「寝ても休んでも疲れが取れない」「なんだかしんどい」「なかなか寝つけない」……。最近、メンタルの不調を訴える人が増えています。ADHD(注意欠如・多動症)で、うつサバイバーのバク@精神科医さんの最新刊『その考え、捨てちゃえば あなたの「思考のくせ」を変える40のヒント』(ダイヤモンド社)は、そうしたメンタル不調から抜け出すための「苦手な人との距離の取り方」や「気持ちをリセットするための方法」などを紹介する一冊。本連載では同書から抜粋・編集して、もっと楽に生きられるようになるためのヒント&解決策をお届けします。
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断れない人の脳のOS
「断ると相手に嫌われそうで、つい曖昧な返事をしてしまう」
「行きたくない誘いでも、断り方がわからずズルズル参加している」
嫌なのにうまく断れない、という話もよく聞きます。
しかし話を聞いていくと、断れない人と断れる人には、決定的な違いがあります。それは、脳のOSにインストールされている思い込みのバージョンの違いです。
断れない人のOSには、こう書き込まれています。
「断る→相手を拒絶した→嫌われる」
これが断れない=断ってはいけないと思い込むバグの原因です。このバグが厄介なのは、本人が「自分はちゃんと考えて行動している」と思っている点です。
実際は、自動的に「断ったらいけない!」と変換されているだけなのに。
冷静に考えてみてください。例えば、食事の誘いを断ったとして、相手は本気で「こいつは自分を全否定した!」と思うでしょうか?
ほとんどの場合、「あ、都合悪いの? 了解!」で次の人を探すだけです。そもそも、食事一回断ったくらいで人間関係が崩壊するなら、その関係は最初から破綻寸前だったのではないでしょうか。
国会議員ですら、全員毎回議会に参加しているわけじゃありません。仕事なのに、用事で休んでいる議員が普通にいます。
私も冬場、医師会の理事会を「寒いから」(路面凍結で愛車がスピンしたら命に関わるので)という理由で断りましたが、脱退を求められたりはしていません。
本当に安定した関係性が構築されているならば、理由を言えばどうにかなります。
「ゴニョゴニョ」が一番迷惑
むしろ問題は、はっきり断らないことです。
「う~ん、調整したら行けないこともないというか~」
こういうゴニョゴニョした返事は、相手を一番混乱させます。
「行くの? 行かないの? どっちなの?」と、悩みと期待と店の予約で相手のメモリを食い潰す行為になってしまうからです。はっきり断ることは、相手のリソースを節約させる優しさに満ちた行為です。
「断るのは申し訳ない」と思っている人ほど、逆にゴニョゴニョいうことで相手に迷惑をかけている、というのが悲しい現実なのです。
シチュエーション別・断り方テンプレ集
「咄嗟だと本当のことを言ってしまいそう!」という、心が善良すぎる人向けに、シチュエーション別の断り方テンプレを置いておきます。
①職場の飲み会
メンバーによっては行きたくない時、ありますよね。最強の盾は、健康診断結果です。
「最近、健康診断の結果が……難しくてよくわからないんですけど、早く帰って休むようにと……(ドクターストップふう)」
これで十分です。肝臓とか腎臓とか、医者じゃない限りわからなくて普通です。
医者が相手なら「当直のバイトが入ってて」という特殊カードもあります。
「ソフトドリンクでもいいから」と粘られないために、「とにかくよくわかんないけど早く帰って休むほうがいいみたいで……」と曖昧にしておくのがコツです。
これなら言われたとも、言われてないとも言っていません。だから嘘はついていません、よね。
②ママ友ランチ・PTA
ママ友は、子供の通う先が変われば消滅する、はかない関係性です。そこで毎回、神経をすり減らす必要はありません。
「その日は、ちょっとバタバタしておりまして(何がとは言わない)」
これで十分です。これを根掘り葉掘り聞いてくる人がいたら、そっちのほうが危険なウイルスです。
「そんな人に陰でアレコレ言われたら……」と心配する気持ちはわかります。
しかし、まともな人は「あ~、あの人また言ってるなぁ」とスルーしますし、一緒に乗っかる人は、こちらも一緒にアンインストールすべき不要な存在です。
③二次会への誘い
「今日はここで失礼します」
笑顔で言って、振り返らずに帰る。これだけです。一次会でベロベロになっている人は、誰が帰ったかなんて覚えていません。ひょっとしたら、誰がその場にいたのかすら覚えていません。サッサと気楽に帰りましょう。
④SNSでの勧誘・会いたいDM
これが一番危険です。
知らない人と1対1で会うこと自体、リスクが高すぎます。
「今、ネットでの交流はネットだけにしているんですよね」と、マイルールを伝えるだけで十分です。ネットでの人格と現実の人格が同じという保証は、どこにもありません。
そもそも相手の性別や年齢、体格だって全くわかりません。事件に巻き込まれる可能性だって、今のご時世ザラにあります。自分の安全を守ることは、絶対に称賛されるべき行動です。
断った後のモヤモヤ対処法
断り慣れていない時、無事に断ったあと「悪かったかな……」とモヤモヤすることもあるでしょう。
それは、脳の通知設定が「断った相手」に対してオンのままになっている状態だからです。断った後は、その通知をサッサと終了させるところまで、ワンセットで練習していきましょう。
そして、もし相手があなたの断りを許さず、追撃でガンガン誘ってくる場合は、それは完全に別の大問題が生じている証拠です。
一度断った相手を、そこまで必死に誘うのは、何か裏があると考えるのが普通です。宗教、マルチ商法、よこしまなお誘い、金の無心……ロクなことがない可能性が高いので、脳内で全てブロックして大丈夫です。
「断って嫌われたら……」がモヤモヤの原因なら、最後にこれを思い出してください。その程度であなたを嫌う相手と、これからも繋がっていたいですか?
ちょっとの言動で機嫌を損ねる相手の機嫌取りを、なぜあなたがしなきゃいけないと思っているのでしょうか?
そんな爆弾みたいな人と接していて、自分に何のメリットがあるのか。
「あ、危険なアプリをインストールするところだった。危なかった~」
そんな存在として、サクッと記憶から消して大丈夫です。
元内科の精神科専門医
中高生時代イジメにあうが親や学校からの理解はなく行く場所の確保を模索するうちにスクールカウンセラーの存在を知り、カウンセラーへの道を志し文系に進学。しかし「カウンセラーで食べていけるのはごく一部」という現実を知り一念発起し医師を目指し理転後、都内某私立大学医学部に入学。奨学金を得ながら勉学とバイトに勤しみ大学を卒業。医師国家試験に合格。当初、内科医を希望したが医師研修中に父親が亡くなった喪失体験も重なり休職に至る。この時医師になることを諦めかけるが先輩の精神科主治医と出会うことで精神科医として「第二の医師人生」をスタート。精神科単科病院にて様々な分野の精神科領域の治療に従事。アルコール依存症などの依存症患者への治療を通じて「人間の欲望」について示唆を得る。現在は双極性障害(躁うつ病)や統合失調症、パーソナリティ障害などの患者を対象とする開業医として診察にあたる。「よりわかりやすい、誤解のない精神科医療」の啓発を目標に、医療従事者、患者、企業対象の講演等を行う。うつ病を経験し、ADHD(注意欠如・多動症)をもつ医師としてX(@DrYumekuiBaku)でも人気急上昇中。Xフォロワー9.2万人。著書に『発達障害、うつサバイバーのバク@精神科医が明かす 生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳』(ダイヤモンド社)、『依存メンタルを力に変えるレッスン』(大和書房)がある。




