「寝ても休んでも疲れが取れない」「なんだかしんどい」「なかなか寝つけない」……。最近、メンタルの不調を訴える人が増えています。ADHD(注意欠如・多動症)で、うつサバイバーのバク@精神科医さんの最新刊『その考え、捨てちゃえば あなたの「思考のくせ」を変える40のヒント』(ダイヤモンド社)は、そうしたメンタル不調から抜け出すための「苦手な人との距離の取り方」や「気持ちをリセットするための方法」などを紹介する一冊。本連載では同書から抜粋・編集して、もっと楽に生きられるようになるためのヒント&解決策をお届けします。

【精神科医のアドバイス】なぜ人間関係にも棚卸しが必要なのかPhoto: Adobe Stock

人間関係の整理が必要なサイン

 突然ですが、スマホのアドレス帳を開いてみてください。そこには、誰だったか思い出せない名前が、いくつも並んでいませんか?

「これ誰だっけ……」
「いつ登録したっけ……」
「あ、そういえばこの人いたな……」

 連絡を取ることもなく、顔も曖昧で、削除する気もないまま放置されている連絡先たち。これが、人間関係の整理が必要なサインです。

 私は、これを「アドレス帳の幽霊(不要なメモリ)」と呼んでいます。

 そして、この幽霊が増えれば増えるほど、あなたの人生というシステムは、地味に重くなっていきます。

 スマホで「ストレージがいっぱいです」という警告が出たことがある人も多いのではないでしょうか。

 写真、動画、アプリ、キャッシュ。無自覚に溜まっていったものが、いつの間にか容量を圧迫している。そして、本当に必要なファイルを保存できなくなる。

 人間関係でも、これと全く同じ状況になっていませんか?

 ・何年も連絡を取っていない薄い知り合い
 ・SNSでフォローし続けているだけの誰か
 ・たまに第三者を交えてかろうじて顔を合わせる用事が発生する形式的な知人

 これらの「使っていない人間関係」が、あなたの脳の容量を地味に圧迫し、本当に大切な人との時間や心のストレージを、知らないうちに削っていませんか?

「ストレージがいっぱい」のスマホでは、新しい思い出を追加できません。

 人間関係もこれと同じで、容量を空けないと、新しい出会いを受け止めるスペースが足りなくなるかもしれません。

人間関係も定期的にアップデートが必要

 服、食器、本、写真。物の整理は、数年に一度くらいの頻度でやる人が多いと思います。

 なのに、人間関係に関しては「整理する」という発想すら持っていない人が圧倒的に多いのではないでしょうか。

 これは、義務教育時代から「人とのご縁は大切に」「友達は多いほうがいい」という固定観念がOSにインストールされっぱなしで、アップデートされていないからです。

 人との関係には、活発にやり取りをしている時期から、突然何も連絡を取り合わなくなる変化が起こることは、往々にしてあります。

 その時期だけ深く関わって、自然と離れていく関係。これは、あなたがなにか悪いことをしたとかでもなく、自然にそういう感じになる。ただそういうもので、全人類が経験したことのある現象です。

 だから、「ああ、有効期限が切れたのか」と思っていいのに、古い義務教育OSは「縁を切るのは冷たい」と、あなたに警告を出してきます。

 そのせいで、終わっている関係を抱え込み、謎の反省会を続けてしまう。これが、心のバッテリーを地味に削り続けている原因の一つです。

 人間関係も、ある程度のところで整理整頓(棚卸し)をしてもいいのです。

 では、どう棚卸しするか? ですが、ある程度、基準をつくるべきです。

①最後に会話したのはいつか?

 LINEやメッセンジャーで、最後にちゃんとした会話をしたのはいつか。3年以上、形式的なスタンプの応酬すらしていない関係は、多分終わっています。今後に期待とかは全くしなくてOKだと思います。

②会話があった時、楽しかったか?

 実際に久しぶりに会って、楽しかったか、疲れたか。

 疲れたほうが大きい関係は、もしかするとお互いのスピード感がずれつつあるのかもしれませんね。

 それこそ、話題がずっと知らない向こうの友人の話ばかりで、双方の近況を聞き合うという流れではなかったなら、相手は「今のあなた」にもう興味はないのかもしれません。

 過去の積み重ねがあったから付き合っていただけで、現在のあなたとの相性は、前のようには戻らないかもしれません。徐々に離れても良いのではないでしょうか。

③20年単位の付き合いか、それ未満か?

