「寝ても休んでも疲れが取れない」「なんだかしんどい」「なかなか寝つけない」……。最近、メンタルの不調を訴える人が増えています。ADHD(注意欠如・多動症)で、うつサバイバーのバク@精神科医さんの最新刊『その考え、捨てちゃえば あなたの「思考のくせ」を変える40のヒント』(ダイヤモンド社)は、そうしたメンタル不調から抜け出すための「苦手な人との距離の取り方」や「気持ちをリセットするための方法」などを紹介する一冊。本連載では同書から抜粋・編集して、もっと楽に生きられるようになるためのヒント&解決策をお届けします。
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皆さんの職場に、
こんな人はいませんか?
「これ、やっといて~」と、自分がそこまで忙しそうでもないのに、軽く仕事を投げてくる人。
命令形で言われて、内心「なんだこいつ」と思いつつ、でも理由もなく断ったら感じ悪いかな、と反射的に「わかった」と引き受けてしまう。
結果、自分の仕事と重なって、夜まで残業―。
あるいは、勝手にあなたのモバイルバッテリーを使い、「あ、ごめん! 自分のと似てたから!」と悪びれることもなくあなたの持ち物を搾り取っていく人。
こういう、他人からもらえるものは、何でも全部もらい尽くしたいタイプ。彼らを「テイカー(奪う人)」と呼びます。
対義語は「ギバー(与える人)」。与える側、搾取される側の人です。
多くの場合、この本を読んでいるあなたはギバーか、ギバーになりやすい素質を持った人だと思います。
テイカーにも種類があります。わかりやすく奪ってくるタイプは、実はまだマシです。
命令形で押し付けてきたり、乱暴に要求してきたりするタイプは「この人嫌だな」と嫌いになれるから。嫌いになれれば警戒もしやすいですよね。
一番厄介なのは、表面上ニコニコしながら愛想よく、それらしい言い訳まで添えてくるタイプです。
「◯◯さんが作るパワポのほうが見やすいから、なんとかお願いできない?」
――こうやってあなたを持ち上げながら、奪いに来るタイプはかなり厄介です。
「え、この人こんなに褒めてくれるし、いい人なのでは?」と一瞬思ったあなた、それこそがテイカーの思う壺です。
彼らは受け取った瞬間は、笑顔で感謝を演じます。
でも、その人がその資料を上司から褒められた時、平気で「いや~、ちょちょっとやった手抜きみたいなもんで~」とさりげなくディスりながらも、ガッツリ自分の手柄にします。
つまり、あなたの労力で作られた成果物の「所有権」すら、笑顔で書き換えていく。これが「笑顔の略奪者」の正体です。
テイカーは、困っている可哀想な人ではない
ここで、多くのギバーが陥る決定的な誤解について書きます。
まず、「テイカーは困っている可哀想な人、守ってあげないといけない人」と多くのギバーが勘違いしています。テイカーは、色々な顔で接近してきます。
弱々しく「パソコン苦手で……、上司が怖くて……」と泣きを入れてくるタイプ。
「あなたしか頼れる人がいない」と持ち上げてくるタイプ。
「本当にごめん、大見得切っちゃって、あと一回だけ……」と泣き落とすタイプ。
これら全部を見て、あなたの良心は勝手に誤作動を起こします。
「可哀想かも」「困っている人を放っておくのは人として……」
テイカーはいろいろな感情を、あの手この手で刺激してくるので混乱もします。
でも、絶対に忘れないでほしいのです。テイカーは、困っている可哀想な人ではありません。
こんなに困っていそうなのに? と思ったなら、一度落ち着いて状況を再確認したほうがいいです。よく観察してみてください。
テイカーの感謝は口先だけ。あなたが困っている時に率先して助けには来ない。常に「クレクレ」だけで「自分は何もできないから頼ってばっかりでごめんね~」でお返しなし。そんなことを平然とできる人間が、メンタルが弱いはずがないんです。
あなたの労力を一方的に受け取り続け、相手の疲弊を意に介さない。これは相当のメンタル強度がないと成立しません。
つまりテイカーは、あなたが思っているより遥かに図太い。全然可哀想じゃないし、同情の必要もない。
ただ「自分が楽をするためなら相手が倒れても気にしない」略奪者なんです。
テイカーは、堂々と盗電している人
ここで比喩を一つ。テイカーをわかりやすく例えるなら、充電禁止と書いてあるファミレスのコンセントで、堂々と盗電している人です。
張り紙は見えている。店員の視線も感じている。でも「ちょっとくらい大丈夫でしょ」と自分ルールで勝手に使う。注意されれば「すみません、気づかなくて~」と笑顔で謝り、店員が離れたらまたシレッとコンセントに繋ぐ。
テイカーがあなたから奪っているのは、まさにこんな感じです。
あなたのバッテリー(時間・労力・気力)に、無断で線を繋いで、自分のスマホを充電している状態。そしてあなたが「もういい加減にしてくれない?」と言うまで、接続し続けます。
ここから逃げる最大の障害は、「でも断ったら悪いかな」という、あなたの善性です。善性そのものは悪いものじゃない。
でも、テイカーは、その善性を狙って近づいてくるんです。
次回は、なぜ私たちが彼らを断れないのか―その「良心のハッキング構造」について見ていきましょう。
元内科の精神科専門医
中高生時代イジメにあうが親や学校からの理解はなく行く場所の確保を模索するうちにスクールカウンセラーの存在を知り、カウンセラーへの道を志し文系に進学。しかし「カウンセラーで食べていけるのはごく一部」という現実を知り一念発起し医師を目指し理転後、都内某私立大学医学部に入学。奨学金を得ながら勉学とバイトに勤しみ大学を卒業。医師国家試験に合格。当初、内科医を希望したが医師研修中に父親が亡くなった喪失体験も重なり休職に至る。この時医師になることを諦めかけるが先輩の精神科主治医と出会うことで精神科医として「第二の医師人生」をスタート。精神科単科病院にて様々な分野の精神科領域の治療に従事。アルコール依存症などの依存症患者への治療を通じて「人間の欲望」について示唆を得る。現在は双極性障害(躁うつ病)や統合失調症、パーソナリティ障害などの患者を対象とする開業医として診察にあたる。「よりわかりやすい、誤解のない精神科医療」の啓発を目標に、医療従事者、患者、企業対象の講演等を行う。うつ病を経験し、ADHD(注意欠如・多動症)をもつ医師としてX(@DrYumekuiBaku)でも人気急上昇中。Xフォロワー9.2万人。著書に『発達障害、うつサバイバーのバク@精神科医が明かす 生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳』(ダイヤモンド社)、『依存メンタルを力に変えるレッスン』(大和書房)がある。




