「寝ても休んでも疲れが取れない」「なんだかしんどい」「なかなか寝つけない」……。最近、メンタルの不調を訴える人が増えています。ADHD(注意欠如・多動症)で、うつサバイバーのバク@精神科医さんの最新刊『その考え、捨てちゃえば あなたの「思考のくせ」を変える40のヒント』(ダイヤモンド社)は、そうしたメンタル不調から抜け出すための「苦手な人との距離の取り方」や「気持ちをリセットするための方法」などを紹介する一冊。本連載では同書から抜粋・編集して、もっと楽に生きられるようになるためのヒント&解決策をお届けします。
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人の生き方に口を挟んでくる人
「いい歳なんだから、そろそろ結婚したほうがいいよ」
「子供は早めに作ったほうがいいんじゃない?」
「せっかく入った会社なんだから、辞めないほうがいいよ」
「もうちょっと痩せたほうが健康にいいし、綺麗になれるのにもったいなくない?」
求めてもいないのに、人の生き方に口を挟んでくる人に時々遭遇しませんか?
親、親戚、職場の先輩、ご近所さん、SNSの知らないアカウント。
属性は様々ですが、共通しているのは「あなたの人生を勝手に評価し、勝手に修正案を押し付けてくる」点です。そして本人は、ほぼ100%「親切心からアドバイスしている」と思っています。
「言ってあげるのが本人のため」
「黙っているのは冷たい」
相手は、善意100%でズカズカと、あなたのプライバシーに踏み込んできます。
結婚相談所は、
結婚相手を見つける場ではなかった
ここで私自身の話を書きます。父が亡くなった後、不安になったのか、母が「結婚しろ、結婚相談所に入れ」と何度も言ってくるようになりました。あまりに続くので、諦めて本当に入会しました。
結論から言うと、そこは結婚相手を見つける場というより、見た目・学歴・職歴・家柄の4枚のカードを並べてお互いの条件を査定し合う「条件カードバトル」の世界でした。
少ない休みのたびに正装してお見合いを入れ、毎回疲労困憊で帰る。それを何ヶ月か続けた結果私の心はボキボキに折れ、「もう一生結婚できないと思うから諦めてくれ」と母にギブアップ宣言。
そして一生独身を覚悟し、二匹の猫を迎えて好きに生きるモードに―と、ここでどんでん返しが起こります。母の用意した「結婚相談所」というレールから完全に外れた後、たまたま行ったSNSのオフ会で今の配偶者に出会ったのです。
皮肉なことに、親の干渉に従っている間は、私はただ疲れただけ。干渉から完全に降りて好きに生きはじめた瞬間に、ようやく良い人と出会えたのです。
「これをすれば絶対幸せになれる」は、存在しないんだなぁと、今でも思います。
医局からの人事異動を断ったら……
干渉してくるのは、家族だけではありません。職場でも当然起こります。
勤務医時代、A病院で満足して働いていたところ、医局の人事で突然「B病院に行け」と言われ、私は断りました。すると、「断ったら関西で仕事ができると思うなよ」という「ご忠告」をいただきました。
いま考えれば恐喝ですが、当時はそういう文化が残っていて、私も心底信じていました。
それで当時独身で何も気にするもののない私は、「ご忠告ありがとうございます。先生方の目障りにならないよう尽力いたします!」と返し、関西から関東へ出奔したのです。
そして数年後、勤務先だったA病院の院長から一本の電話が。
「正直バレへんやろ。帰ってこん?」―そして私はまた関西に戻り、普通に仕事を始めたのです。結局、あの恫喝に実体があったのかは、今でもわかりません。
でも実体があろうがなかろうが、こうして案外すり抜けられてしまう。干渉してくる人が振りかざす脅しは、実行されないか、実行されても大したダメージがないことが多いのではないでしょうか。医者の狭い世界でこれなので。
干渉してくる人に議論で勝とうとしない
私のこの2つの体験から、干渉してくる人には、以下の共通の心理パターンがあるのではないかと、推測しました。
①自分の選択を肯定したい
結婚した人は「結婚したほうがいい」と言いがちです。子供のいる人は「子供はいたほうがいい」と言いがちです。会社員を続けている人は「辞めるべきじゃない」と言いがちです。
つまり彼らは、あなたを心配しているのではなく、自分と同じ選択をする仲間を増やしたいだけです。仲間が多ければ、自分の選択は正解だったと思いやすいですよね。そのための言動です。
②優位に立ちたい
「教えてあげる」「教えてもらう」という構図は、心理的に教える側が教えてもらう側よりも優位な立場になりやすいです。人生経験豊富な自分→未熟な相手へアドバイス、という関係を作ることで、自分の存在価値を確認しているわけです。
③単純に暇
これも結構大きいです。自分の人生に集中している人は、他人の人生に口出しする時間も余裕もありません。口を出してくる人ほど、自分の人生に空白が多い人なんじゃないでしょうか。
ここで一番大事なポイントをお伝えします。
干渉してくる人に議論で勝とうとしてはいけません。
「いや、結婚しなくても幸せに生きている人は、たくさんいて」
「子供がいない人生にもメリットはあって」
こういう正論で論破しようとすると、相手は猛烈に反撃してきます。
なぜなら、それに同意することは、相手にとって自分の人生選択を否定されることと同じだからです。論破を試みた瞬間、人間関係は永遠にすり合わせのできない戦場になります。
しかも相手は、「アドバイスしてあげたのに、生意気な態度を取られた」と被害者面で周囲に言いふらしかねません。これはコスパが悪すぎる対処法です。
では、どうするのがいいのでしょうか?
