世界1200都市を訪れ、1万冊超を読破した“現代の知の巨人”出口治明元APU学長。宮部みゆき氏などから絶賛されている出口氏の『哲学と宗教全史』をもとに、哲学と宗教の視点から探る「孟子が説いたリーダーの条件」とは? ライターの照宮遼子氏がレポートする。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)
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仕事ができる人が辞めていったとき
以前いた職場で、仕事ができる人が辞めていったことがある。
その人がいなくなって初めて、普段どれだけその人に頼っていたのかが見えてきた。
一方で、実際に仕事を回す人より、上司に取り入るのがうまい人のほうが評価される場面もある。
組織で働く以上、報告や説明がうまいことも必要だ。けれど、その空気感が強くなると、まじめに働くことへの気持ちが、少しずつ削られていく。
孟子が示唆する「人がついてこなくなる理由」
仕事を支えている人が報われない場所では、表面上は物事が回っているように見えても、不満は少しずつ積もっていく。
そうした状況を見ていると、『哲学と宗教全史』(出口治明著)で紹介される孟子(BC372~BC289)の易姓革命は、人がついてこなくなる理由を考えさせる。
ところがそれでも、暗愚な王は悪政を改めない。すると天は、民衆すなわち農民に命令して下剋上(農民反乱)を起こさせ、王を取り替える。
――『哲学と宗教全史』より
王であり続ける正しさは、血筋だけでは保てない。
民を苦しめる政治を続ければ、天命を失い、別の王へ交代することも正当化される。
孟子は、上に立つ者の資格を、地位ではなく、民の暮らしを守れているかに見ていた。
不満は、いつも大きな声になって表れるわけではない。苦しい状態が変わらなければ、人はそっとその場所から離れていく。立場や肩書きだけで、人の信頼をつなぎとめることはできないのだ。
「人の上に立つ」すべての人へ
人を動かす立場にいると、目立つ成果やわかりやすい報告に目が向きやすい。
けれど、職場が問題なく回っているように見えても、どこかで無理をしている人がいることもある。
そうした声に気づかないままでいると、あとになって思わぬ綻びが出てくる。
本書は、古代から現代までの思想を一つひとつ読み解きながら、人と組織のあり方を考えさせてくれる。人の上に立つとき、何を見失ってはいけないのか、深く考えさせられた。





