
休みよりも仕事を優先する“オン至上主義”や、「人に迷惑をかけてはいけない」と自分を犠牲にすることによって、いつも疲れているビジネスパーソンは多い。しかし、「そんなやり方では限界が来るのではないか」と「攻めの休養」を提案するのは、日本リカバリー協会代表理事を務める片野秀樹氏。例えば、仕事帰りの時間の過ごし方を少し変えるだけでも、心身のパワーを回復できる可能性が高いという。(取材・文/フリーライター 柳本 操、ダイヤモンド・ライフ編集部)
仕事以外の時間は何もしない
趣味も控えて体力温存に徹する
「1日が終わったらぐったりです。退社後はすぐに家に帰ってとにかく何もせず、できるだけ早く寝るようにしています」
社員30人ほどのベンチャー企業でコンサルタントとして働くDさん(44歳)。5年前に現在の会社に転職してからは、慣れない業務も新たに担うことが多く、休み返上で働いている。週末も持ち帰り仕事のほか、自己研鑽のために勉強会やセミナーに参加することが多く、まともに「休んだ」と言える日は数えるほどだ。
「仕事が好きなので、この生活がつらいと思うことはほとんどありません。でも体力的には少々キツくなっているかも。だからできるだけ、仕事以外の時間には体を休めなければと思って。登山やキャンプ、釣りなどアウトドアが趣味でひととおり道具を揃えていますが、今はあえてやらないようにしています」
仕事でベストを尽くせるように、仕事以外の時間は何もしない。これがDさんのポリシー。たまに仕事帰りに友人と飲みに行ったり、映画を観たりして気分転換しようかなと思うときもあるが、その時間が「もったいない」と感じてしまうのだ。
ただ最近、それでも「疲れが取れていないな」と思う朝が増えてきた。仕事量はそんなに変わっていないはずだが、なぜだろうと頭をひねっている。
このように、ひたすら休んでも疲れが取れないDさんのような“休み下手”な人に対して、「単に寝る、休息するといった守りの休養から攻めの休養にシフトしよう。これまでと同じ休み方では疲労を取ることはできない」と、休み方の変容を説くのが『あなたを疲れから救う休養学』(東洋経済新報社)。2024年に発売されて以来、16万部近くのベストセラーとなっている。
著者で日本リカバリー協会代表理事を務める片野秀樹氏は「この本が世の中で注目されているということは『疲れ切っているのに休み方がわからない』という状態の人が多いという現実を示しているのではないでしょうか」と言う。