世界1200都市を訪れ、1万冊超を読破した“現代の知の巨人”出口治明元APU学長。宮部みゆき氏などから絶賛されている出口氏の『哲学と宗教全史』をもとに、哲学と宗教の視点から探る「カントの見方・考え方」とは? ライターの照宮遼子氏がレポートする。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)

【哲学と宗教】ある日突然、欠点が長所に!? カントが教えるモノの見方が変わる1つの習慣Photo: Adobe Stock

仕事が続かないのは「欠点」?

 昔から、一つの仕事がなかなか長く続かなかった。
 会社を辞めては別の仕事に移り、気づけば何度も転職を繰り返していた。
 親の世代では、一つの会社に長く勤めることが当たり前。そんな姿を見て育った私は、仕事が続かない自分を「飽きっぽくて根気がない」と思っていた。

 ところが今は、フリーランスとして、ライターをはじめ複数の仕事をしている。
 一つの仕事だけを続けてはいないが、むしろいろいろな仕事ができる今の働き方は、自分に合っていると思っている。

自分の見方は、本当に正しいのか?

 私たちは、同じものを見ていても、人によって感じ方や考え方は異なる。
 人間がどのようにものごとを認識しているのかについて考えたのが、『哲学と宗教全史』(出口治明著)で紹介されている、ドイツの哲学者イマヌエル・カント(1724~1804)である。

人は自分の感性と悟性で構成される認識の枠によって、対象を見ているにすぎない。
(中略)
人はそのもの自体を見ているのではなく、認識の枠が把えた現象を見ているのである。
――『哲学と宗教全史』より

 カントは、私たちが見ているものは、物事そのものではなく、自分の認識によって形づくられた現れだと考えた。

 この「認識の枠」は、目の前の物事だけでなく、自分自身を判断するときにも働く。
 そこには、これまでの経験や価値観が影響していることもある。

「自分の欠点」への見方が変わる!

 私たちは、自分についても「私はこういう人間だ」と決めつけることがある。
 だが、その評価が正しいとは限らない。
 たとえば、慎重な性格を「決断が遅い」と見ることもできれば、「よく考えて行動する」と見ることもできる。同じ性質でも、置かれた環境によって意味は変わる。

 カントの思想に触れると、自分や誰かを一つの評価だけで判断する前に、別の見方はないかと考えたくなる。
 これまで欠点だと思っていたものにも、まだ自分が気づいていない別の姿があるのかもしれない。