正解はシンプルです。
「ありがとうございます~」
「考えておきますね~」
「そういう考え方もあるんですね~」
最強の対処法は、こんな感じでbotのように同じトーンで繰り返すことです。
否定はしないが、相手の話の中身は受け取らないことがポイントです。中身を受け取ろうとすると、感情が動いて疲れます。
「アドバイスをくれた」という形だけ受け取って、内容はその場で蒸発させる。
私が医局で恫喝された時の「ご忠告ありがとうございます!」も、まさにこのパターンです。中身は完全にスルー、形式だけ受け取って、即その場を立ち去る。これは諦めでも敗北でもありません。
相手のOSに合わせて返事をする仕様を、こちらが選ばない権利を行使しているだけです。
自分の人生の決定ボタンは
自分で押すべき
干渉してくる人の言葉を真に受けて生きると、私の結婚相談所時代のように、必死に頑張っているのに、何も得られない時間を過ごすことになりかねません。
しかも、結果が出なかった場合、「言うことを聞くんじゃなかった!」と責任を、他人になすりつけたくなってしまいます。
だから、自分の人生の決定ボタンは自分で押すべきです。
私の場合、母の結婚プレッシャーから降りたら配偶者と出会えたし、医局の恫喝により全然違う土地で働いた結果、知見も多く得られたし、しかも数年後には帰ってきています。
干渉者が予言する「悲惨な未来」は、ほぼ実現しません。
でも、外れても相手は気にしません。だって彼らは、あなたの人生に責任を持っていないからです。
責任を持たない人の予言は、ただのその人の考えたサイキョーのなんちゃって予言にすぎません。
だからこそ、普段からすぐに動ける準備をしつつ、何かあったら「ありがとうございます!」と受け流して、自分の決めた道を歩いてください。
干渉してくる人の言うことを聞いて、好かれたって何も良いことはないです。
あなたの人生は、最後まであなたが運営するシステムなのですから。
元内科の精神科専門医
中高生時代イジメにあうが親や学校からの理解はなく行く場所の確保を模索するうちにスクールカウンセラーの存在を知り、カウンセラーへの道を志し文系に進学。しかし「カウンセラーで食べていけるのはごく一部」という現実を知り一念発起し医師を目指し理転後、都内某私立大学医学部に入学。奨学金を得ながら勉学とバイトに勤しみ大学を卒業。医師国家試験に合格。当初、内科医を希望したが医師研修中に父親が亡くなった喪失体験も重なり休職に至る。この時医師になることを諦めかけるが先輩の精神科主治医と出会うことで精神科医として「第二の医師人生」をスタート。精神科単科病院にて様々な分野の精神科領域の治療に従事。アルコール依存症などの依存症患者への治療を通じて「人間の欲望」について示唆を得る。現在は双極性障害(躁うつ病)や統合失調症、パーソナリティ障害などの患者を対象とする開業医として診察にあたる。「よりわかりやすい、誤解のない精神科医療」の啓発を目標に、医療従事者、患者、企業対象の講演等を行う。うつ病を経験し、ADHD(注意欠如・多動症)をもつ医師としてX(@DrYumekuiBaku)でも人気急上昇中。Xフォロワー9.2万人。著書に『発達障害、うつサバイバーのバク@精神科医が明かす 生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳』(ダイヤモンド社)、『依存メンタルを力に変えるレッスン』(大和書房)がある。




