「寝ても休んでも疲れが取れない」「なんだかしんどい」「なかなか寝つけない」……。最近、メンタルの不調を訴える人が増えています。ADHD(注意欠如・多動症)で、うつサバイバーのバク@精神科医さんの最新刊『その考え、捨てちゃえば あなたの「思考のくせ」を変える40のヒント』(ダイヤモンド社)は、そうしたメンタル不調から抜け出すための「苦手な人との距離の取り方」や「気持ちをリセットするための方法」などを紹介する一冊。本連載では同書から抜粋・編集して、もっと楽に生きられるようになるためのヒント&解決策をお届けします。
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「当たり障りのない会話」の極意
~天気・食べ物・地雷回避
「初対面の人と何を話せばいいかわからないんです」
これは外来で、すごくよく聞く相談です。
「会話が続かない自分は、コミュ障なんでしょうか」とまで悩む人もいます。正直に言って、コミュ障って言葉そのものが、異様に軽く使われているように思います。もともとはネットスラングですしね。
ただ、病気として存在するものでもあります。コミュ障を略さず言えば「コミュニケーション障害」ですが、精神科的にはDSM5(ディーエスエム・ファイブ:アメリカ精神医学会が作成した精神疾患の診断基準のマニュアル)という分類においては、「Communication disorders(コミュニケーション・ディスオーダー)」という病気の一つになります。
多分、皆さんはそんな大げさなつもりで「コミュ障ですか?」とは聞いていないと思います。
おそらくは、「誰にでもスラスラ喋れて、会話で面白がられて、大人気!」以外は全部「コミュ障」くらいに定義されているような気がします。
そんな会話術、普通に無理です。
いやいや、言葉を操る(操っていないんですが)精神科医なら知っているはず! と思われるかもしれませんが、初対面で、相手がどんな人か全くわからない以上、何を話せば喜ばれるのか、何を話したら嫌がられるのか? をわかる人はこの世に存在しません。
その上で、一つだけ確実に言えることがあります。逆に「俺はコミュニケーションが得意! これを言ったら鉄板で盛り上がる!」と思っている人ほど、地雷を踏んでいる確率が高いということです。
では、その地雷とは何か?
今回はまず、会話で振ってはいけないNG話題から先にお伝えします。
避けるべきNG話題ワースト3とは?
①初手からプライバシーを侵害する質問をする
「結婚してるの?」
「お子さんは?」
「年収はどれくらいなの?」
こういう質問を平然と振ってくる人、結構いるのでビックリします。
しかも、本人は「話題を提供してあげている」くらいの感覚です。
しかし、冷静に考えてみてください。これらの質問は、初対面の公衆の面前で「今日は何色のパンツはいてるの?」と聞かれているのと、ほぼ同じです。
「え?」
「私は今日はね、ピンク! あなたは?」
「え、えーっと、ネイビーです……」
「えー! 形は? 意外にTバックとか?」
これくらい踏み込まれています。本当に。
でも、実際に初対面の人から下着の話をされたらドン引きしますよね。なのに「結婚してるの?」という、かなりプライベートな話を聞かれた時に、すごく正直に答えてしまう人は割といます。
そんな人に、まずお伝えしたいこと。ここまで踏み込んだ質問には、答える義務はないことを、まずは認識してください。しつこく聞かれたら「なんで、今その話を聞きたいんですか?」と聞き返すくらいで十分です。
「話題がないからさ」と返ってきたら、「気をつかってくれてありがとうございます。無理しなくて大丈夫ですよ。沈黙は気になりませんので」と返せたら上級者です。
②自慢話
これも面倒な相手のサインです。
本人の実績ならまだ「ヘェ~すごいですね」と返せますが、「私の親戚は◯◯家の名士で」のような虎の威を借る狐パターンは、本当にどう返していいかわからないですよね。誰やねんそれ? 状態でもしうまく褒められる人がいたら、それはかなりのコミュニケーション能力の上級者です。
「ヘェ。私の親戚は、それよりもっとすごいですけどね」と返したら、そこからはもう大喧嘩確定です。その場で必死にヨイショしても、得るものはほぼありません。長期目線でもスルーが正解です。
③他人の悪口
これが一番関わってはいけない人のサインです。
「悪口で話題を提供するのは普通」という、とんでもないバグを抱えた人がたまにいます。悪口が話題として適切という考えは、どう考えてもバグでしかありません。
しかもそういう人は無視しても、流しても、何をしたって、あなたがいない場所であなたの悪口を勝手に言いふらします。感染するバグです。
「同調しないと自分も標的にされるかも」と思って、恐怖心から「ですよね~」と合わせる人もいますが、とても残念なお知らせです。合わせていても、ネタが切れたらあなたが標的になりますし、周囲からは、あなたごと引かれてパージされるだけ。
つまり、「このパターンの話題を提供する人」は、関わるか関わらないかではなく、最初から距離を置くのが唯一の正解です。
じゃあ、何を話せばいいのか? の具体例を何個か出しておきましょう。
会話を無難に繋げる