 ここは少し例外です。子供の頃からの友達、学生時代からの長い付き合いは、3年連絡が取れていなくても、関係性を即切るのは、ちょっと待ったほうが良いです。

 あの頃の自分を知っている人、というのは、人生にいるほうが豊かだからです。ただし、20年来の友人でも、前述の通り、今の話ばかり一方的にされ、会うたびに疲れる関係なら、それは単なる惰性です。

 惰性で続ける人間関係ほど、心のバッテリーを消耗させるものはありません。たまに来た連絡が宗教の勧誘とか、マルチ商法のお誘いだったなら、メモリから削除するのに十分な理由になるでしょう。

 こんなふうに棚卸しの話をすると、「縁を切るような冷たい話だ」と感じる方もいるかもしれません。

 しかし、これからもっと「冷たいなぁ」と思われる話をします。人間関係は、感情的な繋がりだけが全てではありません。

 医者、弁護士、税理士、不動産関係者、会計士、IT関係に強い、専門知識を持っている知人は、人生のどこかで頼ることになる日が来るかもしれません。

「使える知人」と言うと冷たく聞こえますが、相手にとってもこちらが「使える知人」になっているなら、これは健全な相互利用の関係です(私も使われる側の人間ですしね)。

 頻繁に会わなくても、何かあった時に連絡を取れる距離感を保っておく。これは知人関係の中でも、優先度が高い相手です。

 棚卸しで残すべきは、
 ①感情的に大切な人
 ②どれだけ時間が空いても、お互いに自然と心地よく交流できる人
 ③専門性で助けてもらえる人

 この3つのカテゴリです。

 それ以外の「義務感だけで繋がっている人」からは、ゆっくりとフェードアウトしていってもいいのではないでしょうか。

あなたも誰かから棚卸しされる側になる

 これが一番大事なポイントかもしれません。あなたが棚卸しをするということは、あなたも誰かから棚卸しされる側になるということです。これは、宇宙の摂理として平等に発生します。

「あの人、最近連絡くれないな」
「もう自分のこと忘れちゃったのかな」

 そう感じる場面は、誰の人生にも必ず訪れます。

 そう思うなら、連絡してみたら良いのではないでしょうか?

 ここでレスポンスがなかったとて、凹む必要はありません。それは、相手が自分の人生を整理しているだけです。あなたの価値が下がったわけでも、嫌われたわけでもない。

 ただ、お互いの人生のフェーズが変わって、ご縁の有効期限が満了しただけです。

 人を選別する権利は、自分にあります。

 そして、人から選別される現象も、自分に対して起こります。これは完全に平等な関係性です。

 あなたが「もういいかな」と思って距離を取るように、相手も「もういいかな」と思うことがある。それを「裏切られた」「冷たくされた」と受け取る必要はありません。

 選別する自由がある以上、選別される自由も認める。自分だけが特権階級にいると思うほうが幼稚です。むしろ棚卸しを手伝ってくれたと思って受け入れましょう。

人間関係は、容量が決まっているスマホと同じ

 おっかなびっくりでもスマホでストレージを整理すると、動作が驚くほど軽くなります。

 人間関係でも、同じといえます。意味のない義理や、消耗するだけの関係から手を引くと、本当に大切な人との時間が増え、自分のために使えるエネルギーも増える。

 そして空いた容量に、新しい出会いが入ってくる余地が生まれます。全員にいい顔をしようとしたとしても、同日にクリスマスパーティに誘われたら、あなたも選別を余儀なくされるし、相手も同じことをするでしょう。

 こんなことが頻発しないようにするためにも、定期的に整理して、本当に大切な人とちゃんと付き合うために、容量を空けておきましょう。

 最後に。

 棚卸しは、数年に一度くらいが丁度いいんじゃないでしょうか(個人差はあると思いますが)。毎月やる必要はないですし、5年もやらないと容量がパンクする(この人一体誰だっけ問題が勃発する)でしょう。

 正月でもいいし、誕生日でもいいし、年度末でもいい。

 自分の節目のタイミングで、人間関係というアプリの一覧を見直す習慣を持つこと。

 これが、現代を快適に生きるための、ちょっとしたメンテナンス習慣です。

 そして、本当の意味で人生を軽くするには、人間関係を整理した先で、「自分一人の時間」をどう過ごすかが鍵になります。

バク@精神科医
元内科の精神科専門医
中高生時代イジメにあうが親や学校からの理解はなく行く場所の確保を模索するうちにスクールカウンセラーの存在を知り、カウンセラーへの道を志し文系に進学。しかし「カウンセラーで食べていけるのはごく一部」という現実を知り一念発起し医師を目指し理転後、都内某私立大学医学部に入学。奨学金を得ながら勉学とバイトに勤しみ大学を卒業。医師国家試験に合格。当初、内科医を希望したが医師研修中に父親が亡くなった喪失体験も重なり休職に至る。この時医師になることを諦めかけるが先輩の精神科主治医と出会うことで精神科医として「第二の医師人生」をスタート。精神科単科病院にて様々な分野の精神科領域の治療に従事。アルコール依存症などの依存症患者への治療を通じて「人間の欲望」について示唆を得る。現在は双極性障害(躁うつ病)や統合失調症、パーソナリティ障害などの患者を対象とする開業医として診察にあたる。「よりわかりやすい、誤解のない精神科医療」の啓発を目標に、医療従事者、患者、企業対象の講演等を行う。うつ病を経験し、ADHD(注意欠如・多動症)をもつ医師としてX(@DrYumekuiBaku)でも人気急上昇中。Xフォロワー9.2万人。著書に『発達障害、うつサバイバーのバク@精神科医が明かす 生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳』(ダイヤモンド社)、『依存メンタルを力に変えるレッスン』(大和書房)がある。