がん保険は本当に不要なのか?がんゲノム医療など治療の進化に応じた商品にも注目

「がん保険不要論」がSNSなどを中心に広がっているが、本当にそうなのだろうか。実は、がん治療が進化していく中で、通院が長期化したり、高額な費用がかかったりする治療も増えている。中には、がん治療に有効とされながらも自由診療となってしまうものもあり、がん保険が役立つ場面も少なくない。現在のがん治療に適したがん保険の選び方を見ていこう。(保険ジャーナリスト 森田直子)

がん治療が大きく進化し高額化も
がん保険は対応できるのか?

 一昔前は、がん保険といえば「診断一時金+入院給付金+手術給付金」を中心とする形式が一般的だった。そんな昔のがん保険を「保険料が安いから」と、そのまま支払い続けている人も少なくないのではないだろうか。

 しかし近年、がん治療方法が大きく進化し、変化している。何がそんなに変わったのか?

 一番大きく変わったのは、入院期間の短期化だ。下図の通り、がん全体の平均入院日数の推移を見ると、2002年に35.7日だったものが、20年には19.6日となり、約4.5割減少している。またがんに罹患(りかん)した部位や進行度合いによっては、日帰り手術のみで入院はなしになるなど、がん治療の入院日数はますます減少傾向にある。

 そのため、旧来型のがん保険の「入院給付金」には意味がない側面もあり、「がん保険が不要ではないか」との意見にもうなずけるものがある。

 しかし一方で、入院は短期化しても通院治療の方は長期化している。薬物療法やホルモン治療などを長期間の通院で行うのが、現代のがん治療の特徴だ。

 そのための治療費や交通費の負担などが増大しているほか、長期にわたる治療により仕事に影響が出ることで、収入減のリスクもある。サラリーパーソンや公務員には傷病手当金があるが、自営業者にとっては負担増が重くのしかかる。

 さらにもう一つ大きく変わったのが「がんゲノム医療」の発展である。実は、がんの治療費が今まで以上に高額化する可能性が出てきたのだ。それはどういうことなのか。また、そうしたがん治療の進化に、がん保険は対応できているのだろうか。次ページで詳しく見ていこう。