「十分な貯金ができたら、本当にやりたいことに挑戦しよう」「定年退職してお金の不安がなくなったら、人生を楽しもう」。一見すると非常に堅実で賢明に見えるこの計画だが、実は「一生やりたいことに着手できない人」が陥る典型的な不毛のパターンだ。書籍『やりたいことが見つかる 世界の果てのカフェ』をもとに、「お金の準備」を口実に行動を先延ばしにし、目的と手段を逆転させてしまう愚かさを暴く。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「お金が貯まったらやりたいことをやる」と言う人が、一生やりたいことをできない理由・ワースト1Photo: Adobe Stock

「お金の準備」という言い訳

「お金さえあれば自由になれる」
「資金が貯まったら夢を追う」

 という思考は、一見、理論的だが、人生の目的と手段を完全に履き違えている。

 お金は何かを実現するための道具に過ぎず、目的そのものではない。

 お金の準備を理由に情熱を先延ばしにしているうちに、体力も若さも失われ、肝心の「今この瞬間」という資産をドブに捨てることになるのだ。

 日常を離れて休暇に来た実業家が、毎日釣りをし、家族と過ごし、夕日を楽しんでいる幸せな漁師に対し、「もっと働いて規模を拡大し、大金を稼いで引退すればいい」とアドバイスする有名な対話は、この矛盾を鮮やかに突いている。

今すでにやっている男

 実業家と漁師の会話は、目的と手段の逆転を見事に浮き彫りにする。

「なぜ私がそんなことをするんだ?」
「お金のためですよ。そうしたら大金を稼いで引退できますよ」
「引退したら、何をするんだ?」
「それは……何でも好きなことをすればいいですよ」
「たとえば、家族と一緒に朝食をとるとか?」
「まあそうですね」
「それから、好きなことといえば、釣りが大好きなので、毎日少しだけ魚を釣ってもいいかな?」
「いいんじゃないですか」
「それから、夕方は妻と浜辺を散歩して夕日を眺め、子どもたちを海で泳がせながらすごせるかな?」
「もちろん、お好きなように」
――『世界の果てのカフェ』より

 実業家が提示した「大金を稼いだ引退後にやる理想の生活」を、漁師は今この瞬間にすでに実現していたのだ。

 私たちが本当に望んでいる心豊かな生き方の多くは、大金をかけなくても、今日からすぐに始められることばかりである。

「お金が貯まったら」は、挑戦の恐怖から逃げるための言い訳に過ぎない。

「手段の目的化」をやめよう

「お金が貯まったらやりたいことをやる」と言う人が一生やりたいことをできない理由・ワースト1。

 それは、お金という「手段」を口実にして、大切な人生の「目的(やりたいこと)」を先延ばしにし続けることです。

「お金が貯まったら」という言い訳を今すぐ捨てましょう。

 大金をかけずとも、今日からできる最小の形で自分のやりたいことをスタートさせることこそが、後悔のない豊かな人生を作るのです。