写真はイメージです Photo:PIXTA
「空車」のタクシーを見かけて、乗せてもらおうと手を挙げたのに、なぜか素通りされた――。こんな経験がある人は多いだろう。急いでいるのにスルーされ、腹を立てたことがある人もいるはずだ。こうした際、タクシー運転手は何を考えているのか。どうすれば確実に停まってもらえるのか。現役ドライバーが本音で解説する。(現役タクシードライバー/物流ライター 二階堂運人)
なぜ「空車」のタクシーは
あなたの前を通り過ぎるのか
タクシーは電車やバスと違って、客が決まった乗り場を利用する義務はない。タクシー乗り場に並ぶのも、道行くタクシーを拾うのも、個人の自由である。
タクシーを拾う場合、乗客は道端に立って手を挙げるだけで、タクシーを呼び止め、目的地まで運んでもらうことができる。
だが時として、この「当たり前」が通用しないケースがある。
空車のタクシーに向かって手を挙げ、運転手の視界に入ったにもかかわらず、タクシーがそのまま通り過ぎていくことがあるのだ。
「なんで無視するの?」「乗車拒否は違法じゃないの?」
釈然としない思いを抱いたことがある人は少なくないはずだ。雨の日に限って何台も素通りされて、傘を持ったまま呆然と立ち尽くした経験がある人もいるかもしれない。
だが実は、「あえてお客さんを乗せない」という判断の裏には、乗客が知らないさまざまな事情がある。
今回は、長年ハンドルを握ってきた筆者が、その中身を明らかにしていきたい。
客を乗せないことは
ドライバーにとって「損」である
大前提として押さえておいて欲しいのは、タクシードライバーにとって客を乗せないことは、間違いなく「損」だという点だ。
歩合給で働くドライバーがほとんどのこの業界では、1回の乗車がそのまま1回の売り上げになる。時間給ではないため、空車のまま流している時間は売り上げを得ることができない。
目の前で手を挙げている人をわざわざスルーする理由など、本来はほとんどない。むしろ「乗せたくて仕方がない」というのが本音に近い。
また、道路運送法で、タクシーが正当な理由なく乗車を断ることは禁じられている。ドライバーの気分や好き嫌いだけで乗客を選ぶことはできないのだ。
そのため、たいていの場合、客の前を素通りするタクシーは「乗せたくない」ではなく「乗せられない」事情を抱えている。
例えば、配車アプリで別の依頼を受け、その乗客のもとへ向かっている。休憩や給油のために移動している。営業所へ戻っている途中である。こういった具合だ。
この際、ドライバーは表示板を「迎車」「回送」などに切り替えるのが基本だ。だが、焦りなどから操作を失念し、うっかり「空車」のまま走行しているお粗末なケースも正直ゼロではない。
本来は「回送」なのに、ドライバーのミスで「空車」になっている可能性も!? Photo:PIXTA
彼らは、表示を切り替えたつもりで走行し、乗客を悪気なくスルーしてしまう。こうした単純ミスが、「空車タクシーに乗車拒否された」という誤解を招いてしまうのだ。







