どうすればお金をかけずに、売上や利益をもっと増やせるのか? この切実なお悩みに答えるのが、人気の販促コンサルタント・岡本達彦氏の最新刊『客単価アップ大事典 「つい買ってしまう」販促の仕掛け75』(ダイヤモンド社刊)です。同書は、「行動経済学×現場目線」で「つい買いたくなる」販促の仕掛けとは何かを言語化した初の書。本書が提示するのは、「お客様の購買行動そのものを変える設計とは?」です。どうすれば、「利益が残る経営」へと変われるのか? 本連載では、『客単価アップ大事典』に収録しきれなかった事例の中から、現場ですぐに導入でき、成果につながりやすい客単価アップの仕掛けを厳選してご紹介していきます。
Photo: Adobe Stock
買ってもいないのに、
なぜプレゼントを渡すのか?
化粧品店では、「誕生月にプレゼント」という特典を用意していることがあります。普通なら、「商品を買ってくれた人にプレゼント」としたほうが、売上に直接つながりそうです。
それなのに、なぜ化粧品店では、何も買わなくてもプレゼントを渡すのでしょうか?
実はこれ、プレゼントそのもので儲けるためではなく、「特に買う物がない人」にも、年に一度お店へ来てもらう理由を作る仕掛けと考えることができます。
最大の問題は、「嫌われること」ではなく
「来る理由がなくなること」
化粧品は、一度買えば毎月必ず同じ店へ行く商品とは限りません。まだ化粧水が残っている。ファンデーションも足りている。特に欲しい新商品もない。
そんな状態なら、「今月はお店へ行かなくていいか」となります。
これが何カ月も続けば、別のブランドを使い始めたり、ネット通販で買ったり、他店へ移ったりする可能性があります。
つまりお店にとって怖いのは、「嫌いになった」だけではありません。お客様の生活の中から、お店へ行く理由そのものが消えることです。
そこで、「誕生日プレゼントがあります」という理由を作ります。
すると買いたい商品がなくても、「せっかくだから、もらいに行こう」となれば、お客様をもう一度店内へ戻すことができます。
プレゼントを取りに来た瞬間、
新しい買い物が始まる
誕生日プレゼントだけを受け取りに来たとしても、お客様は店の中に入ります。
すると、新しい口紅が発売されている。季節限定の商品が並んでいる。以前使っていた美容液が目に入る。店員から新商品を紹介される、といった接点が生まれます。
例えば、「プレゼントだけもらって帰るつもりだったけれど、この新色も気になる」「そういえば化粧水もそろそろなくなる」となる可能性があります。
つまり誕生日ギフトは、商品の代わりに渡している無料サービスではありません。商品を見る予定がなかった人を、商品を見る場所へもう一度連れてくる入口になっているのです。
「自分のために用意された」が特別感を作る
誕生日特典には、普通のクーポンとは違うところがあります。例えば、「今月500円引き」なら、企業側の都合で配られた販促物に見えます。
しかし、「お誕生日おめでとうございます。プレゼントがあります」と言われると、受け取る側は、「自分のために用意してくれた」と感じやすくなります。
しかも誕生日は、一人ひとり違います。そのため、一斉配信のセールよりも、個人的なメッセージとして受け取りやすいのです。
つまり、誕生日という「お客様自身のイベント」にブランドが参加することで、単なる購入先から、自分を祝ってくれるブランドへ関係を変えているのです。
毎年1回、接点を作るきっかけになる
誕生日には、もう一つ大きな特徴があります。毎年訪れることです。商品の買い替え時期は人によって違います。来店頻度も分かりません。
しかし誕生日なら、毎年同じタイミングで来ます。そのため企業側は、「この人にいつ接触すればよいか分からない」ではなく、「毎年同じ時期にアプローチできる」という状態を作れます。
誕生日ギフトをきっかけに、メールを送る。アプリで知らせる。店舗へ来てもらう。新商品を見てもらう。という接点を、毎年繰り返すことができます。
つまり誕生日という個人情報を、単に管理しているのではありません。年1回、再来店を促すタイミングに変えているのです。
「買わなくてもいい」からこそ行きやすい
もし、「5,000円以上買ったら誕生日プレゼント」だったらどうでしょうか。お客様は、「特に欲しいものはないから、今年はいいか」となるかもしれません。
しかし、「何も買わなくても受け取れます」なら、来店のハードルは大きく下がります。
重要なのは、最初から買わせることではありません。まず、店に来てもらうことです。来てもらえれば、その後に買い物が生まれる可能性があります。
逆に来てもらえなければ、その来店をきっかけとした売上は生まれません。だからこそ、あえて購入条件を付けず、「プレゼントだけでもどうぞ」と入口を広くしていると考えられるのです。
他のお店でも使える
「記念日を来店理由にする」設計
この考え方は、化粧品店だけではありません。
・飲食店
誕生月に、「デザート無料」「バースデードリンクプレゼント」を用意する。割引をするのではなく、誕生日を理由に来店してもらい、一緒に来た家族や友人の注文まで含めて売上につなげる。
・美容室
誕生月に、「ヘッドスパ10分無料」などのプレゼントを用意する。髪を切る予定がなかった人にも来店理由を作り、カラーやトリートメントなどの相談につなげる。
・小売店
会員の誕生月に、購入条件なしの小さなプレゼントを店頭で渡す。受け取りに来たついでに、新商品や季節商品を見てもらう。
まとめ
この仕組みを販促の観点から整理すると、
・特に欲しい商品がない人にも、年1回の来店理由を作る
・プレゼントを受け取りに来た人へ、新商品や買い替え商品を見てもらう接点を作る
・普通の割引ではなく、「自分のためのプレゼント」という特別感を生む
・毎年訪れる誕生日を、定期的な顧客接点として利用する
・購入条件を付けず来店のハードルを下げ、まず店へ戻ってきてもらう
という、「プレゼントをあげて売る」のではなく、「何も買う予定がない人にも店へ来る理由をあげる」ことで、次の買い物の入口を作る販促の仕掛けなのです。
販促コンサルタント
現場目線ですぐ使えるマーケティングを伝える第一人者。
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見て培った成功体験をベースに、むずかしいマーケティングや心理学を使わず、
アンケートやマンダラ等を活用して、誰でも売れる広告を作れる手法を体系化する。
業界を問わず即効性が高く、お金をかけずに売上を上げられることから、全国の商工会議所・経済団体などからセミナー依頼が殺到する。
初の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』(ダイヤモンド社)は、Amazon上陸15年、「売れたビジネス書」50冊にランクインする。
他の著書に、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』
『あらゆる販促を成功させる「A4」1枚アンケート実践バイブル』
『「A4」1枚チラシで今すぐ売上をあげるすごい方法』『「マンダラ広告作成法」で売れるコピー・広告が1時間でつくれる!』(以上、ダイヤモンド社)等がある。




