感じのいい人が「タクシーに乗った時」に運転手にかける〈意外な言葉〉写真はイメージです Photo:PIXTA

日々さまざまな乗客と向き合うタクシードライバーは、クレーマーやカスハラ客に悩まされることもしばしばだ。だが、全ての乗客が悪質なわけではない。細かな気遣いができる「感じのいい乗客」に出会ってホッとすることもある。今回は、そうした乗客の「粋な計らい」の実態を解説する。乗客に「お釣りはいりません」と言われたときのドライバー側の本音も明かす。(現役タクシードライバー/物流ライター 二階堂運人)

「感じのいい乗客」が
タクシー運転手に伝える「意外な言葉」

 ある雨の日。後部座席に乗ってきた男性が、傘の水滴をしっかり振り払ってから畳み、足元に置いた。ほんの数秒の動作だが、こういう小さな振る舞いは意外と記憶に残るものだ。

 タクシーという狭い空間では、乗客のちょっとした行動がドライバーの心理状態を左右する。

 前回は、運転手を困らせる「感じの悪い乗客」について書いた。車内で電話に熱中し、あごの動きで行き先を指示する人。「ルートはお任せします」と言ったのに、選んだ道にクレームを付ける人。そうした人々の言動に、ドライバーの心が傷つくこともある。

 今回はその反対に、乗せていてホッとする「感じのいい乗客」の話をしてみたい。

 皆さんが「感じのいいタクシー客」と聞いて思い浮かべるのは、どんな人だろうか。チップを払ってくれる乗客。話が弾んで目的地まであっという間に着いてしまう乗客。そんなイメージを持つ人は多いかもしれない。

 だが、ドライバーが「このお客さん、いい人だな」と感じるのは、そうした目立つ振る舞いではなく、些細な気遣いをしてくれる人だ。

 例えば、車内に備え付けてある、スマートフォンの充電ケーブルを使ったあとに、元の場所に戻してくれる人。夏の暑いとき、後部座席にあるサーキュレーターの風量を調節する前に「少し強めても大丈夫ですか」と一声掛けてくれる人。

 ちょっと意外かもしれないが、どちらも「自分以外の人もこのタクシーに乗る」という気遣いをしみじみと感じる。

 シートベルトもそうだ。こちらからお願いしなくても自発的に締めてくれるお客さんからは、同乗者としてきちんとルールを守ろうとする配慮を感じ、ありがたい気持ちになる。

 言葉遣いも同じだ。「お願いします」「ありがとうございます」。特別な表現ではないが、言葉遣いが丁寧なお客さんが相手だと、こちらも自然と気持ちよくやり取りできる。

 丁寧な言葉を掛けてくれるだけでなく、そのあとに「気をつけて」「お疲れさまです」と、さらに一言添えてくれる人もいる。深夜なら「この時間まで大変ですね」と声を掛けられることもある。たったそれだけで、ドライバーの疲れは少し軽くなる。