高市政権の経済ブレーンであり日本屈指のエコノミストとして知られる会田卓司氏と、会田氏をサポートするストラテジストの松本賢氏の共著『何が日本経済を壊したのか 「失われた30年」の謎を解く18の経済講義』が刊行された。長年にわたって積極財政への転換を主張してきた評論家・中野剛志氏は、本書をどう読んだか――。書評をご寄稿いただいた。
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これ以上わかりやすく「経済の本質」を説明するのは困難
本書は、日本経済を題材にとった経済政策についての入門書である。
著者は、クレディ・アグリコル証券のエコノミストである会田卓司氏と松本賢氏である。特に会田卓司氏は、高市政権の日本成長戦略会議のメンバーであり、マスメディアやネットメディアにおいても活発に言論活動を行なっている論客でもある。
本書は、先生から生徒への講義という親しみやすい形式によって、専門的な知識がなくとも理解できるように書かれている。おそらく、経済の本質について、これ以上に分かりやすく説明することは難しいであろう。
しかし、分かりやすい入門書だからと言って侮ってはならない。
本書は、日本経済を成長軌道に乗せるための有力な政策ツールの一つである。そして、本書の読者一人一人が、日本経済を動かす政策担当者になるのである。
それは、どういう意味か。
会田氏は、「はじめに」で、本書執筆の意図について、次のように述べている。
同じく松本氏も、「あとがき」でこう書いている。
国が豊かになるか、国民が幸せに暮らせるかは、ひとえに、国の経済政策が正しく行なわれるかにかかっている。政治家や政策当局者の責任は極めて重い。
しかし、当然のことであるが、我が国は民主国家であり、国家主権は国民にある。したがって、経済政策の決定権は、究極的には、我々国民自身にある。
これは、リップサービスではない。
政治家や政策当局者は、どんなに正しい経済政策であっても、国民の支持を得られなければ、それを遂行することはできない。逆に言えば、時の政権が経済政策に失敗して国民を不幸にしたとしても、その責任は、そんな政策を支持した国民自身にあるのだ。
だから、経済成長を実現するために最も重要な「政策」とは、経済についての正しい認識を広く国民が共有することなのである。
日本経済は“初歩的な誤解”や“無知”に基づいて運営されてきた
もっとも、経済を理解するには、高度な専門知識が必要になるという印象があろう。
経済学者たちは、数式が散りばめられた密教的な論文ばかり書いているし、マスメディアに登場するアナリストも、専門用語を駆使して小難しい解説をしている。経済の専門家でもない多くの国民が、そのような高度な知識を共有できるのか、訝しく思われるかもしれない。
ところが、本書に書かれていることに何も難しいところはない。
ただし、その内容は、世間で信じられている経済や財政の常識を覆すようなものであるため、初めは、抵抗感を覚えるかもしれないというだけだ。
虚心坦懐に読んでみれば、拍子抜けするほど、当たり前のことが書いてあるだけだと分かるであろう。
本書の読者は、次に、こう思われるかもしれない。「こんな誰でも分かるようなことを、専門家の経済学者や政策当局者が理解していないなんてことがあるのだろうか」と。
それが、あるのである。
会田氏は、こう書いている。
まさに、その通り。
日本経済が数多の初歩的な誤解や無知に基づいて運営されてきたことは、「失われた30年」が証明しているのだ。
お金は銀行の融資によって生まれ、銀行への返済によって消える
その初歩的な誤解の一つが、本書の「第8講義」で解説されている。それは、「信用創造」、すなわち「お金がどのように生まれるか」についてである。
「信用創造」とは、簡単に言えば、銀行が融資を行うことでお金を生み出すことである。
銀行は、誰かから預かったお金を元手に融資を行っていると信じられている。しかし、それこそが、初歩的な誤解なのである。