おすすめの話題ベスト3
①食べ物の話
「私は◯◯が好きです」は、かなり無難です。
「え? 私それ嫌い」と返してくる人とは、距離を置きましょう。
そういう人は、他人を否定しないと自分を成り立たせられないタイプなので、接触しないに限ります。
これを言われた時の無難な反応は、「へぇ、どんなところが好きなの?」とポジティブに繋ぐこと。ネガティブにはネガティブが、ポジティブにはポジティブが返ってきやすいのが、会話の基本です。
ここで大事なのは、「私は◯◯が好きです! あなたも食べなさい!」というのは、やめましょうということです。
私はこれが好き、だけなら相手も「そうなんだ~」で済みますが、強要されたら会話を続ける気力を大幅に削がれます。
とにかく初対面の人との会話のコツは、「こっちは開示していいことは言う。相手には強要しない」です。
②天気の話
これは、最強の鉄板です。令和になって異常気象が連発しているので、話題は尽きません。
「桜咲くの遅かったのに一気に夏でビックリですよね」
「秋がなくて冬になっちゃって、体がついていかないですね」
などは無難に同意を得やすい話題です。
そこから、「そんな感じだから自分は最近、服選びに困ってるんですよね」と軽く繋いでみて、相手が何か案を持っていそうな返事をしてくれたら、
「温度調節に何か工夫されていますか?」と相手に質問で繋げば話は続きます。
③出身地・地元の話
味付けが違う、気候が違う、これだけで結構話せます。
ここで「え~◯◯とか田舎じゃん(笑)」と否定してくる人がいたとしましょう。
さて、こういう時どうすべきでしたか? こういう人とも距離を置く一択、ですよね。応用が利きますね。
私は東京に進学した時、「関西って味付け違うんだよね?」と聞かれることが結構ありました。ここで「東京のうどんは出汁が真っ黒で好きやないなぁ!」と返しても得られるのはヘイトだけです。
「いや~実はうどん屋さんに行ったら全然出汁が違って私もビックリしたんですよ。他にも違うものありますかね?」などと返したほうが無難です。
こんなふうに言えば、周囲の人も「こういう食べ物、この辺の名産らしいよ」と乗ってくれたりして話題も知識も広がります。
そのほうが二度美味しいですよね。
最強の無難な姿勢は
「否定しない」
結局のところ、初対面の人との会話で一番気をつけることは、「相手を否定しない」、これだけかもしれません。
賛同できなくても「そういう考え方もあるんですね」で十分です。否定さえしなければ、人間関係は大きくこじれません。
そして、もう一つ大事な提案です。
さっきも少し触れましたが、初対面の人と沈黙状態になったとしても、無理にあなたが話題を振らなくていいのです。
別に芸能人でも噺(はなしか)家でもないのに、「上手く話さなきゃ」と思わなくて良いのです。お金をもらって盛り上げろと言われたわけでもないのに「白けさせちゃダメ」と思うのは、なぜでしょうか?
プロでも舞台で滑ることだってあるのに、プロ以上を目指すのはやめましょう。
そもそもベストな人間関係は、「無言でも気をつかわない」関係だと、いろんな人が言っています。
そこまで仲良くもないし、話題を提供できないと不安という方は、いっそ「聞き上手」を目指してもいいんじゃないでしょうか。
ゆっくり「なるほど~」「そうですね!」と相槌を打ちながら話を聞けるポジションは、実は今、めちゃくちゃ貴重な存在です。
無理に背伸びして「話が面白い人」を目指すよりも、「ちゃんと聞いてくれる人」になるほうが、長期的には人から好かれます。
無難な会話の基本は「話題を振る技術」より、「地雷を踏まない技術」と「いい感じに投げられた話題を受ける技術」だと、私は心底思います。
元内科の精神科専門医
中高生時代イジメにあうが親や学校からの理解はなく行く場所の確保を模索するうちにスクールカウンセラーの存在を知り、カウンセラーへの道を志し文系に進学。しかし「カウンセラーで食べていけるのはごく一部」という現実を知り一念発起し医師を目指し理転後、都内某私立大学医学部に入学。奨学金を得ながら勉学とバイトに勤しみ大学を卒業。医師国家試験に合格。当初、内科医を希望したが医師研修中に父親が亡くなった喪失体験も重なり休職に至る。この時医師になることを諦めかけるが先輩の精神科主治医と出会うことで精神科医として「第二の医師人生」をスタート。精神科単科病院にて様々な分野の精神科領域の治療に従事。アルコール依存症などの依存症患者への治療を通じて「人間の欲望」について示唆を得る。現在は双極性障害(躁うつ病)や統合失調症、パーソナリティ障害などの患者を対象とする開業医として診察にあたる。「よりわかりやすい、誤解のない精神科医療」の啓発を目標に、医療従事者、患者、企業対象の講演等を行う。うつ病を経験し、ADHD(注意欠如・多動症)をもつ医師としてX(@DrYumekuiBaku)でも人気急上昇中。Xフォロワー9.2万人。著書に『発達障害、うつサバイバーのバク@精神科医が明かす 生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳』(ダイヤモンド社)、『依存メンタルを力に変えるレッスン』(大和書房)がある。




