富裕層がタクシーで「お釣りはいりません」と言わない意外な理由【現役ドライバーが明かす】写真はイメージです Photo:NurPhoto/gettyimages

タクシードライバーである筆者は、送迎するエリアや車内での会話、身だしなみなどから「この人は富裕層だ」と感じることがある。もちろん正確な資産額を把握しているわけではないが、お金持ちだと思われる人々は、他の乗客とは所作が明らかに異なる。富裕層ほど「お釣りはいりません」とは言わないのも興味深いポイントだ。長年の乗務経験で気付いた、富裕層の共通点を明らかにする。(現役タクシードライバー/物流ライター 二階堂運人)

乗客の人柄は
タクシーに乗った瞬間に分かる

「お金持ちは派手だ」 。そんなイメージを持っている人は少なくないだろう。

 高級ブランドを身にまとい、高級車を乗り回す。お店やタクシーでは「お釣りはいりません」と気前よくお金を払う。テレビドラマや映画では、そんな富裕層の姿が繰り返し描かれてきた。

 しかし、長年タクシーのハンドルを握ってきた私は、そのイメージに少し違和感がある。

 富裕層と思われる客を乗せ続けてきて、私が確信しているのは「本物のお金持ちほど、自分が富裕層であることを見せびらかそうとしない」ということだ。

 タクシードライバーは、乗客の正確な資産額を知ることはできない。それでも、車内で交わす何気ない会話や乗り降りの所作から、「豊かであること」が伝わってくる。そうした乗客が持っているのは、派手な時計でも、高級ブランドの洋服やバッグでもない。丁寧に整えられた身なりと、ささやかな気遣いである。

 タクシーに乗るときの「お願いします」という一言。そして、降りるときの「ありがとうございました」。たったそれだけのことなのに、不思議なほど人柄が表れるのだ。

 もちろん、こうした傾向は、あくまでも私個人の乗務経験に基づく印象に過ぎない。富裕層といっても、当然ながら一人ひとりの性格は異なり、ここで述べる傾向に当てはまらない人もいる。その前提のもとで、読み進めていただければ幸いだ。

 さて、タクシーという仕事は、人間観察の仕事でもある。初対面同士が数分~数十分という限られた時間を共有し、その後は二度と会わないことも多い。にもかかわらず、その洗練された振る舞いが記憶に残る乗客がいる。

 ある雨上がりの夕方、高級住宅街で60代くらいの男性を乗せた。濃紺のスーツに黒い革靴。ブランドを誇示するような装いではないが、手入れの行き届いた身なりからは、物を長く大切に使う人なのだと伝わってきた。

 男性は車内へ乗り込むと、穏やかな口調でこう言った。