど、「せっかく買った回数券を無駄にしたくない」という損失回避の心理が働きます。
店から何度も来店をお願いしなくても、お客様自身が未使用回数と期限を意識して予約を入れるようになります。
有効期限は、単に店側の管理をしやすくするためだけではありません。「いつか行く」を「期限までに行く」へ変える役割を持っているのです。
回数券を持つと、
ほかの美容室へ行きにくくなる
美容室は、ほかの店へ乗り換えられやすい業種です。新しい店の割引クーポンを見つけたり、希望日に予約が取れなかったりすると、別の美容室を試すお客様もいます。
しかし、カラー回数券を購入すると、その美容室に未使用の施術が残ります。
別の店でカラーをすると、
「すでに支払った回数券を使えない」
「残っている分が無駄になる」
と感じます。
そのため、多少予定を調整してでも、回数券を購入した美容室へ戻る可能性が高くなります。一度だけ安いクーポンを提供しても、次回は別の店へ移られるかもしれません。
一方、複数回利用できる回数券なら、お得感を提供しながら、複数回にわたって同じ店を体験してもらえます。
同じ美容師に髪の状態を見てもらい、仕上がりや接客への満足が積み重なれば、回数券を使い終えた後も継続する理由が生まれます。
カラー回数券は、単に再来店を約束してもらうだけではありません。お客様がその店を「いつもの美容室」と感じるまでの時間を作る仕組みでもあるのです。
カラーが安くても、
来店時に別の商品が売れる
カラー回数券の対象は、根元染めや特定のカラー施術だけに限定されている場合があります。そのため、回数券を使って来店しても、すべての施術が無料になるわけではありません。
髪の状態や希望に応じて、
・伸びた部分のカット
・毛先まで染めるフルカラー
・ハイライトやデザインカラー
・ダメージを抑えるトリートメント
・ヘッドスパ
・シャンプーやヘアケア商品の購入
などが追加されることがあります。
例えば、毎回は根元だけを染め、数回に一度は毛先まで色を整えるという提案もできます。
カラーだけの来店だったとしても、美容師が髪の状態を確認する機会が増えれば、
「毛先が傷んできたので、今日はトリートメントも行いましょう」
「そろそろ髪型も整えましょう」
と、必要なメニューを提案できます。
つまり、回数券によってカラー一回分の単価が下がっても、来店回数が増えることで、別の施術や商品の販売機会が増えます。
回数券は、それ自体で利益を最大化する商品ではなく、お客様に何度も来店してもらうための「入口商品」として機能しているのです。
先に代金を受け取ることで、
将来の売上を確保できる
通常の美容室では、お客様が来店し、施術を受けた後に料金を支払います。次回、本当に来店してくれるかどうかは分かりません。
しかし回数券の場合、複数回分の料金を最初に受け取ることができます。
店側にとっては、
・次回以降の売上の一部を先に確保できる
・今後の来店回数を予測しやすくなる
・予約枠やスタッフ配置の計画を立てやすくなる
・新規集客だけに頼らず、既存客からの売上を見込める
というメリットがあります。
また、お客様にとっても、今後のカラー費用をある程度固定できるため、支出の見通しを立てやすくなります。
ただし、有効期限、対象施術、予約条件、別途必要となる料金、払い戻しの可否などは店舗によって異なります。回数券を販売する際には、「何回使えば通常利用より得になるか」だけでなく、利用条件を事前に分かりやすく説明することが重要です。
他のお店でも使える
「定期的な悩みを回数券にする」設計
・靴修理店
革靴の磨きやかかとの点検を複数回利用できるメンテナンス券として販売する。定期的に靴を持ち込んでもらうことで、修理が必要な箇所を早期に発見し、靴底交換などの追加提案につなげる。
・ペットサロン
爪切り、耳掃除、足裏カットなど、定期的に必要になるケアを回数券にする。利用期限を設けることで来店間隔を整え、トリミングやシャンプーの追加利用につなげる。
・自動車整備店
洗車や簡易点検を複数回利用できるチケットとして販売する。定期的な来店機会を作り、タイヤ、オイル、ワイパーなどの交換時期を確認して必要な整備を提案する。
まとめ
美容室が、ヘアカラーを回数券で売るのは、一回当たりの料金を安くしてお客様を集めるためだけではありません。
・髪が伸びれば根元が気になるという、定期的に発生する悩みに複数回分の商品を組み合わせ
・代金を先に支払ってもらうことで、次回来店時の「またお金を払う」という心理的な障壁を下げ
・有効期限と利用回数により、「いつか行く」という先延ばしを防いで来店間隔を短くし
・未使用の施術を残すことで、ほかの美容室へ移らず、同じ店へ戻る理由を作り
・来店のたびに、カット、フルカラー、トリートメント、ヘアケア商品などを提案する機会を増やし
・複数回分の代金を先に受け取ることで、将来の売上と来店予定を見通しやすくする
という、一回の施術単価ではなく、一年間の来店回数と購入総額を増やすための販促の仕掛けなのです。
販促コンサルタント
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他の著書に、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』
『あらゆる販促を成功させる「A4」1枚アンケート実践バイブル』
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