「寝ても休んでも疲れが取れない」「なんだかしんどい」「なかなか寝つけない」……。最近、メンタルの不調を訴える人が増えています。ADHD(注意欠如・多動症)で、うつサバイバーのバク@精神科医さんの最新刊『その考え、捨てちゃえば あなたの「思考のくせ」を変える40のヒント』(ダイヤモンド社)は、そうしたメンタル不調から抜け出すための「苦手な人との距離の取り方」や「気持ちをリセットするための方法」などを紹介する一冊。本連載では同書から抜粋・編集して、もっと楽に生きられるようになるためのヒント&解決策をお届けします。
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毒親が吐く定番フレーズ
今回から3回に分けて、親と家族の話に入ります。
先に言っておきますが、この連載の中で、おそらく一番読むのがしんどいテーマかもしれません。
でも、ここが解決しないと他の全ての人間関係の悩みが根本解決しない、という人も多いので、しっかりと書きます。
世の中には厄介なことに、「身に覚えのない高額利用料」を請求してくる悪質なアプリがあります。それが俗に言う毒親です。
彼らが定期的にポップアップ表示させてくる、おなじみのフレーズがあります。
「誰のおかげで大きくなれたと思ってるんだ」
「あんなに金も手間もかけて育ててやったのに」
「あなたのために、私は自分の人生を犠牲にしたんだ」
これをスマホで例えると、頼んでもいないのに勝手にインストールされ、高額な月額料金(感謝・従順さ・罪悪感)を死ぬまで請求してくるサブスクリプションです。
しかも現実のサブスクなら、契約時に自分で選んで、不要なオプションは外せて、いつでも解約できます。
ところが、これは生まれた瞬間に強制課金されていて、解約画面がどこにも見当たらないという、とんでもないサービス設計です。
ここで冷静に考えてみましょう。
親はあなたに頼まれて、あなたをこの世に産んだのでしょうか?
違いますよね(子どもを育てる義務は、民法で親側に定められています)。子ども側が「契約して頼んだこと」ではありません。
そもそも、その親自身だって親に育てられているはずです。あなたの親は、あなたの祖父母に対して「あんなに育ててもらったんだから、一生感謝と従順を捧げます」とやっていたのでしょうか?
私の臨床経験上、そういう要求を自分の親からされて、ちゃんと実行している子(毒親)は、ほとんど見たことがありません。
つまり構造としては、「自分は親から育ててもらって当然、でも自分の子ども(あなた)には育てた恩を一生請求する」。
このダブルスタンダードが、毒親の根本です。
「あなたがいたから離婚できなかった」は、
呪いの言葉
もう一つ、よく聞く呪いの言葉があります。
「あなたがいたから離婚できなかったのよ」
これはつまり、
「このアプリの開発に苦労したから、お前は一生バグだらけのまま使い続けろ」と言われているのと同じです。親の人生の苦労は、親自身のシステムの問題です。子どもが背負う理由は一切ありません。
私も過去に、親から似たようなことを言われました。
「ひとり親にしたらあなたが可哀想だったから我慢した」
「私一人なら離婚できたのに」と。
でも、毎晩怒鳴り合う喧嘩を聞かされるほうが、よほどしんどかったです。
それに「両親が揃っていないと世間体的に可哀想」という論理は、裏返すと「事故死や病死でひとり親になった子を差別する」と宣言しているのと同じです。
私は、その時点で論理の矛盾を感じていました。
経済的な理由で離婚を選ばない、というのはまだ筋が通ります。しかし、大学の学費問題などは「どうしても行きたいなら自分で出す」で解決できる話です。
少なくとも「離婚しなかった代償として子どもの人生に請求書を回す」理由にはなりません。
あなたが恩を返すべき相手は、
親ではなく「次の世代」
結局のところ、毒親があなたのメモリやバッテリーを食い潰していい理由は、どこにもないのです。
「育ててもらった恩」は、確かにあなたの中に感じるものがあるかもしれません。
でも、それは「感謝」という自発的な感情として、あなたの内側に生じるものであり、親が請求書として突きつけてくるものではありません。
あなたが親に返すべきということが、そもそも間違っています。
あなたが返すべき相手は、親ではなく「次の世代」です。
親から何かもらった分は、自分の子ども、甥(おい)・姪(めい)、職場の後輩、あるいは税金を通じて社会へ。下の世代に送っていくのが「恩送り」の本来の形です(ちなみに、私には子どもがいないので、仕事をがんばる派です)。
この視点が持てると、「親への返済義務」という呪縛から、かなり自由になれます。
次回は、より深い構造の話―「親=絶対的な管理者」という思い込みについて解説していきます。
元内科の精神科専門医
中高生時代イジメにあうが親や学校からの理解はなく行く場所の確保を模索するうちにスクールカウンセラーの存在を知り、カウンセラーへの道を志し文系に進学。しかし「カウンセラーで食べていけるのはごく一部」という現実を知り一念発起し医師を目指し理転後、都内某私立大学医学部に入学。奨学金を得ながら勉学とバイトに勤しみ大学を卒業。医師国家試験に合格。当初、内科医を希望したが医師研修中に父親が亡くなった喪失体験も重なり休職に至る。この時医師になることを諦めかけるが先輩の精神科主治医と出会うことで精神科医として「第二の医師人生」をスタート。精神科単科病院にて様々な分野の精神科領域の治療に従事。アルコール依存症などの依存症患者への治療を通じて「人間の欲望」について示唆を得る。現在は双極性障害(躁うつ病)や統合失調症、パーソナリティ障害などの患者を対象とする開業医として診察にあたる。「よりわかりやすい、誤解のない精神科医療」の啓発を目標に、医療従事者、患者、企業対象の講演等を行う。うつ病を経験し、ADHD(注意欠如・多動症)をもつ医師としてX(@DrYumekuiBaku)でも人気急上昇中。Xフォロワー9.2万人。著書に『発達障害、うつサバイバーのバク@精神科医が明かす 生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳』(ダイヤモンド社)、『依存メンタルを力に変えるレッスン』(大和書房)がある。




