書類を見ながら頭を抱える男性写真はイメージです Photo:PIXTA

がんと診断されたら、仕事は続けられない。そんなイメージは、いまや必ずしも現実に合わない。胃がんと診断された61歳男性の経験を入り口に、がんと仕事をめぐる現在の選択肢を見ていく。※本稿は、静岡県立静岡がんセンター名誉総長の山口 建監修『がんになったとき知りたいことが全部のってる本』(主婦の友社)の一部を抜粋・編集したものです。

がん告知を受けた61歳男性は
勤務先に休職願いを出した

《2021年、コロナ禍でリモート勤務が中心になったころ、隆一さん(仮名・61歳)は、なんとなく胃の調子が悪く、痛みを感じる日が続いた。一度、どす黒い便が出たので、「これはいかんな」と思い、近隣の病院で検査を受けたところ、胃がんと診断された。

 突然のがんの診断に隆一さんは、「事実としてはわかるけれど、心情的には、本当かな、どこかで覆るんじゃないかと、気持ちがついていかなかった」と振り返る。

 紹介状を持って訪れた大学病院で診察にあたった医師は、短い事務的な説明の後で、「手術は開腹にしますか?腹腔鏡にしますか?」と、選択を迫った。ただでさえ気持ちの整理がつかず、この病院でこのまま手術を受けてもよいのかと疑問を感じた隆一さんは、セカンドオピニオンを聞くことに決めた。

 セカンドオピニオンでは、「診断は変わらず、提示された選択肢も同じでしたが、担当した医師の説明は、安心感があって、説明も明快、気持ちに寄り添ってくれると感じられるものでした」。

 考えた末、セカンドオピニオンを受けた病院に転院、腹腔鏡手術を受けることにした。手術日が決まったのと同時に、勤務先の人事担当者に病気のことを伝え、休職願いを出した。10日間の入院と休養を含め、3週間の休みを取ることになった。》