阪神タイガースと聞いて、真っ先に「甲子園球場」を思い浮かべる人は多いでしょう。実は、企業の決算書を見ると、普段のイメージだけではわからない「会社が何を持ち、何を持たずに事業をしているのか」が見えてきます。今回は書籍『サンキー図で「お金の流れ」が1秒でわかる 見るだけ決算書』の手法を使って、阪神タイガースのBS(貸借対照表)を読み解いてみましょう。
非上場企業は「官報」で調べる
プロ野球・阪神タイガースを運営する株式会社阪神タイガースは非上場企業です。そのため、上場企業のような詳しい決算資料は公開していませんが、国が発行する官報という機関紙には、貸借対照表(BS)の要旨を毎年掲載しています。
そこで今回は、阪神タイガースの2026年3月期の決算をサンキー図で見てみましょう。BSがどんな形になっているのか、ぜひ予想してから読み進めてみてください。
総資産296億円のうち、固定資産はわずか25億円
次の図は、阪神タイガースの2026年3月期のBSをサンキー図にしたものです。
(阪神タイガース貸借対照表)
総資産296億円のうち、流動資産は271億円で、全体の91.6%を占めています。一方、固定資産はわずか25億円。総資産に占める割合は8.4%しかありません。
阪神タイガースと聞けば、多くの人がまず思い浮かべるのが「甲子園球場」ではないでしょうか。ところが、球団の象徴ともいえる甲子園球場は阪神タイガースの資産ではありません。実は、この球場を保有・運営しているのは、親会社である阪神電気鉄道株式会社なのです。
阪神電気鉄道の決算公告によると、阪神タイガースとの関係について「野球場の賃貸」と記載されています。つまり、阪神タイガースは甲子園を「持つ会社」ではなく「使う会社」だと言えます。
甲子園を持つ阪神電気鉄道は、総資産の93.7%が固定資産
では、甲子園を保有する阪神電気鉄道のBSはどうなっているのでしょうか。
(阪神電気鉄道・貸借対照表)
2026年3月期の総資産は4,117億円。そのうち固定資産は3,859億円で、総資産の93.7%を占めています。阪神タイガースの固定資産比率が8.4%だったことを考えると、対照的な資産構成です。
固定資産の内訳を見ると、本業である鉄道事業の固定資産が864億円なのに対し、オフィスビルや甲子園球場などが含まれると考えられる「兼業固定資産」は1,998億円あります。実に鉄道事業固定資産の約2.3倍です。
ソフトバンクのドーム運営は自社
まとめると、阪神タイガースが事業を行ううえで欠かせない甲子園球場は、球団自身ではなく、親会社である阪神電気鉄道が保有しています。そのため、阪神タイガースのBSには、甲子園という大きな固定資産が載っていません。
この違いは、企業の決算書を分析するときにも重要です。例えば、福岡ソフトバンクホークス株式会社は、本拠地のみずほPayPayドーム福岡を自社で運営しており、2026年2月期のBSには978億円の固定資産を計上しています。総資産1,038億円のうち94.2%を固定資産が占めており、阪神タイガースとは対照的な資産構成です。

こうした保有資産の違いを確認せずにROAや総資産回転率などを比較すると、固定資産を親会社に持ってもらっている会社の方が、資産効率が高く見えてしまうことがあります。
特に、開示情報の少ない非上場企業の単体決算を見るときは注意しましょう。事業に必要な土地や建物、設備を親会社やグループ会社が保有していないかまで確認すると、会社の実態をより正確に捉えられます。






