ホンダと日産のロゴマーク2029年を目標にホンダと日産が共同開発したソフトウェアを両社の次世代SDVに搭載することが報じられた Photo:JIJI

昨年経営統合が破談になった日産とホンダが、次世代車の頭脳となるソフトウェア共同開発に向けて手を結びます。しかし、先行するテスラやBYDとの差はあまりに歴然。「このままでは絶対に勝てない」とほぼ断言できる絶望的な現在地と、日本の自動車産業が生き残るための“2つの道”を徹底解説します。(百年コンサルティングチーフエコノミスト 鈴木貴博

日産とホンダの連合が復活
次世代SDVの高すぎる壁

 昨年、経営統合が破談になった日産とホンダが手を結びます。2029年度以降、両社の次世代SDVに搭載する目標で、次世代車の頭脳となるソフトウェアを共同開発するのです。

 自動車業界ではテスラとBYDが先行する形で車のSDV車化が進行しています。SDVとはSoftware Defined Vehicleの略で、直訳すると「ソフトウェアで定義された車」、意訳すればスマホのようにソフトをダウンロードすることで性能が上がる車です。

 日本車メーカーだけでなく欧州車、米国車含め既存の大手自動車会社は総じてこのSDV化に苦戦しています。トヨタは次世代OSのAreneを昨年12月に発売したRAV4に搭載し、2026年発売予定の次世代車に順次展開します。

 このこと自体は素晴らしい前進ですが、2017年にテスラがモデル3で先行し始めたのと比較すればキャッチアップに8年の時間を費やしています。そして日産とホンダはこれに今から対抗する形なのです。果たして日産ホンダ連合に勝ち筋はあるのでしょうか?3つの観点から未来を予測してみたいと思います。

【視点1】
要求レベルの違い

 SDV車がなぜ難しいのか?その最大の理由はSDV車に要求されるソフトウェアのレベルが従来車とは異なるからです。

 従来車は完成車メーカーが中心となって多数の一次サプライヤーが参加し、数万点の部品をすり合わせながら開発します。部品ごとの分業としてエンジンは完成車メーカーが、ブレーキはブレーキメーカー、足回りはタイヤやサスペンション、配線はワイヤーハーネスメーカーなどそれぞれの専門の部品メーカーがノウハウを持ち寄って開発します。

 それで開発過程の後半ではさまざまな運転シーンで車が最適な性能を発揮できるように細部を調整します。それぞれの機能ごとに独立したECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)とソフトウェアが作られ、それで調整が完了したら以後、ソフトウェアは基本思想としてはアップデートしません。完成車はスタンドアローンが前提の商品となるのです。

 ところがSDV車は思想として「一度完成させて終わりではなくなる」のが前提です。ADAS(先進運転システム)の性能が上がれば、それをダウンロードした車の性能が上がることが期待される車です。

 そしてスマホやパソコンとの最大の違いが、ダウンロードしたソフトに不具合があってはいけないのです。「ソフトウェア更新されたら高速道路でのブレーキ制御がおかしくなった」などという問題は起きてはいけませんし、「不具合は次のアップグレードで」などといったスマホのようなアジャイルの開発思想では安全確保ができません。

 ですから、開発思想としてはアップルやグーグルのようなIT企業の開発速度を前提にしながら、ボーイングやエアバス級の航空機レベルの安全性を担保できなければいけません。通常のIT開発よりも難易度が高いのです。