世界1200都市を訪れ、1万冊超を読破した“現代の知の巨人”出口治明元APU学長。宮部みゆき氏などから絶賛されている出口氏の『哲学と宗教全史』をもとに、哲学と宗教の視点から探る「ニーチェの考え方」とは? ライターの照宮遼子氏がレポートする。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)
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同じ日々に戻るのが怖かった!
以前、海外での生活を終えて日本に戻るとき、大阪で暮らすか、東京に出るか迷った。
大阪には土地勘があり、友人もいる。生活を立て直すなら、そのほうが安心だった。
ただ、大阪に戻れば、また同じ日々が始まるような気もした。
一方、「人生で一度くらい、東京で暮らしてみたい」という思いもあった。
何かが変わる確信はなかったが、少し無理をしてでも、これまでとは違う場所に身を置いてみたかった。
そうして、上京した。
ニーチェが説いた「力への意志」とは?
人間は、ただ安心して暮らすだけで満たされる存在ではない。
そうした人間のあり方を考えたのが、『哲学と宗教全史』(出口治明著)で紹介されている、ドイツの哲学者フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ(1844~1900)である。
強くありたい、立派でありたい、そのように生きたいと目指すことです。
――『哲学と宗教全史』より
ここでいう「力」とは、誰かを支配する力ではない。
平凡な毎日の中にも眠っている、「こう生きたい」と目指す力だ。
人は、うまくいく保証はなくても、自分をもう少し高めたいと感じることがある。
何者かになりたいというほど大げさではなくても、「このままで終わりたくない」と思う瞬間がある。
ニーチェはその衝動を、人間の根本にあるものとして捉えた。
自分の可能性への見方が変わる!
今の時代は、失敗しないことや、無理をしないことが重視されやすい。
もちろん、それ自体は悪いことではない。
ただ、今の自分にできることだけを基準にすると、これからの可能性まで狭く見積もってしまうことがある。
変わりたいと思うことは、まだ試していない生き方に目を向けることでもある。
ニーチェの思想に触れると、その思いは、今の能力や環境だけで人生を決めないためのものとして見えてくる。





