多くの患者さんは、初めてがんと診断されて治療した期間よりも、治療が一段落して経過観察になった期間のほうが「不安がある」と言います。

 家族や周囲の人たちは、治療が終わったらひと安心と思うかもしれませんが、再発・転移を恐れる患者さんの不安定な気持ちを、できるだけ理解してあげましょう。

再発したがんは
完治を目指せるのか?

 がんが再発しても、がんを取り除き、完治を目指す治療を行うことがあります。しかしたいていの場合は、「がんの進行を抑える」「がんによる症状を和らげる」ことを目標に、できるだけ良好な状態を長く続けることを目指す治療に移ります。

 再発すると、見つかった再発病変だけでなく、画像診断で見つけられない病変も含めて、がんが全身に広がっていると考えられるからです。治療にあたっては、全身に作用する抗がん薬、分子標的薬、免疫治療薬、抗ホルモン薬などによる薬物療法が軸になります。がんの増大を防ぎ、できるかぎり元気に暮らす時間を長くすることを目指すのです。

 がん転移には、元のがんに効く薬剤を使います。大腸がんが肝臓に転移した例で説明すると、肝臓への転移は、もともとあった大腸がんが転移したものであり、大腸がんの性質をもっています。そのため薬物療法では、肝臓がんではなく、大腸がんに効果のある薬剤が用いられるのです。

骨転移・脳転移は
どのがんで起こりやすい?

 骨転移は、がん細胞が血液やリンパの流れに乗り、骨で増殖することで起こります。強い痛みや骨折、下半身麻痺などを引き起こし、生活の質(QOL)を著しく低下させます。

 骨転移は、がんの種類を問わず発生します。とりわけ、肺がん、乳がん、胃がん、前立腺がんなどで起こりやすく、特に脊椎や上肢、下肢、骨盤といった部位は重篤な症状につながる傾向があります。そのため、早期から適切な治療を行い、骨の強度と身体機能を維持することが大切です。骨への転移では、痛みを緩和し骨折を予防するために、放射線療法や薬物療法、手術を行うこともあります。

図表:転移部位と主な症状
同書より転載 拡大画像表示

 脳以外の場所で発生したがん細胞が、血液やリンパの流れに乗って脳にたどり着き、増殖するのが「脳転移」です。脳転移で発生したがんを、「転移性脳腫瘍」と呼びます。転移性脳腫瘍は、がん治療の進歩により生存期間が延びたことで、全がん患者の10~20%に生じるといわれています。

 脳転移は、脳のどこにでも生じます。なかでも起こしやすいのは、肺がん、乳がん、大腸がん(結腸・直腸がん)、胃がん、食道がん、腎がんなどです。転移は1カ所だけでなく、多発することも珍しくありません。

 脳転移はステージ4の進行がんと診断されるため、患者さんや家族は「末期なのでは」と強い不安や絶望を抱きがちです。また、脳は生命維持や運動、知的能力を司る重要な臓器であり、転移が生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼします。

 大切なのは、早期発見と早期治療です。定期的な受診はもちろん、頭痛や嘔吐といった異変を感じた際は、「しかたない」とがまんせず、早めに医師に相談しましょう。