日本の近代産業を築いた渋沢栄一は、まだ十分な資金基盤を持たない時期、ある豪商から4000両もの大金を借りました。ところが、そのお金をすぐには使わず、あえて手元に置いていたといいます。なぜそんなことをしたのでしょうか。そこには、商機が訪れた瞬間にすぐ動けるよう「動ける状態」を先につくっておく、渋沢ならではの仕事の考え方がありました。本稿では、書籍『ビジネスメイキング――売上と信頼が積み上がる「仕組みのつくり方」』の一部を抜粋し、「借りる」ことの本当の意味を紹介します。
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近代の実業家の話を見ていきます。日本の近代産業をつくった人物として知られる渋沢栄一です。この事例のポイントは資金を借りたことではなく、必要なときにすぐ動ける状態を、あらかじめ確保していたことにあります。
渋沢の仕事の本質は、何かを持っていたことではありません。足りないものがある中で、どうすれば仕事が動き出す状態を先につくれるか、そこにありました。その視点で見ると、本章で言っている借りることの本質を、彼の行動はよく表しています。
新しい事業に関わりながらも、まだ十分な資金基盤を持たない時期のことです。彼はあるとき、当時の有力な豪商から四千両という大金を借ります。当時の四千両は、個人が簡単に動かせる規模ではありません。しかし、重要なのは、その金を借りたことではありません。すぐ使わずに、あえて手元に置き続けたことです。
それはなぜか。いつでも動ける状態を確保するためです。商機は、準備が整ったときに都合よく現れるとは限りません。突然現れます。その瞬間に動けるかどうかが、仕事の行方を分けます。渋沢は、その「動ける状態」を先に借りていたのです。
ここで借りているのは、金そのものではありません。必要なときに使える状態であり、機会が訪れた瞬間に動ける余地です。つまり、借りるとは所有することではなく、成立条件を先に確保することでもあるのです。
この視点に立つと、ビジネスの見え方は大きく変わります。重要なのは、いま持っているかどうかだけでなく、必要なときに動ける状態を設計できるかどうかです。仕事のスピードを左右するのは、資金の多寡ではなく、必要な瞬間に動ける条件を持っているかどうかなのです。







