重要な仕事を先延ばしにし、目先の誘惑に負けては「意志が弱い」と自分を責めていないだろうか。実は、気合や根性で本能に勝とうとすること自体が間違いなのだ。目標を達成できる人が実践しているのは、意志の力ではない。人生の主導権を取り戻す最強の習慣を『すべて本能のせい』から紐解く。(ダイヤモンド社書籍編集局・菱沼美咲)

髪を耳にかける女性Photo: Adobe Stock

なぜ「やらなければいけないこと」ができないのか

特別なトラブルに巻き込まれているわけではない。
毎日真面目に仕事をし、普通に生活を送っている。
それなのに、ふとした瞬間に「やりたかったはずの重要なことに手がつけられていない」「目先の誘惑に流されて一日が終わっていく」とモヤモヤした感覚を抱えている人がいる。
あなたの周りにも思い当たる人はいないだろうか?

「意志の力」で誘惑に勝とうとする空回り

私自身、以前は何かを始めようとするたびに「今日こそは絶対に集中するぞ」と自分の意志の強さに頼ろうとしていた。
休日には「将来のために資格の勉強をしよう」「ずっとやりたかった企画案をまとめよう」と意気込むのだが、いざ机に向かうと「その前に少しだけ」とスマホを開いてしまう。
通知を一つ確認しただけのつもりが、気づけば関連するSNSや動画を次々と追いかけ、あっという間に数時間が溶けていく。
そして作業が進まないまま夕方を迎え、「また誘惑に負けてしまった」「自分はなんて意志が弱いんだろう」と強い自己嫌悪に襲われていたのだ。

確かに、ひとつひとつの誘惑に負ける時間はわずかなものだ。
しかし、その何気ない妥協の積み重ねによって、「本当にやるべきこと」や「将来のための重要な時間」は確実に削り取られていく。

「気合」ではなく「仕組み」で先回りする

なぜ私たちは、これほど簡単に目先の楽しさに流され、重要な課題を先延ばしにしてしまうのだろうか。その解決策について、『すべて本能のせい』ではこう語られている。

目先の誘惑に振り回されてしまう脳の癖をコントロールするには、感情に頼るのではなく、仕組みをつくって先回りすることが現実的です。
だからこそ私は意識的に、「緊急ではないが重要なことに取り組む時間」をあらかじめカレンダーにスケジュールとして確保するようにしています。
一人ひとりの個人レベルでできる工夫としては、まず長期的な目標を、「小さなステップ」に分解してみることも有効です。
すると、日々の生活の中にこまめな達成感が組み込まれ、脳がやる気を出すようになっていきます。
また、あらかじめ行動を決めておくことや、誘惑を物理的に遠ざける環境づくりも重要です。
たとえば、寝る前にスマホを別の部屋に置いてしまう、作業中は通知を切ってしまうなどはいかがでしょうか。
他にも、将来の自分の生活や健康、仕事で目標を達成した姿などを具体的に思い描くことで、時間的に遠い報酬との心理的距離を縮めることができます。

自分の意志が弱いから誘惑に負けるのではない。
脳は構造上、どうしても「遠い未来の大きな報酬」よりも「目の前にある小さな快楽」を優先してしまう癖を持っているのだ。
だからこそ、気合や根性といった感情に頼って戦おうとすること自体が、すでに間違っていたのである。

自分を責めるのをやめ、環境を整える

「意志の強さ」で誘惑に勝とうとしている限り、私たちは巧妙に設計されたデジタル環境や本能の罠に敗北し続けてしまう。

目標を達成できる人とそうでない人の違いは、意志の強い・弱いではない。
自分の脳の弱さをあらかじめ認め、先回りして「逃げ道」を塞ぐ仕組みを作れているかどうかだ。

作業中にスマホを別室に置く。
目標を今日できる極小のステップに切り分ける。
あらかじめ予定をカレンダーにブロックしておく。
「環境の調整」こそが、自分の人生の主導権を自分の手に取り戻すための第一歩になるのだ。